旅の準備はじめよう
養老渓谷の筒森もみじ谷——ローカル線で行く美しい紅葉の旅
本記事では東京の近くの紅葉の名所、養老渓谷の筒森もみじ谷を紹介。レトロなローカル線・小湊鐵道に乗って豊かな自然と美しい紅葉を見にいきましょう。
東京に近い紅葉スポット
「日本の紅葉スポット」と聞いて多くの人が連想するのは、京都か、東京から遠く離れた地方ではないでしょうか?
じつは東京のお隣・千葉県にも紅葉の名所があります。まずは成田山新勝寺の公園。成田空港に近く、成田空港からJRまたは京成線で行けるので便利です。
成田山の公園はとても広く、大きな池、滝、カエデやイチョウの木々に囲まれて紅葉が楽しめます。遊歩道もあり、自然を満喫できます。寺へ続く参道には、食事処やみやげ店が並んでいて、お腹も心も満たしてくれます。
今回は、もうひとつの紅葉スポット、千葉県の中央に位置する養老渓谷をご紹介します。 レトロで情緒たっぷりなローカル列車に乗って、筒森もみじ谷に広がる自然と美しい紅葉を見にいきましょう。
旅路はローカル線・小湊鐵道
養老渓谷までは小湊鐵道(こみなとてつどう)で行きます。小湊鐵道とは、千葉県の中央部にある市原市を横断する私鉄です。
東京から行く場合、秋葉原駅から総武線本線に乗り、千葉駅で内房線に乗り換えて五井駅まで行きます。そこに小湊鐵道への連絡通路があります。ここからはSuicaやPASMOのようなICカードは使えません。本当にレトロな路線なので、紙の切符を買ってくださいね。
ホームに降りると、すでに列車が停まっていました。
五井駅発 養老渓谷駅行き。ちょうど私たちの目的地が終点です。
車両がレトロ可愛い! 時間のある方は、写真を撮るのをお忘れなく。
五井駅を出発して間もなく、景色は一面の田畑に変わります。遠くに富士山も見えました。
養老渓谷駅
1時間ほどで養老渓谷駅に到着しました。運賃は片道1,250円です。
2017年5月に、この養老渓谷駅の周辺の建物や複数の川にかかる橋梁など22の施設が国の文化財に登録されました。1928年に建てられた木造の養老渓谷駅舎もそのうちのひとつです。
11月の澄み渡る秋空のもと、駅前のカエデの木が美しい朱色に染まっていました。
「東京から日帰り可能。千葉県「養老渓谷」で見る四季の自然(滝・花・紅葉)」より
駅に着いたら、観光マップをもらいに観光案内所に立ち寄りましょう。駅を出て左手向かいにある平屋の建物です。
筒森もみじ谷へ行こう
本日のプランは、バスに乗って筒森もみじ谷に行き、駅周辺に帰るというものです。乗車するバスは、紅葉シーズン(10月下旬~12月上旬)の土日祝日のみ運行する期間限定路線バス・房総さとやまGO です。
2019年の時刻表は小湊鐵道バスの公式HP(日本語)で10月頃に発表されます。
駅前から12:36発の便に乗りこみました。そこから8分ほどの筒森もみじ谷停留所で下車します。 バスを降りて車道に沿って歩いていくと、左手に筒森もみじ谷 入口の看板が見えてきます。そこにはこう書かれています。「約1キロメートル 頑張って歩きましょう」
私たちを励ましてくれています。ええ、歩きますとも!
歩みを進めていくと、気温が下がっていくのを感じます。周りの崖には一面に大木が生い茂っていますが、天気は良好です。最初の橋までやってきました。ガードレールには可愛いもみじの絵も。
下には川が流れていて、水は綺麗に澄みわたっています。山の中を行く道なので、道中にはほかにもいくつかの川がありました。
私たちが取材に訪れたのは2018年の11月23日、例年であれば紅葉のピークを迎えている頃です。しかしこの年、猛暑が日本を襲い、なかなか気温が下がらず紅葉が遅れました。この日もまだ緑の中に紅葉がまばらに混じる程度でした。
とはいえ、色鮮やかな紅葉は堪能できなくても、大自然は一見の価値ありです。
スタート地点からここまでぶらぶら歩いて10分ほど。疲れるほどではありません。こんなに背の高い木、一体どれほどの樹齢なのでしょう? 歩いている途中で、私たちと同じく散策中の人たちを見かけました。
散策コース上では、ちらほらと紅葉が始まっていました。
曲がりくねった山道。大抵の人たちは車で来るので駐車スペースがあります。だけど、私たちは徒歩で突き進みます!
色とりどりの草木の中で、ススキの白さが映えていました。
気温は手がかじかむほどの寒さです。山頂で地元の人が野菜と焼き芋を売っていたので、ひとつ購入して熱々の焼き芋であたたまることにしました。
値段は大きさによって異なり、300円の大きさのものを買いました(写真はその半分サイズ)。甘くておいしかったです!
