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【香川・岡山】瀬戸内国際芸術祭2019の新作オススメ5選!(春編)
瀬戸内海に浮かぶ香川県と岡山県の島々、そして高松港と宇野港を舞台に、現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2019」が4月に開幕しました。でも、新旧を含め200以上ある作品のどれを見ればよいか迷ってしまうかもしれません。そんな方のために、オススメの新作を紹介します!
11月まで見られる!
瀬戸内国際芸術祭2019の春の新作5選
瀬戸内海に浮かぶ香川県・岡山県の12の島と2つの港を舞台に開催される瀬戸内国際芸術祭2019が、4月26日に開幕しました。この日本の現代アート最大級のイベントにおいて、2019年4月に発表された新作アートのオススメ作品を5つ紹介します!
これらは秋会期の終わり(11月4日)まで見られるので、ぜひ期間中に行ってみましょう(※)。
瀬戸内国際芸術祭の概要や各島へのアクセスについては、瀬戸内国際芸術祭の公式HP、あるいはMATCHA記事をご覧ください。
各アート作品へのアクセスに関しては、港近くの観光案内所で地図をもらうのがオススメです。また、芸術祭の期間中は、島内の各所に案内看板が立っているほか、英語の話せるボランティアがいる場合もあります。道に迷ったら相談してみましょう。
それぞれのスポットで開催されるイベントに関しては、芸術祭の公式HPのイベントページをチェックしてみてくださいね!
※最後に紹介する沙弥島(しゃみじま)の作品を除きます。
新作①「島の中の小さなお店プロジェクト」(女木島)
瀬戸内国際芸術祭ならではの特徴の1つは、島の住民の生活に根差したアートが多いことです。その意味で、女木島(めぎじま)の「島の中の小さなお店プロジェクト」は、いかにも「瀬戸内国際芸術祭らしい」作品だと言えるでしょう。
このプロジェクトでは、かつて宿として活用されていた廃ビルに、アーティストたちがお店をオープンします。ただ、才気あふれるアーティストたちがつくるお店。当然、ありきたりのレジャー施設なんかではありませんよ!
原倫太郎の「ピンポン・シー」。卓球場をモチーフにしたこの作品では、卓球台の板が木琴となっています。そのため、玉が台に当たるたびに、さまざまな音が発生します。
もちろん、実際にプレイすることも可能です。卓球を楽しみながら、あなただけのメロディーを奏でてみませんか?
中里繪魯洲(なかさとえろす)の「un… こころのマッサージサロン」では、機械仕掛けの椅子(写真右)が登場します。右側にあるハンドルを回すと、椅子の各所の歯車が動き、音楽が奏でられます。
音は金属的ですが、古いオルゴールのような郷愁が漂う不思議なメロディーです。
隣には本物のマッサージチェアも設けられており、お金を払えば使えます。ここで心と体、両方を癒してはいかがでしょうか?
香港のアーティスト、リョン・カータイ(梁家泰)+赤い糸の「ウェディング・ショップ」では、地元で結婚した夫婦の写真の展示を行うほか、中国風の結婚式を体験したり、組み紐を編んだりするワークショップが開催される予定です。
これは、なかなか新婚カップルが生まれない女木島で、出会いの場をつくる狙いもあるそう。
組み紐は、人と人の縁を結ぶ縁起物。2016年に日本で大ヒットした映画『君の名は。』にも登場するので、ご存知の方もいるかもしれません。この場所に行けば、映画の主人公たちのようなロマンチックな出会いができるかもしれませんね!
このほか、「島の中の小さなお店プロジェクト」には、飲食できるカフェやコインランドリー、ヘアサロンなどもオープンします。それぞれ、さまざまな工夫が凝らされているので、実際に足を運んで確かめてみてくださいね!
