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日本のことば事典「発酵食品」
日本の伝統的な食品には食材を発酵させた「発酵食品」が多くあり、調味料から飲み物に至るまで日本食を支える存在と言えます。その中から味噌、醤油、納豆などの日本の代表的な発酵食品を解説します。
発酵食品は食品の保存や風味の改良を目的として、微生物などの作用で発酵という加工を用いる食品です。日本の気候は発酵に適しているため、味噌や納豆など多くの発酵食品が生まれました。日本は世界でも有数の発酵大国なのです。
今回は代表的な日本の発酵食品をご紹介します。
日本食を支える発酵食品とは
発酵は世界各地で伝統食品に利用されている食品の加工方法です。
日本は気温や湿度が発酵に適しているため、各地で多種様々な発酵食品が作られています。一説では8世紀ごろにはすでに味噌の原型となる発酵調味料が存在したそうです。それ以来、味噌、醤油などに進化を遂げて現在の日本の発酵食品ができました。
代表的な発酵調味料
日本の発酵食品の特徴は「麹(こうじ)」を用いる点にあります。
麹とは、蒸した米や大豆などの穀物に麹菌(こうじきん)という微生物を繁殖させた加工品で、味噌、醤油、酢、みりんなどは、この麹による発酵でつくられています。
味噌
「味噌」は蒸した大豆を砕き、麹と塩を加えて発酵させた調味料です。
使用される原料や発酵過程の違いにより色や味わいに違いが出ます。甘みのある白みそ、一般的に利用される淡色みそ、色の濃い赤みそなどが代表的な種類。
味噌を用いた料理の代表がスープ料理の味噌汁です。味噌も味噌汁も地域によって様々な物が作られているので、旅先で味噌や味噌汁の味を比べているのも楽しいです。
醤油
「醤油」は液体の調味料で、大豆と小麦と塩を麹によって発酵させて作ります。
醤油は作り方によって「濃口(こいくち)醤油」「淡口(うすくち)醤油」「溜(たまり)醤油」など5つに分類できます。中でも国内生産量8割を締めるのが「濃口醤油」で最も一般的な醤油と言えます。
日本各地に醤油メーカーが存在していて、甘い醤油やどろっとした濃厚な醤油など、それぞれ地域性のある醤油造りをしています。
また、「刺し身醤油」など、特定の料理のためだけに作られた醤油も存在します。日本で大型のスーパーに行ったら、ぜひ醤油のコーナーへ行ってみてください。見たこともない醤油と出会えるはずです。
酢
「お酢」は世界中で親しまれている酸味のある調味料ですが、日本の伝統的なお酢は米から作られた酒を原料としています。
他にも穀物酢、米黒酢、りんご酢など様々な種類があり、料理を作る際の調味料として広く使われています。
食材を発酵で美味しくした食品
麹の他にも自然の微生物を活用した発酵食品が日本にはたくさん存在します。
独特の香りと粘りが特徴的な「納豆」は、大豆に納豆菌を加えて発酵させた食品です。昔は稲の穂を乾かした藁(わら)に包むことで、納豆菌を大豆に付着させて納豆を作っていました。
香りや食感が苦手な人も多いですが、豊かな風味に加えて栄養価が高いので、毎日食べるという人もいる人気の食品です。
野菜や魚介類を調味料に漬けて発酵させた「漬物(つけもの)」も発酵食品の一部です。
発酵調味料に漬けたり、材料に自然に付着している乳酸菌で熟成させるなどして風味豊かな漬物ができあがります。
漬物はごはんと一緒に提供されることが多いのですが、そのしょっぱさとごはんの愛称は抜群!ぜひ、一度試してみて下さい。
定番の飲み物も実は発酵食品
日本を代表する飲み物「日本酒」も発酵食品です。
「日本酒」は蒸したお米のでんぷんを麹によって発酵させ、アルコールへと変えます。
日本酒をつくる酒蔵にはそれぞれ原料や製法に特徴があり、それが味わいの違いを生み出します。日本酒が飲み比べられる居酒屋などでその違いを感じてみて下さい。
おわりに
日本食にはなくてはならない「発酵食品」の数々。よく使われる調味料も多く、日本の味は発酵によって支えられていると言えます。
発酵ならではの少し特徴的な香りや風味で敬遠している人もいますが、その奥深さを一度知ってしまうとやみつきになります。日本滞在中に発酵食品に出会った時には、その味わいに挑戦してみてはいかがですか?
新潟生まれ。事業会社でのマーケティングを経験後、2011年からシンガポールへ移住し、出版社や制作会社で編集に従事。2015年に日本へ帰国しMATCHAのライターに。国内外を旅行する中で見つけた新しい発見を、多くの人とシェアしていきたいです。