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150年変わらぬ伝統の味、石川県「松波酒造」の日本酒とは?
1868年、石川県能登半島で開業した松波酒造は、伝統的な製法で日本酒を作り続けています。現代人の口に合うよう試行錯誤を繰り返し、バラエティー豊かな日本酒を生み出す松波酒造。能登半島へご旅行の際は、ぜひ寄っていただきたい場所のひとつです。
松波酒造とは
松波酒造は1868年に創業した、代々伝わる酒造業を営む家です。今は6代目が経営。能登名物の黒い瓦屋根や、木の引き戸(※1)などから感じとれる、田舎の素朴な雰囲気が特徴的な店構えです。
取材時には、若女将(※2)の金七 聖子(きんしち せいこ)さんが笑顔で出迎えてくれました。金七さんとほかのスタッフの方々が酒造の内部を案内してくれます。
酒造りがピークの冬から初春にかけては回数が限られますが、酒造見学は年間を通してほぼ毎週されているとのこと。見学は無料で、所要時間約30分。1週間前までには事前予約が必要です。予約時は連絡先、見学希望日、時間、人数を記入。予約方法については記事最後のインフォメーションで紹介しています。
※1:引き戸……左右に動かして開け閉めを行う扉のこと。
※2:女将……旅館や料理屋など、経営している施設の女性主人のこと。特に若い方を若女将(わかおかみ)という。
松波酒造の日本酒ができるまで
写真提供:松波酒造
日本酒の主な材料は、米と水。よい米と水を使うことによって、品質が変わってきます。また製造は、秋に収穫された米が広い酒造スペースに準備され、初冬から醸造工程が始まります。
湿度が多く、冷たい空気の流れる能登半島の冬が、おいしい日本酒作りに適しているそうです。
用意された米は研がれた後に洗い、巨大な窯で蒸されます。窯は1度に700㎏の米を炊くことができるそう。様々な道具の説明や個人の体験談などを交え、とても興味深い日本酒造りの世界を、金七さんが教えてくれました。
酒造の所々に、醸造の工程が書かれているイラストが貼ってあります。醸造中ではない時に訪れた際、イラストがとても役に立つそうです。
醸造の工程を見てみよう!
写真提供:松波酒造
日本酒の製造に使われる米麴(※3)は、温度調整された「麹室」という部屋で作られます。2日間かけて蒸米(※4)を作り、麹菌を繁殖させます。
※3:米麹……日本酒や米味噌など、発酵食品の製造に用いる菌。
※4:蒸米(じょうまい)……米を蒸す作業でできた米。
写真提供:松波酒造
米麴、蒸した米、水を大型の桶(タンク)内で混ぜ、発酵に必要な酵母を培養させます。タンクは2週間ほど見守られ、職人が常にかき混ぜ、発酵状況をチェックし、時には温度調節をしながら管理をしています。そこで出来上がるのが「もろみ」とよばれる固形物です。
写真提供:松波酒造
代々継承された経験と、伝統的技術を使って作られるこだわりの一品一品。松波酒造では機械にほとんど頼らず、主に手作業で味と品質を決めています。
写真提供:松波酒造
出来上がりの味と品質は、杜氏が決めます。決まり次第、タンクから大きな綿の袋にもろみを移し替え、「槽(おけ)」と呼ばれる巨大な木の器に袋を並べます。
酒造の中はとても寒く、蔵人(※5)たちはその環境の中で何日も働きます。松波酒造は、厳しい環境で働く蔵人の情熱により支えられ、おいしい日本酒を作っているのです。
3日間かけ、槽の中に並べられた袋から、日本酒が徐々に出てきます。最初はもろみから流れでてきますが、後に1.5トンの圧力をかけ、もろみに圧縮をかけていきます。最終工程に入ると、日本酒を殺菌、瓶詰めし、貯蔵していきます。
※5:蔵人(くらびと)……杜氏の下で日本酒作りをする職人。
忘れられない味を作る「大江山酒」
松波酒造の大江山酒は、主に純米酒、吟醸酒、本醸造など種類があります。中には能登のフルーツや野菜でできたリキュールを使ったオリジナルのブレンド酒も。
見学の最後にある試飲コーナーでは、可愛いおちょこを使って様々な酒を飲み比べできます。
こちらの柿酒は、大江山酒と柿のリキュールをブレンドしています。使われている柿は松波酒造で秋に収穫され、リキュールも同様に松波酒造で作られています。
能登の柿で作られたお酒と能登のカニのハーモニーは格別!
ほかに梅酒、トマト酒、ゴボウ酒など、季節ごとにお酒を造るため、酒造は年中多忙です。
最後に
大江山酒は、海外にも出品しています。伝統的な手法と素朴な環境が、松波酒造の高品質でユニークなオリジナル酒を造ることができます。「今後全国や世界に伝えたい、松波酒造のお酒です。」と金七さんは話してくれました。
※このコンテンツは英語版の記事を日本語へ翻訳しました。
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