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日本のユニークな魅力を探そう!香川・女木島のアート・カフェ巡り
日本のユニークな魅力って何だろう? 東京や大阪といった都市にも面白いものはたくさんあるけれど、田舎にも、ユニークな魅力がたくさんあります。日本最大級の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2019」の舞台の1つ、香川県の女木島でアートやカフェを巡りながら考えてみました。
日本のユニークさって何だろう?
日本ファンのみなさん、日本のユニークさってどんな点だと思いますか? アニメ? 禅? 「Kawaii」文化? トイレなどに見られるハイテク設備? あるいは「おもてなし」といった接客態度?
どれも、日本ならではのユニークな点でしょう。ここに付け加えるなら、香川・岡山県の「瀬戸内国際芸術祭」や新潟県の「大地の芸術祭」をはじめ、小さな島や農村で現代アートの祭典が開催されていることも、1つの特徴かもしれません。
筆者は2019年6月末、日本ならではのユニークな魅力の調査・発信を行う「クール・ジャパン戦略」の関係者とともに、「瀬戸内国際芸術祭」の舞台の1つである香川県の女木島(めぎじま)に行きました(※)。
本記事では、この女木島で発見したユニークな魅力を紹介したいと思います。
※本記事には、2019年8月に再取材した際の写真が含まれています。
瀬戸内国際芸術祭の舞台の1つ、女木島とは?
杉浦康益「段々の風」(瀬戸内国際芸術祭の作品)
瀬戸内国際芸術祭は、2010年から始まった3年に1度の芸術祭。「過疎化が進む瀬戸内海の島々を元気にしたい」という思いのもと、12の島と2つの港にさまざまなアート作品が展示されます。
この舞台の1つとなっているのが、女木島。人口150人に満たない小さな島ですが、高松港からフェリーで20分と近く、美しいビーチがあることから、夏は観光客でにぎわいます。
日本の有名な英雄譚「桃太郎」で登場する鬼が住んでいたと言われる洞窟があることから、別名「鬼ヶ島」とも呼ばれています。
女木島で見つけた3つのユニークな魅力
瀬戸内国際芸術祭によって多くの人が訪れるようになった島では、すてきなカフェやゲストハウスがオープンしています。
ここでは、筆者が女木島で訪れたカフェと2つのアート作品を通して、筆者が見つけたユニークな魅力を紹介します。これらのスポットには、どれも「古いものを大切にしつつ、新しいものを生み出す」ことへのこだわりが感じられました。
1.数十年前の日本にタイムスリップできる?カフェ「鬼ヶ島倶楽部」
2019年4月にオープンしたカフェ「鬼ヶ島倶楽部」(※)は、香川県高松市出身の三島光春(みつはる)・惠子ご夫妻が運営しています。
※:「鬼ヶ島倶楽部」は瀬戸内国際芸術祭の関連施設ではありません。
三島ご夫妻は、夫の光春さんが60代になって定年退職した後、このカフェを始めました。世界でもっとも高齢化が進んだ社会として知られる日本では、挑戦心が旺盛な高齢者も多くいます。三島ご夫妻もその1人。
「島民と島外の人がコミュニケーションできる場所をつくりたい」という思いから「鬼ヶ島倶楽部」を始めたということですが、歳を取ったからこそ、やりたいことにチャレンジする姿勢が素敵ですね!
「鬼ヶ島倶楽部」のこだわりは、店内に漂うレトロな雰囲気。骨董好きの惠子さんが集めた古いオルゴールや蓄音機、茶器などの骨とう品が店内を埋め尽くしています。
店内には、安価な駄菓子もたくさん置いてあります。日本では数十年前、子どもたちはお小遣いを握りしめ、町にある駄菓子屋にお菓子を買いに行っていました。「鬼ヶ島倶楽部」にいると、数十年前の日本にタイムスリップした気分になるかもしれません。
暑い日にオススメなのは、女木島産のブルーベリーを使った酵素ジュース(税込600円)。猫をかたどった、かわいいお菓子付きです。
冬は、有機栽培の豆で淹れたコーヒー(税込600円、テイクアウトは税込400円)がオススメ。他のお店ではめったに見られないフレンチプレスを使っており、すっきりした味わいが特徴です。
「鬼ヶ島倶楽部」は、地球環境に配慮し、ストローやテイクアウト用容器を紙製にしています。近年、海のプラスチックゴミが大きな問題となっており、女木島がある香川県でも、海ゴミ拾いのボランティア活動が盛んに行われています。
「採算だけ考えると、割に合わないんだけどね」。そう笑う三島ご夫妻。環境問題に積極的に取り組む姿勢も素敵ですね。
なお、「鬼ヶ島倶楽部」は土曜日の9:00~21:30、日曜日・祝日の9:00~16:30のみのオープンとなりますので、行く際にはご注意ください。
2.日常を面白くする!「島の中の小さなお店」プロジェクト
「島の中の小さなお店」プロジェクト
ハイテクトイレをはじめ、日本人の日常生活にはユニークな機器が多くあります。
こうした便利さを追求したハイテク機器もユニークですが、「古いものや、今あるものを活用しつつ、日常を面白くしよう」という遊び心あふれる取り組みが多いのも、日本の1つの特徴かもしれません。
瀬戸内国際芸術祭には、島民の方々の生活に役立ちつつ、アートとしても面白い作品がたくさんあります。その1つが、「島の中の小さなお店」プロジェクト。もともと宿として活用されていた廃ビルを再利用し、8つのアート作品が展開されています。
建物自体は、ただの古びたコンクリート建てで「面白くなさそう」と感じるかもしれません。でも、中に入ると……。
