浅草の「宇治の蔵」で100%純宇治抹茶を味わう体験

• 目次
• 日本初の宇治抹茶専門店「宇治の蔵」
• きっかけは高野山で味わった抹茶
• 抹茶の製造工程
• 「宇治の蔵」で購入できる抹茶
• 本物の宇治抹茶の楽しみ方

日本初の宇治抹茶専門店「宇治の蔵」

抹茶はもはや世界的な現象となっています。味わいの深さと優れた栄養価が評価され、眠気を覚ますほかの飲料より健康的な代替として世界中で支持を集めています。

東京の活気ある伝統的な街・浅草にも抹茶味のスイーツや飲み物を提供する店が至る所にあります。抹茶はラテ、ソフトクリーム、デザートのトッピング、その他多くの菓子や商品に使われています。

一方で、浅草で本格的な抹茶体験や茶道に触れる機会は以前は稀でした。ところが2025年10月に「宇治の蔵」がオープンして状況が変わりました。奥浅草にひっそりと佇むこのお店は、100%宇治抹茶のみを専門に扱っています。

入店すると店主がその場で抹茶を点ててくれます。一口飲むと、いわゆる「抹茶風味」商品とは明らかに異なる味わいを感じます。

宇治抹茶がどうして特別なのか、そして宇治抹茶専門店を開くに至った動機を知るために宇治の蔵を訪れてみました。

きっかけは高野山で味わった抹茶

宇治の蔵の店主、清司岬樹さんは、和歌山の霊場であり世界遺産でもある高野山への旅で、本物の抹茶と出会い、その体験が人生を変えるほどの出来事になりました。

「それまでは抹茶を苦い飲み物としか考えておらず、あまり関心を持っていなかった」と清司さん。

旅の途中で、高野山を拠点とする武家茶道の茶匠 梅原栄玄(うめはら えいげん)氏によって点てられたお茶を味わう機会に恵まれました。

一口飲むと、清司さんは驚きました。抹茶はまったく苦くなく、むしろ口の中で味が変化し、素晴らしく滑らかな余韻を残しました。その時、本格的な抹茶はそのままでどれほど美味しいかに気づいたのです。

この深い出会いが彼の次の一歩を決めました。梅原先生のもとで茶道を習い始め、修行を重ねるにつれて、抹茶の製造工程や高級な抹茶の特徴、そして点て方によって最良の風味を引き出す方法についての知識を深めていきました。

この体験に触発され、清司さんは浅草に宇治抹茶専門店を開くことを決意しました。

彼の目的は、訪日客に東京で最上級の抹茶を味わってもらう機会を提供することです。

綿密な準備を経て、宇治の蔵は2025年10月にオープンしました。かつて居酒屋だったお店を改装し、美しいレトロ調の家具で彩られた上品な空間へと作り替えました。

扱っている抹茶商品の純度と品質は、梅原宗直先生の監修によって保証されています。

抹茶の製造工程

抹茶は日常的に飲まれているお茶と同じ茶樹（Camellia sinensis）から作られますが、栽培・収穫・加工の方法に違いがあります。

うまみを引き出しながら渋みを抑えるために、収穫の2週間前から茶樹を覆って日光を遮ります。この重要な被覆工程により、苦味を生み出す成分の生成が抑えられます。

機械摘みが一般茶では許容される一方で、抹茶は厳密に手作業が求められます。農家は最高品質の抹茶を保証するため、植物の最上部にある最も新鮮な芽葉のみを手で摘み取ります。

摘採の後、酸化を防ぐために葉はすぐ蒸されて乾燥されます。

その次に、葉のすべての葉脈と茎が取り除かれます。残った葉の素材は「碾茶」と呼ばれ、伝統的な石臼で細かい粉に挽かれてようやく抹茶になります。

こうした細心で手間のかかる工程こそが、上質な抹茶を希少で独特に美味しいものにしているのです。

高品質な抹茶と法律の抜け穴

抹茶は静岡や鹿児島を含む日本の主要な茶産地で生産されています。しかし、京都の宇治抹茶は一般的に最高品質と見なされ、茶道の専門家の多くに好まれています。

問題は、「宇治抹茶」として販売されているすべてが100%純粋というわけではありません。日本の法規では、宇治産の抹茶が51%含まれていれば「宇治抹茶」と表示することが認められており、他産地の茶が混入していても差し支えないのです。

