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【香川】神秘の離島へ!大楠とウミホタル、アートを巡る志々島・粟島の1日旅
「瀬戸内国際芸術祭」の舞台である香川県には、直島や小豆島といった人気の離島が多くあります。中でも、静かな時間と豊かな自然を味わいたい方にオススメなのが志々島と粟島。ウミホタルや楠の巨木といった神秘的な自然、ユーモラスなアートが楽しめますよ。
自然の神秘が感じられる志々島と粟島とは?
日本最大級の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」の舞台である香川県は、「現代アートの聖地」と呼ばれる直島や、絶景リゾート地の小豆島といった人気の離島があります。
でも、そうした有名な離島以外にも、美しい自然と豊かな時間を味わえる島が香川県にはあります。
香川県西部の三豊市にある志々島(ししじま)は、周囲4キロ弱の小さな島。人口は20人程度しかおらず、その分、強い自然の力があちこちから感じられます。ここは、美しい楠の巨木「大楠(おおくす)」が特に有名です。
日本では、古来より巨木を神さまの化身として崇めてきました。そうした「ご神木」は通常、大きな神社の中で保全されています。しかし、志々島の「大楠」は緑あふれる山の中にたたずみ、神秘的な生命力に満ちています。
志々島の隣には、「瀬戸内国際芸術祭2019」の秋会期(2019年9月28日〜11月4日)の舞台にもなる粟島(あわしま)があります。
粟島は、日本初の海員養成学校が設立された船乗りの島であり、夜の海を美しく彩るウミホタルが見られる日本有数のスポット。さらに、あちこちでユーモラスなアートオブジェクトが楽しめます。
本記事では、志々島と粟島の魅力を味わう1泊のモデルコースを紹介します!
8:30-8:50 フェリーに乗って宮ノ下港から志々島へ!
志々島に行くには、まず三豊市にある宮ノ下港に行きましょう。ここで、8:30発のフェリーに乗ります。
※宮ノ下港近くのは駐車場があります。
※バスで宮ノ下港に行く場合、JR予讃線の詫間(たくま)駅から徒歩で25分、あるいは7:59発のバス「詫間線」に乗り、バス停「詫間庁舎」で降ります。バスは日曜・祝日は運休。
切符は船内の自動販売機で購入できます。志々島までは340円。
9:00ー11:00 神秘的な生命力に満ちたご神木「大楠」へ!
志々島についたら、早速、名物の大楠に向かいましょう。亀の形をしたかわいらしい矢印(写真右上)と、「志々島の大楠」(写真左上)と書かれた貼り紙が目印ですよ。
都会では、自動車や電車、お店の音楽といった人工音があふれています。しかし、自動車が1台もない志々島では、聴こえるのは虫や鳥の声、草木のざわめきのみ。山中を歩いていると、自然がおりなす荘厳なオーケストラに圧倒されるかもしれません。
30分ほど歩くと「大楠」にたどり着きます。
高さ約40メートル、樹齢約1,200年の「大楠」は、瀬戸内海を見晴るかす山の中腹にそびえ立っています。近くにいると、その強い生命力がこちらにも流れ込んでくるよう。
人の生死を1,000年以上見つめ続けてきたこの巨木を眺めていると、筆者の場合、小さな悩みごとが抜け落ちて気持ちが穏やかになるのを感じました。あなたも「大楠」に来たら、自分が感じることに静かに耳を傾けてみてくださいね。
「大楠」から少し歩くと、見晴らしのよい休憩所や、山の頂上に行くことができます。体力のある人は行ってみてください。船の「ボー」という汽笛が遠くから聞こえ、鳥が悠然と飛んでいく様子を見ていると、夢のような心地に誘われるでしょう。
11:00-12:00 休憩所「くすくす」でリラックスしよう
「大楠」周辺の散策から戻ってきたら、港近くの「志々島の休けい処 くすくす」に行ってみましょう。
ここは、「大楠」に惚れ込んで移住したご夫婦が運営する休憩所。アイスクリームやハーブティーといった飲み物が楽しめるほか、志々島を愛するアーティストがつくった絵はがきや焼き物なども購入できます。
古民家を改装した「くすくす」の中は、日本の昭和時代を思わせるレトロな雰囲気が漂っています。柔らかな光が差し込む木造の建物内にいると、時間の流れもゆったりしてくるよう。
12:00-13:00 島内のヤギに会いに行こう
「くすくす」でリラックスした後は、次の船が来るまで、島内をもう少し散策してみましょう。
港の近くには、かわいいヤギたちが飼われています。人懐っこい彼らが草を食べる様子を見ていると、こちらものんびりした気分になってくるかもしれません。
海沿いを歩いていると、いくつもの小さな小屋が目に入ります。これは志々島のお墓。志々島では、かつて死者を土葬し、その上に家の形をしたお墓をつくってきました。土葬の習慣はすでになくなりましたが、住民の方々は今も毎日のようにお参りをしています。
たとえ肉体は滅びても、魂はこの家の中で生きていて、私たちを見守ってくれている。そう思うと、なんだか心が温かくなってきますね。ここは、住民の方々の大切な場所ですので、荒らさないようご注意ください。
13:05ー13:35 志々島から粟島へ!
