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願い事がひとつだけ叶う。京都・嵐山の「鈴虫寺」で和尚さんの説法に肖る
京都の静かなお寺を訪れたい方には必見!嵐山にある鈴虫寺の見どころを紹介しています。
京都駅から市バスで40分。碁盤の目の道すがら数々の神社仏閣を通り過ぎつつ、何度でも足を運びたくなるお寺が京都の嵐山にあります。
禅寺の華厳寺、通称「鈴虫寺」がそれです。
一年中鈴虫が鳴いているお寺
市バスで「松尾大社駅」に降り立ったあとは、住宅地の中の細道を、手作りの看板だけを頼りに向かいます。
途中、分かれ道になって、どちらへ行こうか立ち尽くしていたところへ「鈴虫寺はあっちだよ。」と自転車に乗ったおじいちゃんに教えてもらったりしながら、ゆるやかな坂道を登ってたどり着きました。
ふぅ、と一息ついたところで境内まであと一歩。山の奥へ吸い込まれるように伸びたこの階段は、全部で80段あり、極楽へ向かう階段の段数と同じなのです。
今やっと坂を登ってきたところなのにーなど文句を言わず、一段一段踏みしめて登ってみてください。煩悩を捨てる第一歩です。
「鈴虫寺」と呼ばれる所以は、季節に問わず一年中お寺の中で鈴虫が鳴いているから。もともと鳴くのは求婚のためですから、お寺にいる鈴虫は必ずオスとメスが同じ数ずつ同じ場所にいるようにしているそうです。そうでないと、修羅場になって鈴虫がいなくなってしまうとか。
またお寺自体は縁結びの神様で、お地蔵さまがお祀りされています。これがとても珍しく、本来お地蔵さまは道端やお墓などに安置されていて、神様ではないため参拝する対象にはならないそうです。
しかし、「幸福地蔵」という鈴虫寺のお地蔵さまは、たったひとつだけですが願い事を叶えてくれることで慕われています。わらじを履いていることも特徴で、参拝客の家を回って願い事を叶えに来てくれるそう。ですので参拝時は自宅の住所を心の中ではっきり唱えなければなりません。
言い忘れたら、お地蔵さまが道に迷って願い事を叶えに来てくれないので、ご注意を。
心洗われる和尚さんのお話
鈴虫寺なんだから一体どれほどの大合唱なんだろうと思って階段を登りきると、あれ、鈴虫の声が聞こえない……?
ちょっとがっかりしつつ、「鈴虫説法」を聞きにお寺の中へ。鈴虫寺では毎日交代制で「鈴虫説法」称して、お寺の和尚さんが20分ほどお話をして下さる時間が設けられています。500円払って中に入ると、広いお座敷に通され、突然リンリンという鈴虫たちの奏でる音色が。
どうしてこんなにいっぱいいるのに、外から聞こえないんだろう?とケースの中を覗き込みながら考えていたら、和尚さん登場。月ごとに説法の内容は変わるようで、京都弁を交えたゆるやかな口調で和尚さんが話し始めました。
この部屋での写真撮影は禁止だったため、和尚さんのお話をかいつまんでご紹介します。
最近、お寺へ来る人はみんな「手を合わせる」ということをしなくなってしまいました。ただ境内へ来て、なんとなく写真を撮ったりぶらぶら歩き回って帰る人が増えたそうです。しかし、お寺は本来仏様がいらっしゃる場所。仏教を信じているいないに関わらず、ちょっと立ち止まって、仏様にあいさつする気持ちで手を合わせてみると心がほっと落ち着くものです。
そういう何気ない仕草も、意識して続けていると習慣になります。習慣は、人の在り方を表すもの。なにもお寺に毎回くる必要はなくて、食事をする前に手を合わせるだとか、普段の生活の中でちょっと気をつければ、周りを見渡す心の余裕が生まれる。その余裕が、人柄を育てるのだというお話でした。
説法を頭の中で反芻しながら、そういえば最近忙しすぎて小さなことでイライラしたり、雑になっていたかも……など自分の心の荒みにハッとさせられます。
鈴虫寺から京都市内を望みながら、なんとなく心が洗われた気がする。それは鈴虫の音色に乗せた、穏やかな和尚さんの説法のおかげかもしれません。
華厳寺「鈴虫寺」
住所:京都府京都市西京区松室地家町31
拝観時間:9:00~17:00(鈴虫説法の受付は16:30まで)
定休日:無
Wi-Fi環境:無
最寄り駅:京都バス「鈴虫寺」
アクセス:京都バス73、83番「鈴虫寺ゆき」にて、終点下車、徒歩3分
/市バス28番「大覚寺ゆき」にて、「松尾大社」下車、徒歩15分
価格帯:拝観料500円
電話番号:075-381-3830
公式HP:http://www.suzutera.or.jp/
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富士山の麓生まれ。おばあちゃんになったら、国内外問わず、山の中で書道の先生をやるのが小さい頃からの夢です。