多くの生産者はこれらの混合品を低価格で販売することを選び、その結果として製品の品質に妥協が生じることがしばしばあります。

目利きの茶匠ならその違いを即座に見抜きます。だからこそ清司さんは梅原宗直先生や品質重視の宇治の茶園と連携し、100%純宇治抹茶を提供しているのです。

「宇治の蔵」で購入できる抹茶

宇治の蔵で扱うすべての抹茶製品は、京都宇治抹茶産地証明によって保証されています。

「和禅」と「栄玄」は、契約栽培の宇治の農家が手がける優れた入門用抹茶で、日常的に気軽に使うのに最適です。

さらに洗練された味わいを求めるなら、「三宝」、「如来」、または「虚空」がおすすめです。それぞれの旨味と自然な甘みのバランスが異なり、美味しく爽やかな抹茶を味わいたい時や落ち着いたひとときに相応しい抹茶です。

「龍神」と「月輪」は、宇治の蔵で扱う抹茶の最高峰。

「龍神」は力強く濃厚な風味が特徴です。対照的に、「月輪」はやさしく洗練された香りが特徴で、樹齢100年以上の古木から収穫された茶葉を使用しています。これらの上級品は、神社や寺院への供物として使われていることでもその優れた格が裏付けられています。

リラックスしたい時、月輪または龍神の味わいをゆっくり楽しむのはいかがですか？　その深い味わいが一瞬で日本の豊かな文化のルーツとつなげてくれます。

30gの純粋な抹茶の価格は一見高く感じるかもしれませんが、茶道に精通した人なら、これが本物の抹茶の標準的な価格であることを知っています。

抹茶はその製造に多大な手間がかかるため、昔から貴重なものでした。歴史的には、上流階級だけが口にできる特別な嗜好品でした。近代の消費志向が進む中で、低品質の茶を上級品と混ぜることで「手頃な価格」に見せかけられるようになったにすぎません。

純粋な抹茶を味わうことは今でも本当に稀な体験です。だからこそ「宇治の蔵」はこの試みを始めました。本物ではないもので満足してしまうことが当たり前になった時代に、本格的なの宇治抹茶の魅力を世界に伝えることを目指しているのです。

本物の宇治抹茶の楽しみ方

抹茶の粉は、デザートにふりかけたり、ホットミルクに混ぜてラテにしたりと料理用途にも優れていますが、最も味わい深いのはやはりそのままの形です。

宇治抹茶の繊細な風味を存分に楽しむには、日常の中で自分のためのちょっとした儀式を取り入れてみてはいかがでしょうか？　必要なのは茶碗、茶筅、茶杓といった基本の道具ですが、これらを浅草の多くの店で気軽に手に入ります。

Photo by Pixta

ご自宅でくつろぎたいときは、抹茶を点ててみてください。点てる行為の落ち着きに身を委ね、お菓子などの甘いものを味わった直後に一口飲んでみましょう。

抹茶の風味が口の中で優雅に変化し、透き通った空の下に広がる緑豊かな茶畑といった日本の自然風景が鮮やかに思い起こされるはずです。このささやかな行為が、宇治や京都の長年にわたる文化と深い伝統へとあなたを直接つなげてくれます。

宇治の蔵のような専門店で教わる価値のある一つのコツは、鮮度の保ち方です。開封後の抹茶はしっかりと密閉して冷蔵庫で保管する必要があります。抹茶の新鮮な風味をできるだけ長く保つには、ほぼ冷凍に近い温度で、かつ光を避けて保管することが重要です。

宇治の蔵

住所：東京都台東区千束3-16-9 MAP
アクセス：入谷駅3番出口から徒歩10分、浅草駅から徒歩23分
営業時間：10:00～16:00（月・火定休）
公式HP：https://www.ujinokura.com/index.html
Instagram: https://www.instagram.com/uji_no_kura/
梅原栄玄先生：https://www.instagram.com/eigen_a.k.a_matcha_man

In cooperation with 宇治の蔵