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【職人のまち燕三条】蔵を起点に生まれる出会い、つながりを積み重ね、ものづくりの魅力を世界に発信
日本有数の職人が集まる街、燕三条。ものづくりの歴史を紡いできた文化的にも貴重な蔵を拠点に、ものづくり体験ツアー事業を展開。蔵に訪れるゲストと一緒に、新しい出会いと可能性を拓いていきます。
始まりは地域産業の歴史を紡いできた空き蔵から
県の中央部に位置する燕三条は、古くから「ものづくりの街」として栄えてきました。江戸時代から続く伝統技術を継承し、世界でも類を見ない多様な技術が連なる金属加工の集積地として、作業工具や刃物、洋食器など生活に欠かせない道具をつくり続けてきた場所です。
そんな三条市西四日町の信濃川を臨む場所にあるのが、旧三条物産 土蔵。築85年、広さ900平米を超える巨大な空き蔵は、かつて三条の特産品だった足袋の工場兼倉庫の跡地で、木造の外壁のなかに3つの土蔵を構える構造上も稀有な建物です。
燕三条の産業の歴史を紡いできた貴重な場所を活用し、新たな付加価値を生み出す事業として始まったのが、KRaft Tour(クラフトツアー)です。
KRaft Tour:https://kraft-ts.jp/
燕三条のものづくりの魅力を世界に伝えたかった
「燕三条地域のものづくりの魅力を伝え、地元の若い職人にも誇りや愛着を持ってほしかった」と話すのはKRaftの代表の横山 裕久(よこやま・ひろひさ)。三条市出身の彼は、もとは三条市役所の職員として働いており、その時に出会ったのがこの土藏です。
ひと目見て、とてもかっこいい建物だと思いましたが、空き家維持の難しさから近々取り壊しの予定があることを知り、「この建物をなんとかして残したい」という思いから、所有者の方のご厚意もあって蔵を所有することに。
「燕三条はものづくりで海外からも高く評価されている地域ですが、後継者不足により、廃業を余儀なくされている工場が多くあります。多くのプレイヤーが活躍しているなかで、観光を切り口にした取り組みはまだ少なかった。燕三条の製品の価値を高く評価してくれる、国内外の人々を地域に呼び込み、新たな繋がりをつくることで、この地域のものづくりを未来に残していくことができるんじゃないかと思いました。」
そんな彼の思いに共感して立ち上がったのが、株式会社KRaft(クラフト)。新潟出身のメンバーから東京や京都など県外に住むメンバーまで、出身や背景の異なる様々な経歴を持った7人で成り立つ新しい事業体です。
地域で新しいビジネスを生み出すプログラムを進める中で、地域産業を担ってきたこの蔵を拠点とした観光事業として、KRaft Tourが生まれました。
KRaftのビジョンは「世界中のものづくりに関わる人々が、燕三条で出会い、多様な価値観が混ざり、新たな魅力や価値を地域に生み出す事業をつくる」こと。観光事業はあくまで手段であり、地域産業の魅力に光を当てることによって、新たな出会いや価値観が混ざり合う機会を創出し、この地に住む人々がいっそう目の前の仕事や生活に誇りと愛着を持って暮らせるようになることを目指しています。
「モニターツアーを実施する中で、海外の方が蔵に訪れた時にとても興味を示してくれ、手応えを感じています。燕三条に来る一つの目的となれるように、今後はツアー事業だけでなく、ホテルを作ることを目標に、さらにこの蔵が地域の拠点となるような活動を行っていきます。」
祖父の代から続くものづくりを未来にのこしたい
「海外の友人と話す中で、日本のものづくりの技術や品質の高さを自分の言葉で伝えたいと思うようになった」と話すのは、ツアーガイドを務める幸地 顕成(こうち・けんせい)。横山と同じく三条市出身の彼は、大学在学中のほとんどをアメリカを中心とする海外で過ごした後、沖縄の米軍基地で通訳を務めるというユニークな経歴を持っています。
祖父の代から続く製造業を営む父の事業を継ぐために、出身地である三条市に帰郷しました。地場の産業の歴史や知識などを学ぼうと考えているなかで出会ったが、KRaftのツアーガイド募集の告知でした。
「西洋のカルチャーに憧れ、魅了されてきたからこそ、外の世界から見える日本の格好良さを知りました。世界のどこに行っても、日本の文化やものづくりは高く評価されます。先人たちが守ってきた文化や技術は彼らの努力の結晶であり、日本の、そして燕三条地域の財産です。
日本の高品質なものづくりを目で見て、肌で感じることができるのが燕三条地域の魅力。海外の方はもちろん、これから大人になっていく子供たちにも、地域の魅力、そして日本人としての誇りや価値を伝えていきたいと思い、KRaftへの参加を決めました。」
語学はもちろん、コミュニケーション力にも優れた幸地は、海外のゲストともすぐに打ち解けます。地元を良く知る彼だからこそ、ガイドブックには載っていない穴場の町工場や、地元の人が通うローカルなスポットにも案内することができるのが、KRaft Tourの魅力です。
「海外旅行に行っても、リゾート地はどこも似たような演出やお土産があったり、その地域をリアルに感じることが出来ませんよね。観光地じゃないからこそできることを、このツアーでは提供したいと思っています。外国の方々にとって、彼らの目に映る産業と一体化した燕三条の人々の生活そのものが、一番のお土産になるんじゃないでしょうか。」
地域産業の技術を継承する拠点として
先に紹介したKRaft Tourのシンボルでもある空き蔵。将来的にはインバウンド向けのホテルとしての開業を目指していますが、その第1段階としてギャラリーの開設を準備しています。ギャラリーの大きなテーマは、「燕三条の技術の継承」。
継承された現在のものだけを展示するのではなく、継承されなかった技術も含め、燕三条の産業として展示することを構想しており、「この蔵で製造されていた足袋も、産業としては途絶えていますが、歴史上には確かに存在していた。途絶えてしまった技術も、現在の燕三条を構成する要素の一つとして描きたい。」と横山は話します。
KRaftが蔵を活用することで、新しい形で技術が継承されていくことを表現したいと言います。
この蔵から新たに始まる出会い、そして新しい事業の形にぜひご注目ください。
日本有数の職人が集まる街、燕三条。ものづくりの歴史を紡いできた文化的にも貴重な蔵を拠点に、ものづくり体験ツアー事業を展開しています。 普段は入れない工場で職人に学び、自分の手でものをつくり、実際に使ってみることで、職人へのリスペクトやものを永く大切に扱う気持ちが生まれます。ガイドブックには載っていない手づくりの旅を通じて、燕三条の日常(ものづくり、人、自然、文化、食)を五感で体験。蔵に訪れるゲストと一緒に、新しい出会いと可能性を拓いていきます。