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美しい街並みと伝統文化に心奪われる。長浜・敦賀・加賀のスポット8選
日本の伝統工芸や神社で行われる祭り、伝統的な街並みが好きな方は、北陸地方、日本海に接して栄えてきた長浜・敦賀・加賀の3市へ。見逃せない観光スポット8選を紹介します。
日本海沿岸に息づく伝統文化と美しい街並み
「日本の伝統文化に触れる旅をしたい」という方は、北陸地方にある福井県の敦賀市(つるがし)や滋賀県の長浜市、石川県の加賀市を次の旅先にしてみては?
日本海沿いにあるこれらの街では、古い木造建築や歴史的な神社仏閣、人々が守り続けてきた地域の祭り、職人の技がいきる伝統工芸など、日本の伝統に触れることができます。
敦賀・長浜・加賀で訪れたい8つのスポットを紹介します。
長浜――工芸品と社寺に出会う
滋賀県・琵琶湖の東岸に位置する長浜は、かつて職人や商人が暮らす城下町として栄えました。江戸時代の雰囲気漂う優雅な木造建築がいまも残る美しい街並みに、きっと心を奪われることでしょう。
春の長浜曳山祭で有名な長浜ですが、それ以外にも見どころ豊富。竹生島(ちくぶしま)と社寺、博物館、商店街、職人のアトリエなど魅力的なスポットが揃っています。
1. 竹生島
琵琶湖の長浜側の湖岸から6キロメートル沖に浮かぶ竹生島は、神様が住まう島として人々の信仰を集めた場所。島には神社仏閣が並び、幸福を求めて多くの参拝者が訪れます。
長浜港からは竹生島行きのクルーズ船が1日数便出ています。料金は大人3,130円(往復)、所要時間は約30分です。上陸時には拝観料として500円を支払います。
島では自分のペースで社寺を見てまわることができます。全部の社寺をまわると2時間ほど。拝観後はクルーズ船に乗って長浜港へ戻りましょう。
竹生島で見逃せないのが、弁才天を本尊に祀る「宝厳寺(ほうごんじ)」です。弁才天は弦楽器の琵琶を持った姿で描かれる智慧と芸能の女神で、琵琶湖の名前もまた弁才天や琵琶に由来するとの説もあります。
湖を空から見たときに琵琶の形をしていることから、琵琶湖と名付けられたのだとか。
歩みを進めると、弁才天、産土神、蛇神、龍神の4柱の神様を祀る「都久夫須麻神社(つくぶすま じんじゃ)」に行き当たります。都久夫須麻神社境内の龍神拝所が湖に面して建てられているのは、龍神が琵琶湖に棲んでいるとされるためです。
寺と神社が立ち並ぶ竹生島。近代以前の神仏習合(神道と仏教が融合していた現象)の面影を感じとることができるでしょう。
島だけでなく琵琶湖そのものが神聖な場所とされ、湖に面した崖には一基の鳥居が建てられています。
願い事がある人は、鳥居に向かって土器(かわらけ)を投げる"かわらけ投げ"で運試しを。土器が鳥居をくぐれば願い事が叶うそうですよ。
宝厳寺から都久夫須麻神社へ向かうあいだには、ほかにも美しい建物に出会えます。
豪華な三重塔やもとは大坂城の一部だった唐門、地域の神々を祀った小さな神社など……。どの建造物にも古い言い伝えや伝説があります。
竹生島の"神聖な力"とは、もしかしたら神秘的な伝説や言い伝えの数々に出会える喜びのことなのかもしれません。
2. 黒壁スクエア
長浜の古い街並の一角にある「黒壁スクエア」は、ショップやギャラリー、ガラスアートの工房が立ち並ぶエリア。
シンボル的存在の「黒壁ガラス館」は1900年に建てられたのち、数十年間、銀行として利用されてきました。廃業・取り壊しの危機にあったものの、1989年、商店街の再興を目指した地元企業によって再生された歴史をもちます。
黒壁ガラス館の名前はその黒漆喰の壁からきています。
黒壁ガラス館は2F建て。国内外の職人たちのガラス作品が展示され、ガラス工芸を通して世界の文化に触れられます。
長浜で作られたガラス工芸品をおみやげにしたい方は、ガラス工房とショップをもつ「黒壁ガラス館」へどうぞ。
