天空にいちばん近い列車!小海線で行く、四季の絶景と星空に出会う旅
JR線で「標高の一番高い場所を走る鉄道」として知られる小海(こうみ)線。長野県の小諸駅と山梨県の小淵沢駅をむすぶ路線です。名前に「海」という字がついていますが、この鉄道の見どころは山! 都会の観光では味わえない自然美を求めて、高原の鉄道旅に出発しましょう。
山を走る「小海線」
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
小海線は、長野県の小諸(こもろ)駅と山梨県の小淵沢(こぶちざわ)駅をつなぐ、全長78.9キロの路線です。標高1000メートルを超える駅がいくつもあり、車窓からは富士山や八ヶ岳など、日本有数の山々が望めます。
近くには人気観光地の軽井沢があり、軽井沢駅から小諸駅まではしなの鉄道で約30分の道のりです。
ちなみに、「海」という字がついた鉄道ですが、近くに海はありません。それどころか、沿線には「日本で海から一番遠い地点」(長野県佐久市内)があるほど。
なぜ、海が無いのに小“海”線?
名前の由来は、今から約1100年前にさかのぼります。
そのころ、周辺にある八ヶ岳の爆発によって、ふもとには大小ふたつの湖ができたそうです。この湖を“海”と呼んだことから、周辺には小海や海ノ口など、海の字がついた地名が増えたといわれています。
そんな古代の物語を知ると、車窓の景色も少し違って見えてきますね。
四季を満喫!小海線、途中下車の旅
車窓からの眺めは列車旅の醍醐味ですが、小海線沿線にはわざわざ途中下車して訪れる、価値のあるスポットがたくさんあります。季節限定の絶景スポットやアクティビティをご紹介します。
春に行きたいアウトドアスポット
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
標高1900メートルの山頂から、富士山や野辺山(のべやま)高原を見渡せる絶景スポット、「清里(きよさと)テラス」。小海線の清里駅から車で5分ほどのスキー場「サンメドウズ清里」の敷地内にあり、広々したソファーシートでコーヒーやスイーツも味わえます。
運がよければ雲海が広がり、まるで空の上にいる気分!
営業期間:5月下旬~11月上旬
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
巨大な奇岩が点在する小川山は「クライマーの聖地」と呼ばれ、海外のトップクライマーも訪れる場所。アメリカのヨセミテ国立公園と同じく花崗岩が多いことから、「日本のヨセミテ」とも呼ばれます。
近くにはヨーロッパの山小屋風の宿「金峰山荘(きんぽうさんそう)」があり、キャンプや登山の拠点にぴったりです。
開放時期:5月~11月
内山牧場キャンプ場(Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会)
宿泊ならキャンプ場もオススメ。なかでも佐久市の「内山牧場キャンプ場」はパノラマの絶景が楽しめます。「北パラダキャンプ場」は、レンタル可能なキャンプ道具も充実していて、ファミリーや初心者でも利用しやすい施設です。
営業期間:4月~11月中旬
「白樺群生地」に咲く初夏の花。満開のツツジに魅せられる
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
八ヶ岳の東側に広がる八千穂(やちほ)高原には、約50万本の白樺が生い茂る群生地があります。鮮やかな自然を楽しみたい方は、6月ごろに訪れてみましょう。赤やオレンジのツツジがいっせいに咲き、白樺の緑を引き立てます。
ツツジを見ながらハイキングするなら「八千穂高原花木園」、「八千穂高原自然園」や、トレッキングコースが整備された「八千穂レイク」周辺がオススメですよ!
