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【京都】安藤忠雄設計!任天堂の歴史が始まった「丸福樓」に泊まる
世界的に有名なゲーム会社「任天堂」は、1889 年に京都の鍵屋町(かぎやまち)で革新と夢の旅を始めました。「丸福楼(まるふくろう)」は、そんな任天堂の事務棟・住宅棟・倉庫棟からなる旧本社社屋の建物を活かしつつ、安藤忠雄氏の設計により2022年4月にホテルとしてリニューアルオープンした施設です。
任天堂ファンなら知っておきたい裏話
任天堂は1889年の創業以来、当初は花札やカルタといった日本の伝統的なカードゲームの製造・販売を手掛けていました。花札の職人である創業者の山内房治郎は、事業やゲームにおいて実力と知恵だけでなく、運も重要であると信じていたことから、「人事を尽くして天命を待つ(やるべきことを全力でやり遂げた上で、運を天に任せる)」という意味を持つ「任天堂」が誕生したのです。そして、紙製の花札が大ヒットした後、任天堂は日本初の国産トランプの製造にも成功しました。
歴史的建物に新たな使命を与える
1947年に2代目社長の山内積良が設立した「株式会社丸福」の本社ビルは、後にホテル「丸福楼」となる建物の前身です。この建物は事務所、住居、倉庫としての機能を兼ね備え、10年以上にわたり山内家と従業員の歴史を見守り続けました。移転後も毎月訪れて窓を開け、風通しを良くする習慣が受け継がれていたため、建物は百年以上にわたり非常に良好な状態を保っています。その結果、「Plan・Do・See」の運営によって、この場所はホテル「丸福楼」として新たに生まれ変わることになりました。
長き年月の歴史を感じる扉を開く
丸福楼は既存の3つの建物と、撤去後修復された新しい建物から構成されています。深緑の扉を開けると、まず目に飛び込んでくるのは過去のオフィススペースと長い廊下で、廊下の奥には古い倉庫エリアが広がっています。
任天堂の名前が入ったトランプ用の木箱、請求書保管用の木箱、そして出退勤時に使われていた時計
ホテル担当者によれば、元の空間の大きさを変えられないため、構造を最大限に活かしつつ、かつての日常生活で使用されていた資料や物を随所に残すことで、ホテル全体に目を引くディテールを加えているのだそう。
かつて荷物や商品を運ぶために使われていたレトロなエレベーターは、今も時代の記憶を物語るかのようにひっそりと存在しています。
任天堂の原点を探るライブラリー「dNa」
任天堂創業者である山内家が監修したライブラリー「dNa(ディーエヌエー)」には、ゲームボーイなどのクラシックゲーム機や関連書類などが保管されており、旅人は任天堂が「独創性」と「遊び心」を大切にする姿勢を理解できます。挑戦を恐れないその理念は彼らを時代の最先端へ導いています。
安藤忠雄が創意工夫を凝らし、新旧が共存するモダンな客室を監修
洋と和の要素を含む全7種類18室の豪華なスイートルームは、世界的建築家・安藤忠雄氏がデザインディレクターを務めました。各スイートの装飾や内装、家具、照明などが異なり、滞在ごとに新たな発見があります。
安藤氏が手がけた洗練された新築棟
打ち放しコンクリート建材を用いてミニマルな建築を表現することを得意とする安藤忠雄氏は、今回の「新館」においても、光と空間が自然に溶け合い対話できるよう、華美な装飾を排除することにこだわりました。
壁には、安藤忠雄自身がホテルが開業する前に残した直筆サインとイラストが掲げられており、ファンならばそれを見て感激することでしょう。
優雅でレトロな既存棟
控えめで優雅な佇まいを持つ既存棟は、元の建築スタイルを最大限に活かすとともに、華美すぎない装飾をあえて減らし、昔ながらの風情に浸る時間を楽しませてくれます。
洋風と和風を融合させたスイートルームでは、安藤忠雄の初期代表作「長屋」の影響が見られ、宿泊者は畳室と客室を繋ぐ透明な細長い廊下を渡って自在に移動することができます。
パティオの下には四季折々の景色を楽しむことができる贅沢な露天風呂があります。天候に左右される非日常的な体験をすることがができることが、この客室の最大の特長です。
バルコニー付きスイートは、古くてモダンな木目調のシーリングファンや、落ち着いた雰囲気を醸し出すワインレッドのカーペット、バルコニーの白と黒のタイルなど、細部にまで独特のクラシカルなテイストが漂います。
吹き抜けのバルコニーから振り返ると、目の前には堂々とした「任天堂」の看板が。
暖かく心地よい、洋食料理の再構築「carta.」
丸福楼は、豪華な会席料理を提供するのではなく、旅の始まりと終わりに料理を味わった瞬間から、旅人にくつろいでもらいたいと考えています。
"carta."のメニューは日本でも有名な料理研究家である細川亜衣さん監修しています。旬の果物や食材と日本で古くから使われてきた発酵食品や調味料を組み合わせ、今までにない形で再解釈した体に優しい洋食料理を提供しています。
さいごに
丸福楼に訪れると、快適なソファに座り、レコードから流れる柔らかく滑らかな音楽に耳を傾けるような気分で、50年以上前の歴史や情緒に浸ることができ、任天堂の巡礼の願いも満たされます。
任天堂ファンだけでなく、建築ファンの方も、次回の京都旅行で「丸福楼」を訪れ、ゆっくりと歴史の足跡をたどってみてはいかがでしょうか。
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In cooperation with 丸福樓