志々島から粟島に行くフェリーは、13:05に出ます。この次は16:40まで便がないので、乗り遅れないようご注意ください。粟島には約30分で到着します。港に着くと、早速かわいいオブジェクトたちが迎えてくれますよ。
※本記事で紹介する「あわろは食堂」や「ル・ポール粟島」は粟島の西側にあります。途中で停泊する「上新田」は粟島の東側になるので、間違えて降りないようにご注意ください。
13:45-15:00 アーティストたちが愛するカフェ「あわろは食堂」へ
最初の道を左に曲がり、そのまま海沿いを歩きましょう。
Picture courtesy of 三豊市観光交流局
5分ほど歩くと、瀬戸内海の海を思わせるさまざまな装飾が施された「あわろは食堂」が見えます。
Picture courtesy of 三豊市観光交流局
「あわろは食堂」は、粟島産の食材を使ったさまざまな料理を提供しています。
オススメは、スズキやボラといった魚を使った「あわろは定食」(税込1,900円)。スズキやボラは、水質がよくない場所ではくさみが強くなるため、都市部ではあまり食べません。これは、海がきれいな粟島だから味わえる絶品グルメです。
Picture courtesy of あわろは食堂
「あわろは食堂」を経営しているご夫婦は、アーティストと島の住民との架け橋となり、2010年以来、「瀬戸内国際芸術祭」を陰から支えてきました。
そのため、「あわろは食堂」にはアーティストが手掛けたモノがあちこちにあります。例えば「あわろはカレー」(税込1,300円)。粟島の形に盛られたご飯の、盛り付け用の型枠は、「あわろは食堂」を愛するアーティストが作ったものだとか。
Picture courtesy of 三豊市観光交流局
アーティストたちを支える「あわろは食堂」のご夫婦のもう一つの思いは、「島のおじいちゃん・おばあちゃんに元気になってほしい」ということ。そのため、彼らが若かった頃に日本で人気のあったデザート「プリン・アラモード」や各種パフェも提供しています。
「あわろは食堂」に来ると、若かりし頃を思い出しながら、おばあちゃんとのデートを楽しむおじいちゃんの姿を見かけるかもしれませんよ。
15:00-16:00 100年以上の歴史のある木造建築「粟島海洋記念館」へ
食後は、本日の宿泊先「ル・ポール粟島」に行ってみましょう。チェックインは16:00からですが、カウンターでお願いすれば荷物を預かってもらえますよ。
それから、同じ敷地内にある「粟島海洋記念館」に行ってみましょう。
粟島では、日本初となる海員養成学校が1897年に設立されました。ここから巣立った海員たちは、商業船に乗り込み世界の海を駆け巡ってきました。
1987年に学校は廃校となりましたが、当時の木造建築は「粟島海洋記念館」として、今も大切に保存されています。中を歩くと、当時の若者たちの元気な足音が聞こえるよう。とても雰囲気のある建物なので、コスプレで写真撮影を楽しむ方もいます。
「粟島海洋記念館」でぜひ訪れてほしいのが、1階の展示室にある「ソコソコ想像所」。アーティスト・日比野克彦(ひびの・かつひこ)氏が粟島沖の海底で見つかったさまざまなモノを展示しており、訪問者は「なぜそれが漂着したのか?」を想像し、画用紙に書いていきます。
フジツボがついたビンや、不思議な形の流木、ボロボロのレンガなど、展示物はさまざま。もしかしたら、あなたの国から流れてきたモノもあるかもしれませんよ。
16:00-18:00 粟島名物のブイアートを探してみよう
粟島には、住民の方々の信仰のよりどころである梵音寺、夕日スポットである西浜、見晴らしのよい絶景スポットの城山(じょうのやま)といった見どころがあります。でも、筆者のオススメは、地図を手放して、自由に散策してみること。
浜辺で静かに揺れるボート、島の方々に大事にされている小さな神社、歴史の年輪を重ねてきた古民家……。あてどなく歩き回る中で、宝物のような光景を何度も目にするでしょう。
粟島を歩いていると、あちこちにかわいらしいオブジェクトを見かけるでしょう。これらはブイで作られたアート。島に住むアーティストが20年以上前から作り始め、今では粟島の名物となりました。
