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山形・米沢の中心地からやや南にある山形大学工学部キャンパスには、200年以上も前に建てられた歴史的な建造物が、当時の姿のまま残り続けています。この記事では、国の重要文化財としても指定されているこのスポットの見どころを紹介していきます。
米沢市の中心地からやや南に、山形大学工学部のキャンパスがあります。
山形大学は、1949年に国立大学設置法に基づいて新制大学として発足した国立大学です。県内の各地にキャンパスを構えており、米沢もその一つです。
ここ米沢には、前身となる米沢高等工業高校がありました。歴史は、山形大学発足よりも古く、1910年にさかのぼります。高等工業高校では全国で7番目に古い学校です。
その学び舎が、200年以上の歴史を経て、旧米沢高等工業学校本館として、山形大学工学部キャンパス内に残っています。当時から現存する建物として、1973年に国の重要文化財に指定され、現在は記念館として一般公開されています。
旧米沢高等工業学校本館は、西洋の様式を木造で再現したものとなっており、明治期に日本各地で見られたモダン建築物です。
柱や梁といった日本的な建築構造でありながら、ドア、窓、廊下を備えた西洋風の造りになっています。全長は94mにも及び、二階建ての大規模な校舎です。
それだけ大きな建物でありながら、外装の板張りから、階段の手摺一本一本まで、日本人らしい細やかな仕事ぶりが見て取れるのが本建物の見所です。
特に珍しいのは、2階会議室の天井の装飾です。模様が彫られた天井板を漆喰で白く美しく仕上げているのですが、まさしく、西洋的な美的感覚と日本的な技術が絶妙に合わさったものと言えます。
現在は、建物内の各教室が展示室になっており、学校の歴史や卒業生の功績を紹介する資料が飾られています。当時の学生たちの授業ノートや日記といった普段の生活の様子が分かるものから、本校を卒業した有名人の紹介まで、その展示品は実に様々。長い歴史を持つ本校だからこそ、日本の近代化を推し進め、産業発展に貢献してきたことが見て取れ、非常に楽しめます。
また、学校で実際に使われていた機材や寄贈された近代文明器も、500点ほど展示されています。1977年に発表された世界初の画面一体型のパソコンや、エジソンが発明した蓄音機などからは、機械類がいかに進化していったかという変遷を見ることができます。歴史の重みを感じられる貴重な品々は、見応えたっぷりです。
※展示物に触れることはできませんので、ご注意下さい。
現在は、館内見学の他、教室や会議室を活用したイベントが行われており、ワークショップやコンサートなどが開催されています。文化財として大切に保管されているだけでなく、市民や市外の方に向けて、様々な活用がなされています。
これからの旧米沢高等工業学校本館の未来について、名誉館長の山崎洋一郎さんにお聞きしました。
「地元の方でも、建物の中まで見られることを知らない方が多いので、もっとPRしていきたいですね。ここ近年は建物のライトアップを始め、写真を撮ろうと多くの方が足を運んでくださるようになりました。」
「個人的な意見も含みますが、実現したいことが二つあります。ひとつは、正面玄関の『時計の復活』です。
昭和の中~後期頃でしょうか。いつの間にか、正面玄関の時計がなくなってしまいました。時計も明治期にはとても珍しい物であり、本館のシンボルだったと思います。
復活させることで、建物としての魅力が高まると共に、待ち合わせの目印になったり、より親しまれるスポットになるのではないかと考えています。」
「もうひとつは、『青春』の聖地にすることです。ここは、かつて、学生たちが青春時代を過ごした場所です。一生懸命、学び、遊んだ痕跡が残り、感じ取れるような場所です。
本校のキャンパス内には青春の詩の碑があり、そこに、『青春とは、人生の或る期間を言うのではなく、心の様相である』と書かれています。人生100年時代の今、社会人になったから、歳を取ったからと塞ぎ込むのではなく、常に若々しくいようとする気持ちの原動力の一つに、『青春』があると考えています。
青春は、誰の心にもあるものです。この場所を訪れることでそれが触発され、楽しみや生きがいを見つけたり、人と人が繋がり、豊かな人生を歩めるような、そんな場であれたらいいなと思っています。」
旧米沢高等工業学校本館は、歴史的価値のある建築物でありながら、現在も多くの人々に開かれた場として活用されています。過去の学生たちが青春を過ごしたこの場所は、今もなお訪れる人々に新たな発見や感動を与えています。歴史を学び、技術の進歩を感じるだけでなく、「青春」の象徴として人々が集い、交流する場として、本館はこれからも大切に受け継がれていくことでしょう。
ぜひ一度足を運び、その魅力を体感してみてください。
※見学は無料ですが、事前の申し込みが必要になります。建物外からの見学は、正門の守衛にお声がけのうえ、ご自由にご見学ください。
詳細は、山形大学工学部ホームページの「旧米沢高等工業学校本館ご案内」をご確認ください。
・住所:山形県米沢市城南4丁目3-16
・問い合わせ先:0238−26-3005 山形大学工学部 企画総務担当
・開館時間:10:00~16:00(冬季期間は15:00まで)
・見学料金:無料
・休館日:土日祝
・駐車場:有り ※お問い合わせ時に、ご確認下さい。
東北地方の中でも、重要なサムライの遺産が数多く残る米沢のまち。 東京から新幹線で約2時間で到着する、非常にアクセスの良い東北地方の観光地です。 甲冑や着物を身に着けてみたり、合戦に参加してみたり、寺社仏閣を巡ってみたり。かつて、日本のサムライたちが過ごしたストーリーを、米沢で追体験してみませんか。