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日本のことば事典「漆・漆塗り・漆器」
今、世界各国で、和食文化が広がっています。それと共に注目されているのが漆器です。漆の魅力は、何と言っても、黒と朱を基調とする深い光沢です。和食や和菓子は、味覚だけではなく視覚的にも、私たちを楽しませてくれます。
漆塗りは日本の技術の歴史
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漆(うるし)はウルシノキと呼ばれる植物の樹液を加工した塗料のこと。器に漆を塗って作る伝統工芸のことを漆塗り(うるしぬり)、出来上がった工芸品のことを漆器(しっき)と呼びます。
日本で漆が使われるようになったのは、2,000年以上前からであると言われています。食器のみならず、クシのような装身具、棺、武将の甲冑、碁盤や将棋盤などなど、ありとあらゆる工芸品に漆は用いられています。
現在の日本には、30カ所近くの漆器の産地が存在します。日本は、北から南、海岸沿いから内陸まで、漆器は各地域の特性を反映しながら、さまざまに進化していきました。
漆は天然の成分であるため、漆が採取された地域や時期などによって、乾き方や粘度が変わってきます。そこで大きな役割を担ってきたのが漆を扱う職人たちです。職人たちは、漆の性質の違いを見極め、漆を最高の状態で使うための技術を継承してきました。その技術は、漆の産地で脈々と受け継がれています。
各地の漆器とその特徴
漆器は現在も日本全国で作られており、長い伝統を持つ漆器の中には、その土地の名前がつけられているものもあります。各地で作られる漆器の内、特に有名な産地を紹介します。
石川県輪島市で作られている輪島塗(わじまぬり)は、「地の粉山(じのこやま)」と呼ばれる、漆器作りに適した土が採れることから発展しました。
輪島市にある老舗の販売店が「輪島漆器大雅堂」です。このお店では、熟練の職人が作った輪島漆器を直接買うことができます。漆器を気軽に使いたい人には「輪島屋善仁」がオススメです。ボールペンやコーヒーカップなど普段使いの小物を取り扱っており、若い人や海外の方でも漆器を身近に感じられます。
リンゴの産地で有名な青森県で発達したのが津軽塗(つがるぬり)です。何度も塗り重ねることで生まれる奥行きが、津軽塗の大きな特徴。
海の幸が豊富に捕れる宮城県で生まれたのが鳴子漆器です。当地の領主が、漆塗りの振興を図ったことで発達しました。
鳴子漆器の知名度を高めたのが「鳴子温泉」。東北の名湯である鳴子温泉のみやげ物として、鳴子漆器は、日本各地に知られるようになったそうです。そのため、今でも鳴子温泉に行くと、老舗の「かねげん」や安価の鳴子漆器も扱う「佐々木漆器店」など、温泉客のニーズに応える個性的なお店が並んでいます。
和食と共に世界に広がる漆器
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漆器が改めて注目されるきっかけとなったのが、世界における和食ブームです。漆器の朱と黒のコントラストや深い光沢は、和食の美しさをさらに引き立たせてくれます。
和食を世界に発信する際、漆器を一緒に取り入れるお店も少なくありません。和食店を通じて漆器に触れた方も多いのではないでしょうか。
また、和食ブームを受けて、世界に目を向けて漆器を作る工房も増えてきました。たとえば福島県では、会津漆器の産地ブランド「BITOWA」を立ち上げ、毎日の生活で使える漆器のデザインを提案しています。
ファッションの中心地である東京の青山にある「伝統工芸 青山スクエア」では、日本全国の有名漆器が一堂に介した注目の施設です。
漆器は数千円から買える手頃な伝統工芸品です。和を感じられるおみやげとして、ぜひ日本の漆器を買って帰って下さい。
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