日本有数の秋を堪能
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
八千穂高原の白樺群生地は秋も見どころです。10月から11月にかけて紅葉シーズンを迎え、白樺林をとりまくモミジの赤や、カラマツの黄金色も鮮やかでまぶしいほど。日本でもっとも美しい白樺林ともいわれています。
野鳥のさえずりを聞きながら秋の訪れを感じてみてはいかがでしょう。
Photo by Pixta
真っ白な石灰岩で覆われたダムの表面と、紅葉のコントラストが美しい「南相木(みなみあいき)ダム」。南相木川の上流、標高1532メートルの地点に作られ、大規模ダムとしては日本一の高所にあります。
圧倒されるほどの大きさと美しさから、近年では多くの人がダムを見に行くようになりました。冬季期間(12月上旬~4月中旬)は通行止めになるので気を付けましょう。
寒いからこそわくわくする冬体験
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
凍結した湖面に穴をあけて釣り上げる「ワカサギ釣り」は、釣り初心者でも手軽に楽しめるアクティビティです。ワカサギとは、全長10センチほどの食べられる魚のこと。水のきれいな松原湖は、夏はSUP(Stand Up Paddleboard)やヘラブナ釣り、冬はワカサギ釣りのメッカとして賑わう湖です。
ワカサギ釣りの期間は12月下旬~3月初旬。湖には1周2キロの遊歩道が整備されていて、途中下車の散策にもぴったりですよ。
大禅の滝(Photo by Pixta)
また、三滝で出会う冬の大氷柱も見逃したくないスポット。三滝とは、三滝山にある大禅(だいぜん)の滝、小禅(こぜん)の滝、浅間(せんげ)の滝の3つの滝の総称です。なかでも一番大きな大禅の滝は、冬になると凍結し、高さ30メートルの巨大な氷柱に姿を変えます。
淡いコバルトブルーの氷柱は幻想的で、まさに自然が生み出す芸術作品です。
見ごろ:2月上旬から中旬
星空を目指して走る、HIGH RAIL 1375
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
小海線を走る「HIGH RAIL 1375」は、「天空にいちばん近い列車」をコンセプトにつくられた観光列車です。ちなみに、「1375」は小海線の野辺山駅から清里駅間にある、JR線の標高最高地点(1375メートル)のこと。
日中に運行する1号と2号のほかに、夜間だけ運行する列車「HIGH RAIL 星空」があります。景色の見えない夜だからこそ楽しめる、列車旅の魅力をご紹介します。
小海線に乗り、天の川を見に行こう!
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
2両編成の「HIGH RAIL 1375」は、夜空を連想するブルーの車体に星空がデザインされ、内装にも星や宇宙のモチーフが散りばめられています。
夜間運行列車「HIGH RAIL 星空」のオススメは、野辺山から見上げる満天の星! 乗客だけの星空観察会では、星空案内人から星にまつわる話を聞きながら、澄んだ夜空を心ゆくまで楽しめます。
「国立天文台 野辺山宇宙電波観測所」
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
野辺山駅のある南牧村は、天文学者が「日本三選星名所」に選ぶほど、星を見るのに最適な土地。その環境を生かし、日本の電波天文学の聖地といわれる「国立天文台 野辺山宇宙電波観測所」が建てられました。
観測所には大小いくつものパラボラアンテナが立ち並び、独特の景観を作り出しています。見学用のコースも設けられており、誰でも無料で敷地内を見学できます。
高峰高原
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
温泉につかりながら星空を眺めたい方は、高峰(たかみね)高原がオススメ。標高2,000メートルという雲が見下ろせる高さにあり、夜空に輝く満天の星空が見られることで有名です。
訪れたら「高峰高原ホテル」などの温泉宿に滞在してみましょう。「ランプの宿 高峰温泉」では、宿泊者は広大な自然が望める露天風呂「雲上の野天風呂」に入れます。
高峰高原へは、小諸駅からJRバスに乗り約45分で到着します。絶景と温泉を一緒に楽しみましょう。
「新海三社神社」で人気アニメのモデルの地を歩く
小海線臼田(うすだ)駅から車で約10分のところにある「新海三社(しんかいさんしゃ)神社」は、古くから神聖な場所として大切にされてきました。その歴史は長く、はじまりは古墳時代(3世紀中ごろ~7世紀ごろ)までさかのぼるのだとか。
Photo by Pixta
大きな鳥居をくぐって進むと、参道にはケヤキやスギの大木が立ち並び、厳かな空気が満ちています。
Picture courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
広大な境内には、国の重要文化財に指定されている社殿や三重塔もあり、500年以上前に建てられたその当時の風情を今に伝えているようです。
また、奉納舞が行われる神楽(かぐら)殿は、アニメ映画『君の名は。』の劇中に登場する神楽殿のモデルともいわれています。
神社のある佐久市は監督の新海誠さんが高校時代を過ごした街でもあり、映画ファンにはたまらない場所のひとつなんです!
日本をもっと身近に感じる旅へ
美しい自然から歴史遺産まで、小海線には四季折々の魅力がつまっています。アクセスが不便なところもありますが、ぜひゆっくり時間を取って、無人駅やのどかな田園風景を楽しんでみてください。
人びとの暮らしが身近に感じられるので、大都市や有名観光地では見られない素顔の日本を感じる旅になるはずです。
Main image courtesy of 小海線沿線地域活性化協議会
Written by ISHIGAKI KUMIKO
Sponsored by 小海線沿線地域活性化協議会
この記事は長野県地域発元気づくり支援金により制作しました。