ほかにも「黒壁オルゴール館」、ハンドメイドグッズの店「Monokokoro」、特産品とおみやげを扱う「黒壁AMISU」を訪れてみてください。
黒壁ガラス館に隣接する「ステンドガラス館」は、ステンドガラス好き必見のスポット。
館内ではランプや時計、写真立てなどのステンドグラスの作品作りが体験可能です。
ほかにも黒壁スクエアではガラス吹き体験や、ガラスのアクセサリー作り、子どもも参加できるジェルキャンドル教室などが用意されています。
体験について詳しくは黒壁ガラス館の店頭でお尋ねください。
3. 曳山博物館
Picture courtesy of Nagahama City
400年以上もの歴史をもつ長浜曳山祭は、長浜八幡宮の例祭として毎年4月9日から17日に行われる祭りで、重要無形民俗文化財にも指定されています。
祭りの見どころは曳山と呼ばれる山車の巡行です。山組と呼ばれる12の地域から毎年交代で4基の曳山が出され、街をまわります。
Picture courtesy of Nagahama City
曳山の上で子どもたちが演じる「子ども歌舞伎」も必見です。
4歳から12歳までの歳若い演者たちは祭りの1カ月以上前から練習を行い、見る人を魅了する演技を披露します。
博物館通りにある「曳山博物館」では、この祭りの映像や展示を1年中見ることができます。
展示のなかには豪華な曳山の一部もあります。金箔と金の蒔絵に覆われた曳山の屋根や、曳山に飾られる16世紀のヨーロッパ文化を描いた繊細なタペストリーなどから、精巧な職人の技を目の当たりにできるはず。
市内には長浜城の歴史を展示した「長浜城歴史博物館」や、現存している日本でもっとも古い駅舎を使った鉄道の博物館「長浜鉄道スクエア」、本堂が重要文化財に指定されている「大通寺(だいつうじ)」などの名所もあります。
長浜の観光スポットや最新のイベント情報について詳しくは、長浜の観光情報HPをご覧ください。
長浜で必食のグルメ
長浜の名物のひとつといえば、琵琶湖で獲れる味わい深いビワマス。上の写真は「山本屋魚濱」の贅沢な琵琶鱒御膳です。白米に焼いたビワマスやお刺身を乗せたお重、おいしい味噌汁や香の物がセットになっています。
滋賀県で飼育される近江牛や、郷土料理の焼鯖そうめんも人気ですよ。
敦賀――鉄道と港の町
かつて港町として栄えた福井県の敦賀は、日本海側ではじめて鉄道が敷かれた街でもあり、鉄道と海運の町として知られています。
敦賀港は江戸時代から明治時代、工業化がされた大正時代まで、日本の北から西を結ぶ物流の拠点として発達。豊かになった街では文化も発展しました。
豪華絢爛な祭りや美しい社寺から華やかな時代を偲ぶことができます。
4. 氣比神宮
市の中心部にある「氣比神宮(けひじんぐう)」は、日本のもっとも古い歴史書にも登場する由緒ある神社。穀物や海運など複数の神々を祀っています。
見事な鳥居は日本三大木造大鳥居のひとつに数えられ、国の重要文化財にも指定されています。
結婚や子どもの誕生、記念日や新年の祝賀などの節目に際して、全国から多くの参拝者が訪れます。
著名な俳人・松尾芭蕉(1644生~1694没)は旅の途中に氣比神宮を訪ね、句を詠みました。境内には芭蕉の像があり、像の台座にはその句が刻まれています。
敦賀のシンボルともいえる氣比神宮。市内をめぐる旅の出発点にすると、地域の特徴や文化への理解が深まりますよ。
5. みなとつるが山車会館
Picture courtesy of Tsuruga City
敦賀で地元の住民が大切に守り続けてきたのは、氣比神宮の例祭・敦賀まつりです。毎年9月に開催され、大きな山車(やま)が市内を練り歩きます。
Picture courtesy of Tsuruga City
