また帰ってきたくなる宿。おごと温泉「湯元舘」1泊2日の宿泊レポート
せっかく日本に来たのなら、日本ならではの宿泊体験をしてみませんか。伝統的だけれど快適で、新しいのにどこか懐かしい。今回訪れたのは、滋賀県のおごと温泉。日本一大きな湖・琵琶湖のほとりにある「湯元館」での1泊2日の旅をレポートします。
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目次
- 【アクセス】京都・大阪観光の拠点の穴場スポット
- 【サービス】日本のホスピタリティ “おもてなし”
- 【客室】静けさという贅沢を堪能する
- 【体験】アーユルヴェーダと温泉で、心と身体を整える
- 【温泉】心と体を癒す瞑想の時間
- 【食事】美味しく、美しい、驚きに満ちたコース料理
- 【施設】館内に宿る、小さなおもてなし
- 湯元舘はまた帰って来たくなる宿
【アクセス】京都・大阪観光の拠点の穴場スポット

おごと温泉は、京都駅から電車で約20分、大阪駅からも約1時間の場所にあります。大都市からのアクセスが良いにもかかわらず、観光地の喧騒はなく、静かに過ごせる穴場の温泉地です。紅葉の名所として知られる比叡山へも車で約20分。冬にはスキー場もオープンします。
最大の魅力は、日本最大の湖・琵琶湖を見渡すロケーション。湯元舘の大浴場や露天風呂からは、朝と夕方で表情を変える湖畔の景色を楽しめます。

宿から最寄りのおごと温泉駅までは送迎バスが運行しています。
「おごと温泉駅」「比叡山坂本駅」「坂本比叡山口駅」、坂本ケーブルの「坂本駅」を経由し、約20分のドライブです。
バスの時間外でも、13:30〜19:00の間であれば駅から電話一本で迎えに来てくれます。英語の案内板もあり、初めての訪問でも安心です。

送迎車の乗り場はおごと温泉駅 東口ロータリーの送迎車乗り場(オレンジ色の看板④番)が目印です。
【サービス】日本のホスピタリティ “おもてなし”

日本には、来訪者を思いやる心を表す言葉として「おもてなし」という表現があります。
見返りを求めず、相手の立場に立って行動すること。その精神は、チェックインのずっと前から感じられました。
駅に迎えに来てくれた送迎バスの運転手は、私の名前を呼び、笑顔で迎えてくれました。
はじめて訪れた土地で、少し緊張していた心が、その瞬間にふっとほどけたのを覚えています。
丁寧で礼儀正しい。でも、かたすぎない。
湯元舘で感じたおもてなしは、形式よりも真心を大切にしたものでした。
【客室】静けさという贅沢を堪能する

湯元舘には、畳の和室からベッド付きの和洋室、露天風呂付きスイートまで、さまざまな客室があります。
今回は、その中でも大人の落ち着いた滞在が楽しめると評判の「はなれ葭蘆葦(かろい)」に宿泊しました。
日本の美意識を感じるインテリアに、ベッドやテーブル、椅子を組み合わせたジャパニーズモダンな空間。
バリアフリーにも配慮されており、年齢を問わず快適に過ごせます。

窓を開けると、すぐそばに琵琶湖。
客室全体に流れる静けさが、日常のあわただしさを忘れさせてくれます。
この静けさのために、客室の冷蔵庫さえも静穏性の高いものにしていると聞いて驚かされました。

客室付きの露天風呂は24時間利用可能です。
なかでも印象に残ったのは早朝の入浴です。
太陽がゆっくり昇り、湖の色が変わっていく時間は、言葉にできないほどの贅沢。滞在した日は曇り空でしたが、それさえも幻想的で、自然の美しさに感動しました。

もっと広いお風呂を独り占めしたいなら、館内には貸切風呂もあります。
「石の音」と「木の香」というふたつのお風呂はそれぞれ異なる雰囲気が魅力です。もちろん露天風呂もあります。気兼ねなく親子で入浴したい場合にもおすすめです。
【体験】アーユルヴェーダと温泉で、心と身体を整える

湯元舘を訪れたら、ぜひ体験してほしいのがスパエステ「結宇(ゆう)」です。
ここでは、インド・スリランカ発祥の伝統医療「アーユルヴェーダ」を受けることができます。
アーユルヴェーダは約5000年の歴史を持ち、体質や体調に合わせた天然オイルを使い、身体を整えていくケアです。
とくに、すべてのコースで行われるヘッドマッサージは印象的で、知らず知らずのうちに溜まっていた緊張が、ゆっくりほどけていく感覚がありました。
ペアマッサージにも対応しており、カップルや家族、友人同士で同じ時間を共有できます。
エステティシャンの方は、的確な施術だけでなく、身振りや短い英語を交えたやさしいコミュニケーションで、心までほぐしてくれました。