レアンドロ・エルリッヒ「ランドリー」
上の写真にある「ランドリー」。一見して、ただのコインランドリーだと思うでしょう。でもこちら、実は洗濯物が回っている”映像”なのです。この向かい側にはもう1つ、同じ形のランドリーが設けられています。そちらは本物で、実際に洗濯物を洗うこともできます。
私たちが見ているものは、視覚が得た情報を脳が解釈・編集した映像です。この世界のありのままの姿ではありません。
作家のレアンドロ・エルリッヒは、視覚的な錯覚を用い、私たちの常識を揺さぶる作品を多く制作するアーティスト。こうした作品に触れると、見慣れた日常の風景の中に、実は世界の神秘が潜んでいるんじゃないか。そんな気になりますね。
レアンドロ・エルリッヒは、女木島では「不在の存在」という作品も展示しています。
宮永愛子「ヘアサロン壽」
その一方で、宮永愛子の「ヘアサロン壽(ことぶき)」は、海を見ながら髪を切ってもらえるお店・アート作品です。
通常、ヘアサロンというと、髪を切ってもらう間は雑誌を読んだり、おしゃべりをして「暇つぶし」するだけかもしれません。でも、カットの間、美しい海を眺めることができたら?
光や風を受けて形を変えていく海を眺めながら、髪を切ってもらっている自分の心の変化も感じられて、終わった後でフレッシュな気分になれるかもしれません。
洗濯をしたり、髪を切ったりすることは日常的な行為です。でも、ちょっとした発想で、とても面白くなる。「島の中の小さなお店プロジェクト」は、そんな気づきに満ちた作品がたくさんあります。ほかの作品については、MATCHA記事も参照ください。
3.古い文化をよみがえらせる!「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座』」
依田洋一朗「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座』」
暗闇の中、ポップコーンを片手に、銀幕に映る物語の世界に没頭する……。かつて映画館は、日常生活のすぐ近くにある非日常の世界でした。
DVDやインターネットの動画配信が普及した現代は、映画館に行かない人も多いかもしれません。そんな中、女木島で、瀬戸内国際芸術祭の作品として2016年に開設されたのが、依田洋一朗「ISLAND THEATRE MEGI「女木島名画座」」です。
依田洋一朗「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座』」
アーティストの依田洋一朗は、香川県生まれのアメリカ育ち。ニューヨークの42丁目にあったシアター街をこよなく愛していました。「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座』」は、90年代後半に取り壊されたこのシアター街のエッセンスを凝縮した「幻のシアター」を現出させる狙いでつくったということです。
中は、作家の自作となるスターのブロマイドや油絵で覆われています。瀬戸内国際芸術祭の会期中は、アーティスト自身が制作した、42丁目のシアター街が取り壊されていく様子を描いたドキュメンタリーや、チャップリンの白黒映画などが上映されます。
依田洋一朗「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座』」
「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座』」は、もともと倉庫だった場所を改修して作られました。古民家や山、畑が広がる素朴な風景の中に生まれたミニシアターは、不思議な存在感を発揮しています。
依田洋一朗「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座』」
さまざまな外国の文化を取り入れて、新しい形に作り替えていく。日本はこれまで、中国や欧米の文化を吸収しながら、そのような形でユニークな文化を生み出してきました。
古いアメリカの文化が、日本の過疎の島で生まれ変わる。「ISLAND THEATRE MEGI 『女木島名画座』」が、どのような新しい文化を生み出していくのか。今後の展開が楽しみですね。
日本のユニークな魅力を探しに行こう!
「クール・ジャパン戦略」で日本の魅力発信に携わっている平井卓也・内閣府特命担当大臣は、「古民家などの地域の生活、瀬戸内海の豊かな自然の風景に現代アートが融合することが、新しい価値を創造している」と述べています。
東京や大阪、京都といった都市や有名観光地には、多くの日本らしい魅力を見つけることができます。同時に、小さな農村や島でも、ユニークな魅力を見つけ出すことができます。
日本に来たら、都市も楽しみつつ、ぜひ田舎でも日本のユニークな魅力を探してみてくださいね!
In cooperation with Onigashima Club,Deputy Counselor Intellectual Property Strategy Headquarters Cabinet Office
企業のIR/CSR分野のPR、国際協力分野の情報誌編集を経て、2017年10月にMATCHAに参加しました。2019年4月から香川県三豊市に移住。訪日観光客向けの記事を書くほか、地域おこしにも携わっています。
インターネットサービスやレンタカー、ホテルなどのほか、また西日本の観光スポットの記事を主に担当しています。