川、湧水、温泉、滝 ―「水郷 日田」の水を巡る旅
九州北部の中心にある大分県日田市。その特徴は、「水郷日田」と呼ばれるほど豊富な水資源に恵まれていること。水郷日田を実感できる、市内のスポット、温泉地や景勝地などを紹介します。
水とともにある町、大分県日田市
Picture courtesy of Hita City Tourism Department
阿蘇くじゅう山系の北に位置し、周囲を山々に囲まれる大分県日田市。山林から湧き出た清らかな水は集まって川となり、やがて日田の町に流れ込みます。
そうしてもたらされた豊かな水は日田市の美しい景観を生み、グルメ・温泉などの文化を育みました。
日田市が「水郷(すいきょう=水の町)」とも呼ばれる所以です。
物が行き交う“水の道”
日田市の中心部には、2つの河川ー三隈川と花月川ーが流れています。2つの川は日田市で合流し、筑後川と名前を変えて海へ向かいます。
その流れは江戸時代から物流のために利用され、この地域の経済的繁栄を支えてきました。
名水が生み出す日本の味
山が贈る美味しい水を求め、日本の有名食品企業も日田に製造拠点を構えています。
サッポロビール日田工場やいいちこ日田蒸留所では、日夜日田の水を利用した銘酒を製造しています。
地元企業においても、まるはらの醤油やラムネなど、地元の水を活かした名産が目白押しです。
温泉や水の景勝地も
日本ならではの水文化と言えば温泉。もちろん日田市でも温泉は湧き出ており、とくに天ヶ瀬温泉は有名です。
本記事では、自然の恵みが肌で感じられる日田市で、「水」が生んだ文化を実感できる場所を紹介します。
日田市内 ― 淀みなく流れる「三隈川」
Picture courtesy of Hita City Tourism Department
街の中央を流れる三隈川は、日田市の象徴とも言える美しい河川です。
淀みなく、濁らずに流れる壮大な川で、地元の人にとっては生活のすぐそばにある大切な存在。
屋形船が浮かぶ三隈川の風景は、この川が水運のために利用されていた江戸時代の風情を連想させます。
日田の名産と言えば、「日田杉」もその1つ。日本中で求められた日田杉は、三隈川の水運を利用して全国に運ばれました。
50年ほど前までは当たり前だった水運の風景ですが、残念ながら今はもう失われてしまっています。
その歴史を今に伝えるのが、三隈川沿いに今も残る「蔵」の数々。これらの蔵は、製材所やその母屋として利用されていた建物です。
三隈川のほとりにある「すてーき茶寮 和くら」は、そんな林業の蔵を改装して作ったレストラン。
三隈川の流れを眺めながら日田食材の鉄板焼き料理などをいただける、特別なお店です。
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夕暮れ時になると、夕日が川の流れを鮮やかに染め上げます。
川沿いの亀山公園や三隈川公園では、散歩の足を止めて川を眺める、日田市の人々の姿を見つけることができるでしょう。
Picture courtesy of Hita City Tourism Department
夏に三隈川で行われる花火大会も、日田市民にとっては恒例のイベントです。
三隈川は、日田市民の暮らしのそばにあるかけがいのない存在。
日田市に来たら、三隈川のやさしい流れと、その存在の大きさをぜひ体感してみてください。
川岸で入る開放感たっぷりの露天風呂「天ヶ瀬温泉」
天ヶ瀬温泉街の中央を流れる玖珠川
日田駅より約14キロほど東南へ移動すると、天ヶ瀬温泉にたどり着きます。
天ヶ瀬温泉は、日本一の「おんせん県」大分県の中でも、別府と湯布院と並んで3本の指に数えられる名泉で、1300年もの歴史を誇るといいます。
玖珠川の両岸に温泉宿が立ち並ぶ、日本の温泉街らしい景観が特徴です。
玖珠川の清らかな流れは、久住山の飯田高原を水源とし、大山川と合流して日田市中心部で三隈川となります。
水が清らかで浅瀬でもあるため、鮎の友釣りのようなレジャーアクティビティーにも適しています。
天ヶ瀬温泉の特徴と言えば、川沿いの共同露天風呂「川湯」。川に面した露天風呂で、誰でも利用することができます!