トリートメント後に温泉へ入ると、身体がさらに軽く感じられます。アーユルヴェーダと温泉の相乗効果で、デトックスが促されるのだそうです。
「トリートメント → 温泉 → 食事 → くつろぎ」は、理想的な流れ。この体験ができる日本の温泉旅館は、まだ多くありません。
ショートボディコース70分(発汗付)1万9,800円(税込)ほか、様々なコースがあります。
【温泉】心と体を癒す瞑想の時間

日本の温泉は古くから治療の場所でもありました。おごと温泉に伝わる昔話にも、「飲めば病気が治り、浴すれば外傷に効いた」という温泉の物語があります。
湯元舘には、琵琶湖を望む露天風呂「月心(げっしん)の湯」や、山の景色を楽しめるお風呂「山望(さんぼう)の湯」など、4つの大浴場があります。
その中で、私がとくに気に入ったのは、岩に囲まれた露天風呂「湯幻逍遥(とうげんしょうよう)」です。

夜に訪れる露天風呂は、昼とはまったく違う雰囲気になります。
照明は控えめで、最初は少し暗く感じますが、湯に浸かっているうちに自然と目が慣れてきます。
やがて、枝葉の間に浮かぶ満月に気づきました。
紅葉の季節だったため、赤く色づいた木々が湯船のまわりを彩り華やかです。
湯の音と静かな空気に包まれながら、ただ景色を眺めて過ごす時間。ここでは、考えすぎることをやめ、心と体をそっと休ませることができます。
【食事】美味しく、美しい、驚きに満ちたコース料理

夕食は、料亭「湘月(しょうげつ)」でいただきました。個室で楽しむ日本料理のコースは、見た目も味も美しく、落ち着いた時間が流れます。
滋賀県名物の近江牛、目の前で土釜で炊き上げるお米、旬の野菜やお魚など。一品ずつ丁寧に運ばれてくる料理は、量もちょうどよく、初めて日本料理を体験する人でも安心です。

若い調理長が工夫を重ねた料理は、伝統に寄り添いながらも新鮮な驚きがあります。調理長自慢の甘鯛、レンコン、海老芋の揚げ物は、サクサクした食感と出汁のバランスが印象的。
感動した豆腐料理について尋ねると、旅館近くの老舗の豆腐店のものだと教えてくれました。
食事を通して土地を知ることができ、気軽に会話できるスタッフの存在が、食事の時間をより豊かにしてくれます。
【施設】館内に宿る、小さなおもてなし

せっかく滞在するのなら、広い館内をあちこち歩いてみてください。
長く愛用されてきた椅子や手すりは美しく磨かれ、季節の花や小さな置物がさりげなく飾られています。

お気に入りは、廊下に飾られた小さなお地蔵さん。旅人や子どもを守る存在として、日本では親しまれてきました。いつ誰が作ったのかわからないほど昔から、大切に守られてきたそうです。
レトロで新しいゲームセンター

館内散策で見つけたお気に入りの場所のひとつが、地下にあるゲームセンターです。
30年以上時代を遡ったようなレトロなゲーム機が置かれたこの場所は、今だからこそ新しく感じます。
温泉あがりに浴衣のまま楽しめる卓球台もあります。かつて、日本の温泉旅館には必ずと言っていいほど卓球台がありましたが、今ではめずらしいものになりました。
ここでしか出会えないおみやげたち

ロビーのおみやげ店も必見です。
「せっかくならお客様がわくわくするものを並べよう!」という社長の考えのもとセレクトされたおみやげの数々は、ユニークなものばかり。湯元舘のオリジナル商品も多く並びます。

夕食で味わった枝豆のドレッシングは、旅の思い出を家に持ち帰れる人気のおみやげです。
湯元舘はまた帰って来たくなる宿

旅の満足度を考えるとき、ホテルのスタッフが外国語の単語をいくつ知っているのかは、それほど重要ではありません。
顔を見て挨拶してくれること、心地よい距離間で親切にしてくれること、チェックアウトの後も手を振って見送ってくれること、湯元舘で体験したその全てに真心を感じます。
温泉やロケーションの良さは勿論魅力的ですが、それ以上に、おもてなしや、リラックスできる空間、時間の流れといったすべてが、「また帰ってきたい」という気持ちにつながります。
約1200年前、伝教大師最澄が世界遺産である比叡山延暦寺建立の職人の労をねぎらうために開湯されたとされるおごと温泉。その中でも湯元舘は創業96年の歴史を持つ老舗旅館。11階からびわ湖を望む露天風呂や森の中の温泉と錯覚するような露天風呂など趣の異なる4つの温泉や、日本三大和牛のひとつである「認証近江牛」をはじめ、旬の食材を吟味した京風会席も人気の秘密。京都から電車で20分の近距離にありながら、琵琶湖や比良山系など自然と和のぬくもりを感じる事ができる宿です。