「島の中の小さなお店プロジェクト」のアクセス
女木港から徒歩10分程度
新作② ワン・ウェンチー「小豆島の恋」(小豆島)
瀬戸内海で2番目の面積を誇る島である小豆島では、2019年も多くの新作が発表されます。中でもオススメは、台湾の作家、ワン・ウェンチーの「小豆島の恋」。
地元の方々の協力を受け、約4,000本の竹を切り出して作り上げた巨大ドームは、まさに圧巻の一言。
タイトル「小豆島の恋」は、島民に広く知られた歌「オリーブの歌」を基にしています。少女の恋をテーマにするこの歌に寄せて、「島から離れても、一緒に過ごした時間や共有した記憶を忘れないようにしよう」という思いを込めたのだとか。
ワン・ウェンチーは第1回以降、瀬戸内国際芸術祭に毎回参加しており、地元との付き合いは10年になります。今回の作品からは、彼と地元の方々との強い信頼関係が感じられますね。
「来た人が、自分の心の声を聞くことができる場を作りたい」というアーティストの思いが反映された「小豆島の恋」。ドームの中は、密に組まれた竹の間から光や風が入り込み、神殿のような荘厳な雰囲気を醸し出しています。
「小豆島の恋」が設置されているのは、小豆島の絶景スポットとして人気の棚田「中山千枚田(なかやませんまいだ)」の中。ここでは、夏は青々とした稲が生い茂り、秋には黄金の稲穂が広がるという、日本の農村の美しい風景が堪能できます。
最寄りのバス停「春日(かすが)神社前」のそばには、小豆島産の農産物を使ったグルメが楽しめる「こまめ食堂」もありますよ。
「小豆島の恋」のアクセス
土庄(とのしょう)港からバス中山線に乗り約20分。バス停「春日神社前」下車、徒歩10分程度
新作③ 朱哲琴(Dadawa)「鐘舎 Bell Shelter」(小豆島)
小豆島では、島内に「八十八ヶ所霊場」と呼ばれる巡礼道を独自に設けるほか、さまざまな寺や神社で人々が祈りを捧げてきました。
中国のアーティスト、朱哲琴(Dadawa)は、小豆島に根付くこのような深い精神性に着目。「鐘の音は、あの世と現世をつなぐ唯一の方法だ」という地元の方の話を基に、サウンド・インスタレーション「鐘舎 Bell Shelter」を作りました。
もともと米蔵だった建物の中では、小豆島で録音された、小豆島の名産であるしょうゆが作られる工場の音や鐘の音が静かに流れています。この中に置かれた鐘を鳴らすと、音が波紋としてスクリーンに映し出されます。
「このアートは、精神的な力を目に見える形に変える場所」と朱哲琴は語ります。深い落ち着きに満ちた場所で、あなたが描くのはどんな波紋?
「鐘舎 Bell Shelter」のアクセス
土庄港(とのしょうこう)からバスの南廻り福田線に乗り、約40分。バス停「馬木(うまき)」で下車し、徒歩
新作④ 「辿り着いた向こう岸‐シャン・ヤンの航海企画展」(小豆島)
中国のアーティスト、シャン・ヤンの「辿り着いた向こう岸‐シャン・ヤンの航海企画展」は、中国の古い家具や漁船を活用して作ったオブジェクトです。
オブジェクトは瀬戸内国際芸術祭2019の会期中、追加で制作されます。これらは後に船のパーツとなり、次回の芸術祭が開催される2022年までをめどに、実際に人を乗せて海へ出航するということです!
船の構想は、1960年代後半にまでさかのぼります。当時、子どもだったシャン・ヤンは母と船に乗り、当時の政治的混乱から逃げた父を捜しに行きました。それ以来、船は、心安らげる場所へ向けた旅のシンボルとなったということです。
旧約聖書の「ノアの箱舟」を思い起させるこのプロジェクト。シャン・ヤンの救いを求める旅は、いったいどこを目指して進むのか。今後も目が離せませんね。
オブジェクトの隣にある家屋には、シャン・ヤンの構想を記したスケッチや船の模型、映像なども展示されています。
「辿り着いた向こう岸‐シャン・ヤンの航海企画展」のアクセス
土庄港からバス「南廻り福田線」に乗って約35分。バス停「草壁港」下車し徒歩。草壁港フェリーターミナルからも徒歩でアクセス可能。
新作⑤ サラ・ヴェストファル「うちの海 うちの見」(男木島)
ドイツとベルギーで活動するアーティスト、サラ・ヴェストファルの「うちの海 うちの見」。
この作品では、空き家の床に張られた水に光が反射して、瀬戸内海の静かな波の動きを再現します。さらに、男木島(おぎじま)で取れたタコを撮影した映像が、その奥の部屋で流れます。
男木島(おぎじま)では、昔からタコつぼ(※1)を使ったタコ漁が盛んに行われてきました。こうした文化背景を踏まえつつ、ヴェストファルは、「日本は騒々しい場所が多い。人々が内面を見つめ直すことができる場所が必要だと感じた」と、作品の狙いを語ります。
瀬戸内海の美しい自然と、現代社会の問題に関する思いが込められたアート。中にはベンチも設けられています。座りながら、瀬戸内海の旅の思い出や、自分の最近の生活について静かに振り返ってみるのもよいかもしれません。
※1:タコつぼ……タコを捕まえるために使う素焼きのつぼ。
「うちの海 うちの見」のアクセス
男木港から徒歩5分程度
沙弥島にも見どころがいっぱい!
残念ながら春会期のみ(5月26日まで)の展示となりますが、沙弥島(しゃみじま)にも見どころが多くあります。
上の写真にあるマデライン・フリンとティム・ハンフリーの「ピボット」。一見、通常のシーソーのようですが、真ん中にAIが搭載されたスピーカーが設置されており、日、英、中国語で会話を楽しむことができます。
夏会期(7月19日~8月25日)、秋会期(9月28日~11月4日)にもさまざまな新作が発表される予定です。ぜひ瀬戸内国際芸術祭に足を運んで、アートが生み出す不思議な空間を堪能してくださいね!
企業のIR/CSR分野のPR、国際協力分野の情報誌編集を経て、2017年10月にMATCHAに参加しました。2019年4月から香川県三豊市に移住。訪日観光客向けの記事を書くほか、地域おこしにも携わっています。
インターネットサービスやレンタカー、ホテルなどのほか、また西日本の観光スポットの記事を主に担当しています。