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日本のことば事典「町屋」
京都や金沢など、古い歴史を持つ日本の都市でよく見られる「町屋」。大通りに面した、職住一帯の建築です。日本らしい雰囲気を楽しめ、現在では宿泊施設や商店としても活用されている町屋を紹介します。
町屋って?
町屋(まちや)とは都市の表通りにびっしりと何軒も立ち並んだ、店舗と住宅が一体化した建物です。
店舗を兼ねているので、往来に面して扉が大きく開いていることがほとんどです。人の出入りがしやすい、商売に適した構造になっているのです。
町屋は主に商業や手工業が盛んな地域に数多く見られます。
※1……土間(どま):土を叩いて固められた屋内・屋外の中間にあたる場所。
建築学的には「町屋」という字を使いますが、「町家」という字を使うこともあります。明確な区分はありませんが、住居に重点を置いている場合に「町家」と呼ぶという説があります。
なお、平安時代に書かれた書物には既に町屋という言葉が出てきており、約1200年以上の歴史があると考えられています。
京町家の特徴
町屋はいろいろな地域に存在しますが、京都に作られたものは「京町家」と呼ばれ、他とは異なった特徴があります。京都では「町家」の字を使っているケースが多く見られることから分かるように、他の地域に比べ、住居スペースが洗練されていると言えます。
京町家の特徴は「格子」。細い木を縦横に組み戸や窓に取り付けた設備で、京町家ならではの独特の外観を生み出しています。また「坪庭」(※2)など、自然を愛でるスペースが設けられている点も見逃せません。
坪庭は実用性にも優れており、風通しをよくし、光を採り入れる役割も果たしています。なお、町家は建てられた時代によって坪庭などのつくりが異なるため、当時の流行を垣間見ることができます。
※2……坪庭(つぼにわ):屋敷内で、建物や垣根に囲まれた小さな庭。中庭。
現代における町屋の使用法は?
町屋は日本の伝統的な建物であるため、古い絵画などで当時の様子を知ることができます。しかし、展示場や飲食店として再利用されているため、実物も簡単に見ることができます。再利用された町屋は日本の文化を体験できる場所として、訪日観光客にも人気があります。なかでもオススメは宿泊所。町屋で過ごすことにより、建物のつくりをじっくりと観察できる上、当時の人達がどのような暮らしをしていたかを感じ取ることができます。
石川県金沢市にある金沢城近くの「ゲストハウス白(しろ)」は約120年の歴史がある町屋をリノベーションしたゲストハウスです。古い町屋のよい所を生かしつつ、便利さを採り入れており、快適に過ごせること間違いなしです。
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京町屋で過ごしてみたいなら、京都府京都市西大路御池の「ウサギノネドコ」もオススメ。カフェ、雑貨店、ホテル一体型の建物で、町屋一軒まるごと借りることができます。ただし、宿泊は一日一組限定なので、早めに予約しましょう。
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ゲストハウス白、ウサギノネドコ、どちらも観光の拠点にするにはもってこいです。近くにはカフェ、コンビニもあり便利ですが、キッチンや調理器具が完備されているコンドミニアム式のホテルなので、日本ならではの食材を買い込んで、調理をするのもまたよい思い出になるでしょう。
日本の建築技術や芸術的センスを身近に感じられる町屋。観光地を巡るのもよいですが、昔の日本人が過ごした町屋で、当時の庶民の暮らしに思いを馳せるのはいかがでしょうか?