ブイアートの表情は、1つ1つ異なっています。無邪気に笑っていたり、恥ずかしげに微笑んでいたり、眠そうだったり・・・。「こんな顔の人、身近にもいるなあ」。そんな想像をしながら見ていると、楽しい気分になってきそうですね。
少し離れた場所になりますが、粟島の東側には、ブイアートがたくさん集まっている「ぶいぶいがーでん」もありますよ。
18:00-20:00 「ル・ポール粟島」で夕食を食べよう
Picture courtesy of ル・ポール粟島
「ル・ポール粟島」に戻ったら、夕食を食べましょう。夕食は季節の食材を使った日本のフルコースである懐石料理が提供されます。どんなメニューが出るか気になる方は、予約時に確認してみてくださいね。
食事はバーベキューにすることも可能です。予約時に相談してみてくださいね。
20:00ごろ 幻想的なウミホタルを観賞しよう
Picture courtesy of ル・ポール粟島
「ル・ポール粟島」では、宿泊者を対象にウミホタルの鑑賞会を行っています。ウミホタルは、海中に住む小さな甲殻類。刺激を受けると青い光を放ちます。
粟島の周囲は海がきれいなため、多くのウミホタルがいます。こうしたウミホタルを捕まえ、砂浜に撒くと、まるで光の花園のようになります。
人工イルミネーションと異なり、ウミホタルの光は不思議な静けさに満ちています。上は美しい星空、下はウミホタルの光、耳に届くのは波と風の音のみ……。忘れられない一夜になるでしょう。
「ル・ポール粟島」では、ホテル内のツインルームのほか、キャビンで泊ることもできます。こちらの方が、粟島の夜をより深く味わえるでしょう。
翌朝、宮ノ下港に戻る船は、7:25、あるいは11:30になります。朝食は「ル・ポール粟島」で提供してくれますよ。
志々島と粟島をめぐる際の注意事項
志々島と粟島をめぐる際、いくつか注意してほしいことがあります。
1.「あわろは食堂」は金、土、日、祝日のみの営業です。他方で「ル・ポール粟島」は11:30~14:00でランチを行っています。「あわろは食堂」が閉まっている日は、こちらを活用しましょう。
2.ウミホタル鑑賞会は6~9月の季節限定で実施しています。正確な実施期間については、「ル・ポール粟島」にお問合せください。
3.志々島では「志々島の休けい処 くすくす」、粟島では港近くの「島のコンビニたけうち」がお菓子や飲み物を販売しています。ただし不定休のため、飲み物やお菓子を持参することをオススメします。
4.志々島、粟島に行く際、海上タクシーも活用できます。乗る人数が多い場合や、よりフレキシブルに行動したい場合、こちらが便利です。日本語のみの対応となりますが、志々島振興合同会社、いせやにお問い合わせください。志々島振興合同会社の場合、1~3人で、宮ノ下港→志々島間は3,000円になります。
5.志々島は5~9月ごろは虫が多くいます。虫よけスプレーを持っていくといいでしょう。
6.フェリーは、追加料金200円を支払えば、自転車を乗せることができます。
7.志々島や粟島では、英語や中国語といった言語に対応していないスポットもあります。必要に応じて、日本旅行に役立つ日本語フレーズに関するMATCHA記事も参照ください。
そのほか、粟島に行くには、宮ノ下港から車で10分ほどの距離にある須田港も便利です。
父母ヶ浜をはじめ、周辺にも見どころいっぱい
香川県のある瀬戸内海は、海が穏やかなことが特徴です。そして、志々島と粟島は、子守歌のような瀬戸内海の波音が、より深く聞こえるような場所。この記事を参考に、ぜひ、あなただけの宝物を見つけに行ってくださいね!
粟島と志々島の近くには、「日本一の夕日スポット」と言われる父母ヶ浜をはじめ、さまざまな見どころがあります。粟島や志々島に来たら、ぜひ近くも周遊してみてくださいね!
In cooperation with 志々島の休けい処 くすくす、あわろは食堂、ル・ポール粟島
企業のIR/CSR分野のPR、国際協力分野の情報誌編集を経て、2017年10月にMATCHAに参加しました。2019年4月から香川県三豊市に移住。訪日観光客向けの記事を書くほか、地域おこしにも携わっています。
インターネットサービスやレンタカー、ホテルなどのほか、また西日本の観光スポットの記事を主に担当しています。