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日本のことば事典「漬物」
「漬物」とは、主に野菜類を調味料・副材料に漬け込んだ加工食品です。野菜のほかにも、果実や鳥獣魚などの肉類を漬ける漬物もあります。本記事では日本の食卓には欠かせない野菜の漬物について、種類・作り方や日本の漬物文化を解説していきます。
野菜を塩や酢につけて調理する漬物は、世界中に様々なバリエーションが存在する料理です。日本でももちろん古くから漬物が作られてきました。
現在でも和食店や伝統料理のお店に行けば、メインのおかずに漬物が添えられます。他の料理を引き立てる漬物は、日々の食事を支えてくれる存在です。知っているともっと和食が楽しくなる、日本の漬物の基本情報をまとめました。
漬物の種類
日本における漬物の初出は10世紀。905年から編纂された「延喜式」という書物に数種類の漬物の記述があり、不作での飢饉(ききん)に対する備蓄、農産物が多く収穫された時の防腐貯蔵、風味の良化などを目的として、種類や作り方が発展してきました。
特に地方での発達は多種多様で、気候・習慣や特産物によってさまざまな漬物があります。大きく分けると発酵によるものと発酵しないものの2つの種類がありますが、ここでは各地の特色がわかる調味料・副材料によって分類してみましょう。
1)塩漬
最も基礎的・原始的な漬け方で、柴(しば)漬、酢茎(すぐき)、梅干しなどが代表的です。特に梅干しは、青梅の実が完熟する6月の梅雨時期に漬け始める日本ならではの習慣があります。
2)糠(ぬか)漬・糠味噌(ぬかみそ)漬
玄米から取れる米糠で漬ける方法で、代表的なものが大根で作られる沢庵(たくあん)漬です。糠味噌漬は塩漬と同じく、一般家庭でも糠床(ぬかどこ)を使って広く作られてきました。旬の野菜を手軽に漬け込み、朝食や弁当などに活用されます。
3)浅漬(一夜漬・即席漬け)
糠・塩漬を短時日で作る漬物で、お新香(しんこ)の名で親しまれてきました。浅く漬かった野菜は本来の鮮やかな色が失われず、短時間で漬かるため好む人も多いようです。きゅうり・なす・大根・白菜などの材料が好まれます。
4)粕(かす)漬
酒粕で漬けるため日本酒の酒造地に多く、奈良漬のように酒蔵が粕漬を製造販売している地域もあります。ほかには静岡のワサビ漬けや愛知の守口漬などが有名です。
5)麹(こうじ)漬
酒・味噌・醤油などの醸造に使う麹を使った地方色豊かな漬け方で、特に有名なものが京野菜で漬ける千枚漬け、東北の郷土料理・三五八漬け、東京のべったら漬けです。
6)酢漬
健康食として昔から家庭でも作られているらっきょう漬けやはりはり漬けのほかに、最近のトレンドにもなっている自家製ピクルスがあります。きゅうり・セロリ・パプリカ・にんじんなどを瓶詰めにし酢で漬けるもので、手軽に作れるピクルス液も販売されるほど人気が出てきました。
7)醤油漬
この漬け方で最もなじみ深いものが、カレーのお供に欠かせない福神漬けです。日本古来のおめでたい神様・七福神になぞらえた七種の野菜を調味醤油に漬けたもので、甘辛さが食欲をそそります。このほかにも味噌漬やからし漬などもあり、この多種多様さから、いかに日本人が漬物の種類と作り方にこだわり発展させてきたかがわかります。
健康食として再注目!日本の漬物文化
朝夕の食卓、定食や弁当には必ず添えられる漬物。白米を主食とする日本人には、ご飯をおいしく食べるためになくてはならない副食であり、保存食として食べられてきました。
デパートやスーパーには必ず漬物コーナーがあり、今も日常食として根強い人気があります。野菜を加熱せずに発酵した漬物はビタミンを豊富に含んでいるため、改めて健康食として、その栄養価が注目されています。
また、お茶漬けには梅干しを入れて胃の調子を整えたり、渋みのある日本茶のお茶請けとして漬物の風味で和らげたりと、さまざまなシーンで漬物が登場します。
実はお酒のおつまみとしても居酒屋メニューにはよく載っています。漬物の塩分が焼酎や日本酒によく合うのです。
このように漬物文化は日本人の食習慣として、しっかりと根付いています。日本独特の進化を遂げた漬物を、ぜひ食してみてください。
Photos by Pixta
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