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日本のことば事典「歌舞伎(かぶき)」
訪日旅行客向けに、難しい日本語や日本ならではの用語について解説します。今回は400年以上続く、日本の伝統的な演劇「歌舞伎(かぶき)」についての解説です。
「歌舞伎(かぶき)」とは、日本の江戸時代から400年以上続く、伝統的な演劇です。芝居(しばい)、踊り、音楽の3つの要素で観客を楽しませます。
歌舞伎の始まりと特徴
歌舞伎の始まりは、江戸時代に1人の女性が始めた「かぶき踊り」という踊り。「かぶき・かぶく」という言葉には、流行の先端を行く、常識破りといった意味合いがあります。これがどんどん広まって演劇の形となったものの、風紀を乱すということで後に女性による歌舞伎は禁止されてしまいます。
現在でも歌舞伎のステージに上がるのは男性のみ。女性の役も、女装した男性によって演じられます。女性役を演じる男優を女形(おんながた)といいますが、本物の女性よりも女らしいといわれる彼らの動きや表情も歌舞伎の見どころのひとつです。
独特の雰囲気と迫力が人気の秘密
photo by PIXTA
歌舞伎の表現方法は、近代の演劇のように本物に近いことや自然さを追求していません。むしろ大げさに、それらしく見えることを重視しています。個性的な衣装とかつら、そしてそのかつらを振り乱してぎろりとにらみをきかせる独特の動作とポーズなど、すべてが大げさで迫力たっぷりです。
歌舞伎といえば特徴的なのが、役者の顔に描かれた隈取(くまどり)と呼ばれる模様。じつは隈取を見るだけで、その人物が正義の味方(顔に赤い模様が描かれている)、悪者あるいは妖怪(顔に青い模様が描かれている)であることがわかるようになっています。
歌舞伎に使われる舞台の装置も、年月をかけて工夫が凝らされてきました。客席の中に舞台の一部である「花道(はなみち)」が。また、場面を変える時に舞台がぐるりと回る「廻り舞台(まわりぶたい)」は、歌舞伎が発とか。さらに、和楽器を使ったBGMや効果音も、一部は客席から見えるところで演奏されるので、注目してみると楽しそうです。
歌舞伎はどこで見られるの?
歌舞伎は、東京なら銀座の歌舞伎座などで1年中見ることができ、大阪や京都などでも定期的に公演が行われています。チケットは劇場の窓口のほか、インターネットや電話でも買うことができます。
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オペラなどほかの演劇でもそうですが、ストーリーや配役についてある程度の予備知識(よびちしき)があるほうが楽しめるもの。観賞する演目が決まったら、少しだけ予習をしておきましょう。劇場においてあるチラシは、情報の宝庫。大体のストーリーや見どころ、音楽や配役についての解説が載せられています。
日本人でも敷居が高いと感じている人もいる歌舞伎ですが、もとは庶民の楽しみ。伝統を守りつつ新しいものを取り入れ、みがきあげられてきた歌舞伎の世界に触れてみるのはいかがでしょうか。