それでは来た道を戻りましょう。橋の赤色が景色に彩りを添えています。
養老渓谷駅行きのバスに乗るために、降りた停留所と反対の停留所に向かいます。15:36発のバスに乗車しました。
赤い橋を渡って山頂の観音様に参拝しよう
養老渓谷駅ではなく、そのひとつ手前の弘文洞(こうぶんどう)入口でバスを降ります。なぜなら、中瀬遊歩道の入口に、風情ある赤い橋があるからです。
ここは山の上にある「出世観音 立國寺(りっこくじ)」に向かう橋、観音橋 です。
橋の上から左側を見ると、川原へ下りていく人たちが見えます。私たちも行ってみたいところですが、今は先にお寺に行きましょう。
コースに沿って山を上っていくと、山頂に出世観音 立國寺があります。鎌倉幕府の初代将軍・源頼朝が戦勝祈願に訪れたことで知られるお寺です。鎌倉幕府は1185年に成立した武士による政権のことです。
源頼朝にあやかり、地元の人たちはこの観音像を「出世観音」と呼び、開運招福の神様として崇めています。
観音様にお参りをしたら、元のコースに戻りましょう。橋は遠目に見ればそれほどでもないのですが、実際に渡ってみると思っていたよりかなり急勾配です。床板はきめの粗い素材で滑り止め加工されているので、転ぶ心配はなさそうです。
渓谷の川沿いを散策しよう
橋を降りたら右に曲がり、少し行った先の細い小道を降りれば養老川に到着です。ここが中瀬遊歩道入口です。降りて行ってみると、先程たくさんの人たちが立っていた場所に着きます。正面の切り立った崖に、地層がくっきり見えます。
遊歩道はここからスタートです。さあ、行ってみましょう。
まずは川を渡ります。 このような飛び石で川を渡るポイントは道中にたくさんあります。ちょっとした冒険気分ですね。
ここでも紅葉が見られます。
川や山のふもとに沿って歩きます。清らかな水や空気に、身体のなかが浄化されていく気分です。
ここは養老川から水をひくために山を掘削して作られたトンネル、弘文洞跡(こうぶんどうあと) です。1979年にトンネルが崩落して現在の姿になりました。足元にはいまだに崩落したときの石片が残っています。ここまできたら、コースの残りはあと半分もありません。
日が落ちるのがとても早い秋。少しペースを上げて行きましょう。
共栄橋に到着しました。ここでは17:00から21:30までのライトアップが行われていました。2019年のライトアップの時間については養老渓谷観光協会の公式HP(日本語)をチェックしましょう。
後ろを振り返ってみると、歩いてきた道がほとんど見えないほど暗くなっていました。
橋を渡った先にあるのは、新旧のトンネル2つが合わさった2F建てのトンネル(全長110メートル)です。
古い方のトンネルは素掘りで表面がゴツゴツとしていて、フォトジェニックなポイントでもあります。トンネルを抜けると、先程バスを降りた道に戻ります。
こちらの方が弘文洞跡に近く、またそのまま引き返せば反対側の入口である川原まで行く必要はありません。時間に余裕がない方はこちらから入りましょう。
帰路へ
駅に戻るバスを逃してしまったので、歩いて帰ることに決めました。途中の観音橋にさしかかったあたりでわずかにライトアップされている所があり、夜の紅葉を楽しむことができました。
山をひとつ迂回しなければならないので30分もかかります! 道中は真っ暗なので、車に歩行者がいることを知らせるために、携帯電話のライトで道を照らしましょう。
30分後ついに養老渓谷駅に帰還しました。イルミネーションがまばゆく輝きます。
次の電車を待つあいだ、駅前の食堂「兼竜(けんりゅう)」に入ることにしました。醤油ラーメン。あっさりスープの、こういう素朴な味もいいものですね。
友人は月見そばを注文していました。月見という言葉が入っているメニューにはすべて、玉子が入っています。
熱々のスープをすすると、身体の芯まで温かさが染み渡ります。食べ終わったら駅のホームで電車を待ちましょう。
電車がホームに入ってきたと思ったら、女の子たちのグループから黄色い声が上がりました。というのも、最後尾の車両がご覧のとおり、電球で飾り付けされていたからです。筆者も心の中でこっそりキャーと叫びました。
小湊鐵道では例年、11月末から12月末頃までイルミネーション列車を運行しています。2019年の運行情報は、10月頃公式HP(日本語)で発表されます。
窓ガラスはスノースプレーでペイントされていました。
本格的なデコレーションに圧倒されますね。
先程通った駅前の通りも、イルミネーションで飾られていました。とても本格的な飾り付けがされています。別の駅ではもっと派手な所もありました。
可愛さのレベルを上げるハートのつり革。各車両にひとつしかないつり革がちょうど目の前に!
1時間後、私たちは最初の地点である五井駅に戻ってきました。予想外の感動とともに旅を締めくくることができて、気分は最高です。
千葉県内の渓谷でもみじ狩り
東京から近いエリアで紅葉狩りをしたい方は一度、養老渓谷に行ってみましょう。紅葉だけでなく、春は桜、夏ならキャンプや登山と季節ごとの楽しみがありますよ。
時間がある方は、粟又の滝 のような綺麗な滝や、チバニアン(12万6千年~77万年前、地球の磁気が反転した地層)にも足を伸ばしてみてください。小湊鉄道沿線はめずらしいものや綺麗なものが満載です。
※本記事はタイ語版の記事を翻訳・再編集したものです。