山車の上では歴史上の英雄や戦いの場面を、能面や甲冑をつけた等身大の人形で再現しています。緻密に造られた山車は市の文化財にも指定されています。
祭りの時期以外で山車を見てみたい方は「みなとつるが山車会館」へ行ってみましょう。展示された山車をじっくりと眺めることができますよ。
敦賀まつりの映像や、地域に伝わる甲冑や能面の展示も。
みなとつるが山車会館の隣にある「敦賀市立博物館」には、大和田荘七(おおわだしょうしち、1857生-1947没)にまつわる品々が展示されています。
大和田は国際的な海上貿易に貢献したのち、敦賀初の銀行を創立しました。
敦賀市立博物館の建物は大和田が1927年に建てた銀行を活用したもの。ヨーロッパ風の美しい建築の内部には、当時の窓口などがそのまま残されています。
6. 敦賀赤レンガ倉庫
敦賀港近くの「敦賀赤レンガ倉庫」は、100年以上前の石油貯蔵庫をリノベーションして2015年にオープンしました。館内にはレストランやおみやげのショップのほか、ジオラマの展示エリアがあります。
ノスタルジーを感じさせるジオラマは"ノスタルジオラマ"と呼ばれています。テーマのひとつは、第二次世界大戦の空襲で失われた敦賀のかつての街並みです。
ジオラマからは日本海沿岸の敦賀が、鉄道や海運の要所として発展してきた歴史も見てとれます。
市の中心部の商店街には、日本の人気漫画やアニメの『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』のキャラクターの像が設置されています。敦賀が鉄道と港の街であることを街中でも感じられるでしょう。
漫画やアニメのファンでなくとも、精巧に作られた像に魅了されること間違いなしです!
港町・敦賀を象徴するスポットとして、2020年にリニューアルオープンした「人道の港 敦賀ムゼウム」も見逃せません。
敦賀港は1920年代にはロシア革命の動乱によりシベリアで家族を失ったポーランド孤児を、1940年代には「命のビザ」を携えたユダヤ難民を受け入れてきました。敦賀ムゼウムではこれらの歴史にまつわる資料を展示しています。
歴史ある仏閣を見たい方は「西福寺」へ。仏教における極楽浄土を再現した庭園が見どころです。そのほかの敦賀の観光スポットについて詳しくは、「敦賀観光案内サイト」をご覧ください。
敦賀で必食のグルメ
敦賀では港で水揚げされる新鮮な魚介類をぜひ味わってみましょう。
そのほかでは、鳥の天ぷらが乗ったどんぶり、鶏さん丼(けいさんどん)も必食。"けいさん"とは地元の人が親を込めて氣比神宮を呼ぶ呼び名で、"けい"は日本語で鶏肉を意味しています。
氣比神宮のすぐ向かいにある「お料理 やまとも」でいただけます。
加賀――温泉と九谷焼の街
温泉地として有名な石川県の加賀。山代温泉や山中温泉といった温泉街では、伝統建築や工芸品にも出会えます。
7. 山代温泉 古総湯
Photo by Pixta
山代温泉の中心地にある「古総湯(こそうゆ)」は、九谷焼のタイルやステンドグラスで彩られた美しい公衆浴場です。2Fはお茶をいただきながら町の景観を眺められる憩いの場になっています。
8. はづちを楽堂
加賀の工芸や特産品を探すなら「はづちを楽堂」へ。九谷焼や地元の工芸品、お茶や名物グルメのショップが並ぶ施設です。
温泉街には歴史を感じさせる建物が並びます。1泊して街の雰囲気を存分に味わうのもオススメですよ。
美しい町並みと伝統に出会う
伝統の祭りやレトロな雰囲気漂う町並み、世界とつながった港町の歴史に触れられる長浜・敦賀・加賀の旅。
これらの3都市は東京からのアクセスも良好です。新幹線で米原まで行き、各市に止まる急行に乗り換えてください。豊かな文化に出会う忘れられない旅になることでしょう。
Written by Ramona Taranu
Sponsored by the Association for Promotion of Japan Sea Routes