旅の準備はじめよう
日本のことば事典「精進料理」
肉や刺激の強い野菜を使用しない、仏教由来の料理「精進料理」。ベジタリアンやムスリムの方でも親しみやすく、現在では一般向けに提供するお店も増えています。しかし注意点もあります。本記事では精進料理の豆知識をまとめています。
精進料理ってどんな料理?
健康志向の広まりと共に、様々な場所で味わえるようになった精進料理(しょうじんりょうり)。元は仏教の修行の一環として、インドや中国から伝わってきた料理でした。精進料理は日本でどのように広まり、一般的に食べられるようになったのでしょうか?
精進料理の一番の理念は「粗食」です。必要最低限の食べ物を摂取して生きることにより、「命」を知り仏教の教えにより近づく、という修行の一環だったのです。初期の仏教の僧侶たちは、肉・魚介類・酒の他、ニンニクなどの刺激の強い香りの野菜も禁止されていました。それらの禁止された野菜は、五葷(ごくん)と呼ばれます。
仏教には宗派が多数ありますので、精進料理も、国や地域によって捉え方や使ってもよい食材が異なります。6世紀頃にインドや中国から仏教と共に伝来した精進料理は、その後日本でも様々なレシピが考え出されてきました。時代の流れと共に、日本の僧侶の間で肉類や五葷の禁止などの厳しい戒律はあまり見られなくなりましたが、精進料理という文化はずっと受け継がれています。
どんなメニューがあるの?
photos by PIXTA
「ごま豆腐」
豆腐も大豆を主原料とする精進料理の食材の1つですが、ごま豆腐は、大豆の代わりに原料にごまを使ったものです。豆腐は煮たり焼いたりして他の料理の具に使いますが、ごま豆腐はそのまま冷やし、タレをかけて食べるのが一般的です。
「野菜の天ぷら」
食材を切り衣をつけ、油で揚げただけのシンプルな料理ですが、卵を使わなかったり、その分揚げ方に工夫が必要だったりと、試行錯誤の跡が垣間見えます。
「がんもどき」
豆腐をつぶし、人参やひじき(海藻)とともに練って油で揚げた料理です。肉が食べられない僧侶たちが、肉の食べ応えに似た料理を考えたのが始まりと言われています。
今では味にもこだわった精進料理のレシピが多数あり、一般家庭の食卓に並ぶもメニューも少なくありません。
精進料理は、動物性の食材を一切使わないため、ベジタリアンやムスリムなど、肉食を制限している方々にもオススメしやすい料理です。ただし、厳密な精進料理でないものには、動物性のスープを使用しているものもありますので、「精進料理と書いてあるから大丈夫」と過信しすぎないようにしてください。
また、和食でよく使用されている「みりん」や発酵させた調味料にはアルコール分が含まれているものも多く、「アルコールの摂取」を控えている方には注意が必要です。食べに行く場合は、事前に気になる食材を使っていないか問い合わせるのが確実でしょう。
どこへ行けば精進料理が楽しめる?
東京都心から近場で登山やハイキングを楽しめる高尾山は、古くから山伏(悟りを開くため山にこもる修行者)が修行を行ってきた場所でもあります。「高尾山薬王院」というお寺では現在、一般観光客向けに精進料理を提供しています。観光や登山と共に精進料理を楽しめる人気の施設です。
東京・秋葉原にある「こまきしょくどう」は、商業施設内にあり気軽に訪れやすいお店。デザートも充実しています。どんな味わいの料理か軽く試してみたい、という方にもオススメです。
和の雰囲気も十分に楽しみたいのなら、京都嵐山の天龍寺にある「篩月(しげつ)」という精進料理店に行ってみてください。嵐山付近は、紅葉の時期に特に人気の観光スポットです。美しい景色と共に食事をゆっくり楽しむことができます。
精進料理店は、お寺やその周辺に多く集まっていますので、観光で寺社巡りをする機会があれば、一度体験してみてはいかがでしょうか。
あわせて読みたい:
鎌倉彫の器で味わう精進料理ランチに感動!鎌倉彫会館のカフェ「倶利 guri」
動物性食材&砂糖不使用!ビュッフェ方式で食べる精進料理「かえもん浅草本店」
Main image by Pixta
日本への訪日外国人の方が、もっと増えますように!