地元の人が管理しており、利用料は100円と非常に安価。
ただし混浴で、近くに更衣室もないので、訪日客の方にはやや勇気が必要かもしれません。
そこで天ヶ瀬温泉では、特定の川湯で水着着用での入浴も可能です! また、こちらの湯あみ着も推奨しています。あまがせ観光案内所で購入、または温泉旅館でレンタルできます。
購入費用:女性用湯あみ着 1着 1080円~3900円、男性用湯あみ着 トランクス1着 648円、腰巻タイプ1着 3,900円。
レンタル費用:1着 300円。
レンタル箇所:丸山荘、本陣、日田屋、福屋、湯の香荘、成天閣、天龍荘
湯あみ着水着の着用、タオルの使用可能の川湯: 神田湯(じんでんゆ)、薬師湯(やくしゆ)
自然の中で入る温泉は最高の気持ちよさ。Picture courtesy of Amagase Tourism Association
緑あふれる広い風景の中で、玖珠川のせせらぎを聞きながらゆっくりとお湯に入る。
天ヶ瀬ならではの特別な体験です。
天ヶ瀬駅より徒歩10分ほどのところにある「桜滝」も、水の街日田の名所の1つ。
水しぶきが桜吹雪に似ていることがその名前の由来だそうです。
落下する水の近くまで行けるので、滝周辺に漂う涼し気な空気、全身に降りかかる水しぶきの冷たさを肌で感じられます。
駅そばのあまがせ観光案内所に行けば、天ヶ瀬のさらに詳しい情報を入手できますよ!
梅の里で渓谷を望む、奥日田温泉「うめひびき」
日田市の南部を流れる三隈川の支流大山川沿いにも温泉があり、天ヶ瀬温泉とはまた違った温泉文化が体験できます。
大山は梅の産地として有名です。奥日田温泉「うめひびき」に宿泊すれば、温泉とともに大山独自の梅文化にも触れられるでしょう。
「うめひびき」では温泉大浴場や貸し切り温泉のほか、露天風呂付きの部屋などなど、あらゆるタイプの温泉を贅沢に堪能できます。
温泉の多くは、絶景の響渓谷に面しており、晴れ晴れとした気持ちで温泉に入れます。
館内にある朝もやテラスは、響渓谷を望む絶好のビュースポット。限られた方しか利用できないので、宿泊の際はぜひ宿に問い合わせてください。
館内や客室の内装も梅花をモチーフにしており、気品のあるデザインの中、心落ち着く時間を過ごせます。
館内の料理屋で提供される料理も梅尽くし。川魚、豆腐や野菜など、地元の新鮮な食材を使った料理に合わせて、名物の梅干しや梅酒が味わえます。
梅酒は、梅酒蔵おおやまという工場が製造するお酒で、大山の農家から集めた梅で作られたものです。
「世界リキュールコンテスト」で金賞を受賞したこちらのお酒も、清らかな水に恵まれている環境だからこそ作られるもの。
「梅酒蔵おおやま」工場は、奥日田温泉「うめひびき」の別館にあり、ショップも併設。
ショップではブランドの梅酒や果実酒の数種類が購入可能です。梅酒作り体験サービスにもぜひ挑戦してみてください。
琴ひら温泉「ゆめ山水」の家族風呂
日田市の南部を流れる高瀬川沿いには、琴ひら温泉という温泉地があります。
琴ひら温泉「ゆめ山水」のポイントは、親子で楽しめる貸し切り温泉「家族風呂」。
日帰りでも利用できるので、気軽に立ち寄れます。
通常の温泉風呂に入れない小さい子どもも安心して入れるお風呂で、ひのき、山石や川石などを使った数種類のお風呂から選べます。
源泉かけ流しの温泉に入りながら外の緑を眺めれば、とても落ち着く空間です。
Picture courtesy of Kotohira Onsen Yume Sansui
「ゆめ山水」では他に高瀬川のほとりの露天風呂(男女別)もあります。川の音を聞きながらリラックスできる贅沢なお風呂です。
長く滞在したい方は宿泊も可能。和洋のテイストが混在となった、一軒家の宿泊施設です。
清流や温泉をめぐる日田市の水文化
交通の要衝としての歴史、三隈川を利用した水運、良質な温泉などなど、周辺の地形や豊かな水資源があるからこそ、今の日田市があります。
日田市を訪れるのならば、豆田町を始めとする町並み、文化を体験するだけでなく、そんな日田市を作った自然もぜひ体験してみてください。
あなたの日田市観光が、より豊かなものになることでしょう。
Supported by Hita City Tourism Department