なぜピンクなの?板は何のため?かまぼこの老舗メーカー鈴廣に秘密を聞いてみた!
「何でできているの?」「なぜピンク?」「板は必要?」といった、かまぼこへの素朴な疑問を小田原・鈴廣かまぼこに取材。かまぼこの秘密に迫ります。あわせてカニカマをアメリカで広めた第一人者・鈴木悌介副社長に当時の話を伺います。
かまぼこの秘密に迫る!
Picture courtesy of 鈴廣かまぼこ
訪日観光客が日本で出会う不思議な食べ物のひとつが、かまぼこ。日本ではお正月料理・おせちにも入っていて、食卓で欠かせない食材です。
海外出身のMATCHAスタッフからは、「かまぼこって何からできているの?」「なぜピンクなの?」「下についている板は何?」など、質問がたくさん。
日本の不思議な食べ物・かまぼこの正体を探るため、編集部は神奈川県小田原市にある鈴廣かまぼこの本社を訪れました。
目次
かまぼこの購入は「鈴廣かまぼこ公式オンラインショップ」から!
教えてくれたのは"かまぼこシスターズ"!
左:酒井さん 右:大野さん
今回、広報を担当する酒井さんと大野さんがわたしたちの疑問に答えてくれました。おふたりは「かまぼこシスターズ」として、鈴廣のかまぼこの魅力を広める活動をしているのだとか。
つまり、かまぼこのスペシャリストというわけです! さっそく、皆が抱くかまぼこの謎に迫ります。
疑問①かまぼこは何から作られているの?
弾力ある食感がたのしいかまぼこですが、はじめて食べた外国人のなかには「餅? スポンジ?」と驚いてしまう人も。一体何から作られているのでしょう?
酒井さん「かまぼこの原材料は魚です。グチやオキギスといった魚を使うことが多く、1本のかまぼこに約7尾もの魚が入っています」。
大野さん「鈴廣のかまぼこは天然素材にこだわっているので、化学調味料や保存料を使っていないのもポイントです!」
疑問②かまぼこ職人がいるって本当?
MATCHAスタッフが驚いていたのは、鈴廣のかまぼこがひとつひとつ人の手で作られていること。職人もいるって本当ですか?
酒井さん「はい。かまぼこを作る職人は水産練り製品製造技能士という国家資格をもっています。
かまぼこづくりは、魚の身をとる・水でさらす・すりつぶす・板につける・蒸す、という5つの工程があります。魚のコンディションを見極めたり、水分量を調節しながら作るので、職人の経験と感覚が味を大きく左右するのです」。
大野さん「職人の技でこそ、よりしなやかで弾力のある食感が生まれるのです」。
鈴廣では人の手でしか出せないおいしさを大切にしているんですね。
疑問③なぜピンクと白の2種類があるの?
MATCHAスタッフから多く出た疑問が「なぜピンクや白なの?」というもの。色に理由は?
酒井さん「かまぼこのピンクと白、これは日本では紅白(こうはく)といって縁起のよい色の組み合わせです。紅(あか)は福を、白は清浄を表しています」。
大野さん「ちなみに、紅白の2色は右に紅、左に白を並べるのが伝統的なスタイルですので、かまぼこを並べるときにも右に紅のかまぼこを置くのが正解ですよ」。
日本ではお祝いの席で紅白の幕をたらすことがありますね。かまぼこの色にはちゃんとした意味があったのです。
疑問④なぜお正月にかまぼこを食べるの?
Photo by Pixta
かまぼこは日本でお正月に食べるおせちの定番。なぜわざわざ新年に食べるのでしょうか?
酒井さん「日本では昔から、お祝いのときに縁起のよい食べ物を選ぶ文化があります。
紅白の色もそうですが、かまぼこの半月型は水平線から太陽がのぼる姿に似ているので、縁起がよいとされています」。
大野さん「かまぼこは、たくさんの魚を使って手間ひまかけてつくるので、昔の人にとっては特別な食べ物だったと思います。平安時代の宴席にかまぼこが登場したという記録も残っていますよ」。
疑問⑤かまぼこについている板の意味は?
かまぼこにつきものの板。この存在を不思議に思う外国人は多いようです。
酒井さん「かまぼこの板には、魚のすり身を盛りつける土台としての役割がありますが、わざわざ木の板を使っているのには理由があります。
木材は適度な水分量を保つよう、空気中の水分を吸ったり吐いたりしながら調節しています。それが、かまぼこを蒸す過程で、適度な水分調節の役割をしてくれるんです」。
大野さん「自宅の冷蔵庫で保管するときにも、木の板をつけたままにしておくと乾燥しにくいですし、防腐剤の役割もはたしてくれますよ」。
使っているのは、蒸したときに反ったり割れたりしないモミの木だそう。
かまぼこを食べ終わったら、板で工作したり絵を描くのも楽しいですよ。鈴廣の「かまぼこ博物館」ではかまぼこ板に絵を描いた「かまぼこ板絵」が展示されています。
「高タンパクで低カロリー、気軽に食べて」
日本や海外にいる読者に伝えたいことは?
大野さん「かまぼこは飽きのこないおいしさが特徴です。それだけでなく、お魚がたっぷり使われているから、高タンパク低カロリー。とってもヘルシーな食べ物なんです。
お祝いのときだけでなく、ふだんの生活のなかで気軽に食べていただきたいと思っています」。
海山のおーどぶる
酒井さん「鈴廣かまぼこの商品は200種類以上ありますが、ひと口サイズのぷちかまや、テリーヌのように食べられる海山(うみやま)のおーどぶるは外国の方にも評判です!」
これらの商品を購入したい方は鈴廣のオンラインショップをチェック! 実店舗「鈴廣かまぼこの里」でも豊富なラインナップのかまぼこに出会えます。おみやげ探しにオススメです。
かまぼこの購入は「鈴廣かまぼこ公式オンラインショップ」から!
欧米でおなじみ、SURIMIはどこから来たの?
Photo by Pixta
かまