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2025年4~11月、現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2025」が香川県と岡山県で開催されます。直島や小豆島、豊島といった瀬戸内海の島々を舞台とするこのイベントならではの魅力は何か。お得な作品鑑賞パスポートや会場の情報なども併せて紹介します。
豊島の風景
「瀬戸内国際芸術祭2025」が、2025年4月11日~11月9日にかけて開催されます。
瀬戸内国際芸術祭は、日本最大級の現代アートの祭典。2010年以降、3年に1度開催されており、2025年に6回目を迎えました。今回は11の島と、瀬戸内海に面する6エリアで開催されます。
草間彌生や安藤忠雄などの作品が楽しめる直島を含め、島旅を楽しみながらアートに触れられる瀬戸内国際芸術祭。その魅力やアクセス、旅行時に役立つ情報をお伝えします。
瀬戸内国際芸術祭では、国内外のさまざまなアーティストが、島民やボランティアと協力しながらアート作品を創っています。ここでは筆者の観点から、3つの魅力をお伝えします。
中島伽耶子「うつりかわりの家」2013年 Photo Courtesy of Kimito Takahashi
浜辺に打ち寄せる波、木々を揺らす風、朝焼けと夕暮れの美しい景観……。瀬戸内海の島々の魅力の一つは、美しい自然です。そして、瀬戸内国際芸術祭には、自然の魅力をより深く体感できるアートが多くあります。
例えば、高見島の「うつりかわりの家」。古い家屋の屋根や壁に無数に開いた穴から、外の光が入り込みます。季節や天候、時間帯などによって光が変化するため、その日ごとの無二の状況を体感できます。
こうしたアートを体験すると、異次元を通り抜けたかのように、世界の感じ方が変わるかもしれません。
淀川テクニック「宇野コチヌ」2016年 ※2010年作「宇野のチヌ」の「子ども」として制作された。 Photo Courtesy of Yasushi Ichikawa
岡山県の宇野港のランドマーク「宇野のチヌ」。遠目で見るとカラフルでかわいいオブジェクトですが、近づいてみると、その体を作っているのは、なんと近隣から出たゴミや不用品です!
このように、瀬戸内国際芸術祭には、地元の方々の生活に密接に関連した作品が多くあります。
オブジェクトだけではありません。直島には銭湯をアートにした「I ♥ 湯(アイラブユ)」、女木島にはヘアサロンやコインランドリーをアートにした「島の中の小さなお店プロジェクト」があります。
これらは、実際にお風呂に入ったり、髪を切ってもらったりできます。こうした場所は、地元の方々も利用しているので、ばったり会ったら話が弾むかもしれませんね!
安部良「島キッチン」2010年 Photo Courtesy of Osamu Nakamura
瀬戸内海の島々には、その土地で取れる魚介類や農作物を使った絶品グルメがあります。食の楽しみも、瀬戸内国際芸術祭の欠かせない魅力の一つ。多くの島に魅力的なレストランがあります。
例えば、豊島の「島キッチン」。「食とアートで人をつなぐ」という思いのもと、2010年に設立されたこの古民家レストランには、島内、島外のさまざまな人が集います。
島民と協働して作品制作をするアーティスト(粟島、2019)
アートと言えば、「美術館の中で静かに鑑賞するもの」というイメージがあるかもしれません。
しかし、瀬戸内国際芸術祭の背景には、「過疎化が進む瀬戸内海の島々を元気にしたい」という地元の方々やアーティストたちの願いがあります。それが、この芸術祭の独自の魅力を生み出しています。
瀬戸内国際芸術祭2025は、以下の3会期に分けて実施されます。
会期 | 期間 | 会場 |
春 | 2025年4月18日~5月25日 | 直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港エリア、宇野港エリア、瀬戸大橋エリア(春のみ) |
夏 | 2025年8月1日~8月31日 | 直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港エリア、宇野港エリア、志度・津田エリア(夏のみ)、引田エリア(夏のみ) |
秋 | 2025年10月3日~11月9日 | 直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港エリア、宇野港エリア、本島(秋のみ)、高見島(秋のみ)、粟島(秋のみ)、伊吹島(秋のみ)、宇多津エリア(秋のみ) |
3会期すべての舞台になるのが、小豆島や直島、豊島、女木島といった東の島々です。その一方で、本島や粟島など西の4島は、秋会期のみの開催となります。
栗林隆「伊吹の樹」2019年
有名アートスポットが多くある東の島々は、初めての方にオススメです。
他方で、西の島々も独自の魅力やアートを楽しめます。例えば、伊吹島では「瀬戸内国際芸術祭2019」で、地域の伝統を踏まえつつ、生命の誕生をモチーフに制作された「伊吹の樹」が大きな話題となりました。
さらに、2025年は、志度・津田エリアと引田エリア(夏のみ)、宇多津エリア(秋のみ)が初めて会場になり、アート作品が飾られます。
特にリピーターの方は、西の島やこういった初めてのエリアにも、ぜひ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?
日比野克彦「種は船プロジェクト」2019年(粟島)
瀬戸内国際芸術祭で制作されたアート作品の約半数は、会期後も残ります。そういう意味で、瀬戸内の島々は、芸術祭の会期外でも楽しめます。
ただ、会期中だから楽しめるイベントやアート作品も多いのも事実。例えば、瀬戸内国際芸術祭2019では、アーティストがつくった船に乗って島の沿岸を巡ったりできるプロジェクトがありました。
2025年も、会期中ならではのさまざまなイベントやアートがあります。詳細は、瀬戸内国際芸術祭の公式HPをチェック!
瀬戸内国際芸術祭の舞台となる島には、複数のホテルや宿泊施設があります。こうした場所で、島の雰囲気を満喫してみてはいかがでしょうか。
Picture courtesy of Booking.com
2022年にオープンし話題となった「直島旅館 ろ霞」でしょう。瀬戸内の魚をメインとしたグルメのほか、館内の随所でアートが楽しめます。
宇野港にある「KEIRIN HOTEL 10」も2022年にオープンしたアートホテル。競輪をモチーフにしたユニークなアートが館内で楽しめます。
このほか、アートを楽しめる直島のホテル「ベネッセハウス」も人気です。
宇野港
瀬戸内国際芸術祭の魅力のひとつは、船旅が楽しめること! 瀬戸内海の穏やかな海を見ながら、船に揺られるのは格別の体験です。
各島へ行く港については、以下の表を参照ください。
港 | アクセスできる島 |
高松港 | 直島、豊島、小豆島、女木島、男木島、大島 |
宇野港 | 直島、豊島 |
宝伝港(岡山市) | 犬島 |
丸亀港(丸亀市) | 本島 |
多度津港(多度津町) | 高見島 |
須田港(三豊市) | 粟島 |
観音寺港(観音寺市) | 伊吹島 |
高松から各島に行くには、片道500~1000円ほどかかります。
各島への詳細なアクセス方法は、公式HPをご覧ください。
各島へのアクセス:https://setouchi-artfest.jp/access/island/
アート作品を見る際は、1作品あたり300~510円ほどの鑑賞料が必要です(一部例外あり)。
しかし、たくさんの作品を見て回りたい人向けに、瀬戸内国際芸術祭では、2種類のパスポートを準備しています。
オールシーズンパスポート:5,500円(4/17まで早割で4,300円)
1シーズン限定のパスポート:4,500円
パスポートは、アプリと紙冊子、どちらもあります。
瀬戸内国際芸術祭の公式アプリでは、パスポートの購入のほか、作品情報、作品までのアクセスなどが分かるため、とても便利です。
アプリのDLはこちら:https://setouchi-artfest.jp/access/app/#app-info
会期中は、芸術祭の会場や港などに設置されている案内所で紙冊子のパスポートが購入できます。
また、コンビニや旅行会社経由で、パスポート引換券を購入することも可能です。
作品鑑賞パスポートについて:https://setouchi-artfest.jp/buy/passport
「【瀬戸内国際芸術祭】オフィシャルツアーをオススメする3つの理由」より
瀬戸内国際芸術祭2025では、複数の公式ツアーが開催されます。
春会期は、小豆島を巡りながら作品解説をしてもらえるツアーや、作品鑑賞に合わせてイベントに参加できるツアーなどがあります。
詳細は、公式HPをご覧ください。
公式ツアーについて(春会期):https://setouchi-artfest.jp/news/detail/be5b3699-bf89-4b9f-bdca-cd42a8d69536
近年は温暖化の影響で、特に夏は、香川県や岡山県も猛暑に見舞われます。夏に行く場合はもちろん、春や秋に行く場合も、日焼け止めを塗っていくなど、熱中症対策をしていきましょう。
瀬戸内国際芸術祭の会場は、島です。島は、船の便がないと行き来できません。行く前に、船の時刻表をしっかりチェックしましょう。
※海上タクシーがある島もあります。帰りの便を逃した場合、案内所などに相談してみてください。
高松港周辺
瀬戸内国際芸術祭では、島内にアートが点在しているため、かなり歩きます。
こうした際、大荷物を抱えていると大変です。ホテルやゲストハウスで荷物を預かってもらったり、港にあるコインロッカーを活用したりしましょう。
準備をしっかり整えて、素敵な島旅を楽しんでくださいね!
Main Image :チェ・ジョンファ(崔正化)「太陽の贈り物」(小豆島)
企業のIR/CSR分野のPR、国際協力分野の情報誌編集を経て、2017年10月にMATCHAに参加しました。2019年4月から香川県三豊市に移住。訪日観光客向けの記事を書くほか、地域おこしにも携わっています。
インターネットサービスやレンタカー、ホテルなどのほか、また西日本の観光スポットの記事を主に担当しています。