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日本の味「出汁」〜種類と作り方、出汁を使う料理など〜
日本の伝統料理での基礎といえば、出汁。うまみの素である出汁には、さまざまな種類があります。本記事では、出汁の種類や、それぞれの出汁の作り方、そして、出汁を使ったオススメの料理を紹介します。
日本の食卓に欠かせない「出汁(dashi)」
日本の昔ながらの朝食と言えば、お米、野菜、魚、そして1杯のみそ汁の組み合わせが定番です。
冬にほかほかのみそ汁を飲むと、身体が温まって心地よいものです。この味噌汁に欠かせないものが、出汁(dashi)です。
出汁とは?
出汁は、調理の材料やその煮汁を指す言葉で、出汁の文字通りの意味は"出した汁"です。出汁は、広く日本の伝統料理で使われており、原料となる食材によって味が変わります。
一般にもっともよく使われるのが、昆布とかつおです。また、この2つを合わせたものもあります。
昆布出汁
昆布は食用の海藻の一種で、一般には乾燥させたものが出汁用の素材として流通しています。日本の昆布のほとんどは、日本列島の最北にある北海道の沿岸部で養殖、採取、加工されます。
昆布は、"うまみ"の主要な源泉であるアミノ酸の一種であるグルタミンが豊富。うまみとは、味わいの豊かさを表現するのに使われる日本語です。
昆布出汁を作る方法はいくつかあります。もっとも簡単なのは、乾燥した昆布を冷水に数時間浸したあと、沸騰するまでゆっくり加熱する方法です。
主張は弱いものの深い味わいで、おひたし(※1) 、 湯豆腐(※2)、しゃぶしゃぶなどの料理によく使われます。
※1:おひたし……ゆでた野菜に出汁や醤油をかけた料理のこと。
※2:湯豆腐……豆腐を出汁で煮込んだ料理のこと。
かつお出汁
かつお節は、カツオという魚からとる出汁です。
かつお節の作り方は、カツオをまず切り身にしたあと、お湯で煮て、燻製にします。その後、切り身の表面に食用カビを吹き付け、熟成や乾燥を繰り返したのちに、かつお節が完成します。
上の写真は、かつお節を削ったものです。削られて表面積が増えたことで、煮出すときにカツオの風味が最大源に引き出されるのです。
かつお出汁の作り方も簡単です。湯を沸騰させたあとで火を消し、そこへかつお節を入れ、1〜2分ほど待てば完成です。ザルや布巾で濾してから利用してください。
合わせ出汁
もっとも一般的に用いられている出汁は、昆布出汁とかつお出汁を組み合わせた合わせ出汁です。まず昆布出汁を作り、そこへかつお節を加えて数分間煮込みます。
昆布とかつお節の組み合わせで、味わいがより深く豊かになります。合わせ出汁は、みそ汁や卵焼き、 おでんによく使われます。
干し椎茸から作る出汁
椎茸は、日本各地で栽培、収穫されるきのこです。干した椎茸は、さまざまな料理に使われますが、出汁を取ることもできます。
干し椎茸は、椎茸がどの成長段階で収穫されたかによって、味わいと食感が違ってきます。若い椎茸のものはより歯応えがあり、成長後期の椎茸のものは味わいがより豊かになります。
干し椎茸にはグアニル酸という成分が含まれており、これがうまみの素となります。干すことで、椎茸の持つうまみが増すといわれています。
椎茸出汁を作るときは、加熱の必要がないので、手間がかかりません。
軽くすすぐか、布でふいて椎茸から汚れを取り除き、いくつか容器に入れて冷水に浸します。冷蔵庫に数時間置いておくと、薄いこはく色をした深い味の椎茸出汁が完成します。
椎茸出汁は、根菜を使った煮物や炊き込みご飯 (※3)、煮込み料理によく合います。
※3:炊き込みご飯……具材を米と一緒に炊き込んで作る料理のこと。
煮干し出汁
煮干しは、カタクチイワシやマイワシなどの小魚を乾燥させたものです。椎茸と同じで、出汁をとる目的以外にも、さまざまな料理に使われます。
出汁の作り方は、昆布出汁とよく似ています。煮干しを冷水に浸したあと、ゆっくり沸騰させます。
でき上がった出汁は、みそ汁や煮込み料理、そのほか、さまざまな料理に魚介類の深い味わいを添えます。
味わいの基礎を作る!日本料理に挑戦してみよう
どんなスープや煮込み料理を作るときでも、まず、味わいの方向性を決めることが大切です。いろいろな出汁を使って、料理の味わいを調整することができます。
日本の出汁の原料は、乾燥していて保存がきくのも特徴です。出汁を使った人気の料理を紹介します。
みそ汁
伝統的な日本の朝ごはんは、みそ汁なしには成り立ちません。そして、みそ汁は出汁なしには成り立ちません。
味噌と出汁がこの伝統的なスープの基本です。あなたの好みの具材を入れて、みそ汁を作ってみてください。
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大根の出汁煮
日本を代表する根菜である"大根"は冬に収穫されます。シンプルでおいしい副菜としてオススメなのが、大根の煮物です。
出汁をベースに、塩や醤油を加えてたもので大根を煮て作ります。お腹の温まるヘルシーな料理です。
出汁を使う日本の煮物
日本の煮物にはいろんな具材が用いられます。写真のものには、人参、蓮根、牛蒡、こんにゃく、椎茸が入っています。
椎茸出汁に日本酒、みりん、醤油を加え、具材を茹でます。作り置きができる便利な料理で、冷蔵庫で数日間もちます。
いつものスープ料理を出汁でアレンジ
出汁の使い方は自由自在ですので、世界中のさまざまな料理にも使えます。こちらは出汁を入れたトマトと卵のスープです。
出汁は、チキンスープやコンソメスープの代わりに、いろいろなスープ料理に使うことができます。ぜひ、出汁を使って、いろいろな味付けを試してみてください。
日本旅行で出汁に出会おう
次に日本を訪れるときには、日本の出汁の世界を体験してみてください。市場に出かけたり、また料理教室に行ってみるのもよいでしょう。そして出汁を自分で作る喜びを味わってみてください。
また、本記事で取り上げている出汁の素材は、すべて日本のスーパーで販売しているものです。日本を訪れた際はぜひ買い求め、自分で出汁を作ってみてください。
※本記事は英語版の記事を翻訳・再編集したものです。