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【瀬戸内国際芸術祭】オフィシャルツアーをオススメする3つの理由
3年に1度開催される日本最大級の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」では、第4回目となる2019年からオフィシャルツアーを開始しました。英語が堪能なガイド付きのツアーに参加するメリットを、筆者が大島・女木島・男木島を巡るツアーに参加して体験してきました!
2019年から始まった瀬戸内国際芸術祭のオフィシャルツアー
香川県・岡山県の12の離島と2つの港を舞台に開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」。その多くのスポットは、船で回ります。
瀬戸内海の美しい海を船でわたるのは、素晴らしい体験です。でも、煩雑な船の時刻表や航路を調べるのは、ときに億劫かもしれません。
そんなときにオススメなのが、第4回目となる2019年から始まったオフィシャルツアー。価格は9,800~14,800円(税込)(※1)で、1~3つの島を1日で回ることができます。本記事では、オフィシャルツアーに参加するメリットと、筆者の体験リポートを紹介します!
※1……作品鑑賞パスポートは別途、購入する必要があります。
オフィシャルツアーをオススメする3つの理由
ここでは、筆者の観点から、オフィシャルツアーをオススメする理由を3つ紹介します。
理由1. ガイドから島とアートの話を聴ける!
オフィシャルツアーのガイドを務めるのは、瀬戸内国際芸術祭の実行委員会の研修を受け、選抜された人材。各島や展示されているアートについて豊富な知識をもっています。
香川県や近隣地域の出身者も多いので、地元の面白い話が聴けるのも、嬉しいポイント。
※訪日観光客の参加者が多い場合、英語が話せるガイドが付きます。訪日観光客の参加者が少ない場合、ツアーは日本語で行われます。ただし、どちらの場合も英語による説明資料がもらえます。
理由2. チャーター船とランチ予約で気楽に楽しめる!
瀬戸内国際芸術祭の期間中、船は大変混雑します。また、ランチスポットも、混雑のため予約できないことがあります。
そんなとき、チャーター船で回ることができ、地元のグルメが味わえるランチスポットも予約してくれるオフィシャルツアーは、とっても便利。重たい荷物を船内に置いて、手ぶらで観光もできますよ!
理由3. 自由時間もたっぷりもてる!
島に来たら、自分のペースでアートや島の風景を見て回りたい。そう考えるアートファンも多くいると思います。
オフィシャルツアーでは、基本的にガイドが案内してくれますが、自由時間もたっぷりあります。さらに、事前にガイドと相談すれば、島での滞在時間をほぼすべてを自由行動に充てることも可能!
その際も、ガイドはオススメの見どころや、集合場所への行き方を丁寧に教えてくれますよ。
※一部の島では、所定の自由時間以外は、自由行動ができない場合があります。
大島・女木島・男木島のオフィシャルツアー体験リポート
筆者は2019年8月、オフィシャルツアーのBコース(大島・女木島・男木島)に参加させてもらいました。そこでの体験をご紹介します!
9:30~9:50 高松港集合→大島へ移動
朝はまず、高松港旅客ターミナルビル1Fで集合し、受付を行います。それから皆で船へ。
今回ガイドを務めてくれたのは、香川県出身のカヨさん(写真中央右)。通訳としても働いており、英語が堪能です。船に乗ると早速、本日のツアーや、最初の目的地である大島の説明が始まりました。
10:40~ ガイドの案内で大島の歴史を学ぶ
周囲7.2キロメートルの小さな島、大島には1909年、ハンセン病の療養所が設立されました。ハンセン病は、現在は完治する病気ですが、昔は患者への差別が世界各地で行われていました。残念ながら、日本も例外ではありません。
大島の療養所では、ハンセン病患者の強制隔離が行われました。患者の方々は子どもを持つことが許されず、園内で結婚したカップルに対しては強制避妊・堕胎も行われました(※2)。
大島に到着後、カヨさんの案内に従い、筆者たちはまず慰霊碑へ向かいました。ここで、亡くなった患者の方々や、生まれてくることができなかった子どもたちのために合掌(※2)しました。
それから、筆者たちはアート作品の展示場所へ向かいました。
※2……1996年の「らい予防法」の廃止、2008年の「ハンセン病問題基本法」の成立により、こうした差別政策は撤廃されました。現在はすべての入所者がハンセン病の治療を終えています。療養所では、入所者の療養生活の支援や、ハンセン病に関する啓発活動が行われています。
※3:合掌……死者を弔う日本の儀礼。両手を合わせて一礼する。強制ではありません。
田島征三「青空水族館」
入所者の寮だった建物に作られた回遊式インスタレーション「青空水族館」。涙を流し続ける人魚や、「なんで私を捨てたの?」と嘆く廃棄物で作られた魚のオブジェなどが展示されており、大島という場所が抱える深い悲しみが伝わってきました。
山川冬樹「海峡の歌/Strait Songs」
大島の療養所では、かつて、対岸の町まで泳いで脱走しようとする人たちが後を絶ちませんでした。「海峡の歌/Strait Songs」は、実際にアーティストが対岸まで泳いで渡る様子を撮影した映像を中心に作られたインスタレーションです。
小さな島に隔離されつつ、「家族に会いたい」「自由になりたい」と命がけで海を渡ろうとした患者の方々は、いったいどんな気持ちだったのだろう。映像を前に筆者はそんな想像をし、胸が痛くなりました。
カヨさんは、参加者の個別質問に対して、各アート作品の背景を丁寧に説明してくれました。おかげで、アートと大島に関して、理解を深めることができました。
12:25~ 女木島でツアーコーディネートのランチを味わう
続いて訪問したのは女木島。女木島では「島の中の小さなお店プロジェクト」や「BONSAI deepening roots」を観た後、昼食まで短い自由時間を取りました。
この日はとても暑くなりました。カヨさんは「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座」』内は冷房が効いています。展示を楽しみつつ、休憩もできますよ」とアドバイスしてくれました。
EAT&ART TARO「瀬戸内ガストロノミ―」
13時過ぎに筆者たちは、「レストラン イアラ 女木島」へ行きました。ここでは、瀬戸内国際芸術祭2019の期間中、香川県グルメを楽しめる「瀬戸内ガストロノミ―」を実施しています。こちらは、アーティストのEAT&ART TAROの解説が付く日もありますよ!
EAT&ART TARO「瀬戸内ガストロノミ―」
香川県では、魚の保存のため、仏生山(ぶっしょうざん)や仁尾(にお)などで、昔から酢をさかんに作ってきました。この日は、香川県産の酢を活用したさまざまなグルメを頂きました。
筆者が印象的だったのは、高瀬茶(写真左上)です。コクと深みを備えたすばらしい緑茶ですが、大量生産が難しいため、香川県外ではほとんど飲めません。希少な飲み物や食べ物を味わえるのも、地域に根差した祭典である瀬戸内国際芸術祭ならではですね!
15:00~ 男木島でガイドのオススメアートを楽しむ
最後に訪れたのは男木島です。
「男木島では、坂が多くて田んぼが作れませんでした。だから島民たちは昔、島外の農家に牛を貸し出し、代わりに米をもらってきました」。船内でカヨさんからそんな説明を聞いているうちに、島へ到着しました。
それから迷路のような道を抜け、アート作品へ。
高橋治希「SEA VINEー波打ち際にてー」
「SEA VINEー波打ち際にてー」は、瀬戸内海の波の動きを、陶器の花やつるで表現した作品です。見ているうちに、波音が室内に響きわたり、自分の体も波に浸されているような気分になりました。
さらに、グレゴール・シュナイダー「未知の作品2019」や遠藤利克「Tribe-家」などを鑑賞した後、自由時間となりました。
カヨさんに「オススメの作品はありますか?」と尋ねたところ、「『記憶のボトル』は、とてもきれいで女性に人気ですよ」とのこと。筆者も早速行ってみました。
栗真由美「記憶のボトル」
「記憶のボトル」は、男木島の人々の思い出の品などをビンに封入したインスタレーション。中には、写真や小物などが入っています。
男木島は、人口200人未満の小さな島で、東京や大阪のような有名な観光地ではありません。でも、そこで生きてきた人たち1人1人に、輝くような思い出がある。
暗闇の中できらめくビンを1つ1つ見つめながら、それらの持ち主の人生を想像して、筆者は温かい気持ちに満たされました。
「男木島にはカフェがたくさんあるので、ぜひ立ち寄ってみてくださいね」。カヨさんにそう言われたことを思い出し、港へ戻る道沿いにあった「Dream Cafe」(※4)にも寄ってみました。テラスからは海が見え、涼しい風が吹き込んできました。
ここで、今日の体験を振り返りながら、物思いにふけりました。
※4……「Dream Cafe」は瀬戸内国際芸術祭の期間中のみ営業しています。
17:00 高松港に戻る
チャーター船は17時ごろに高松港に着き、オフィシャルツアーは終了しました。
参加した訪日観光客からは、「瀬戸内国際芸術祭は、島の歴史やコミュニティーと深く関わる、とてもオーガニックなアートフェスだと感じた」「カヨさんが英語で説明してくれたので、島についてよく理解できた」といった声が聴かれました。
非売品のグッズも
オフィシャルツアーに参加すると、非売品のトートバッグとピンバッチがもらえます。これは、思い出の品にもなるし、旅行中に荷物が増えてきた際にも役立ちますよ。
オフィシャルツアーは、株式会社琴平バスの公式HPから申し込めます。全部で6コースありますよ。
このほか、琴平バスでは瀬戸内海の島々を巡るスペシャルツアーも実施しています。こちらもぜひチェックしてみましょう!
In cooperation with Kotohira Bus Co,Ltd.,
企業のIR/CSR分野のPR、国際協力分野の情報誌編集を経て、2017年10月にMATCHAに参加しました。2019年4月から香川県三豊市に移住。訪日観光客向けの記事を書くほか、地域おこしにも携わっています。
インターネットサービスやレンタカー、ホテルなどのほか、また西日本の観光スポットの記事を主に担当しています。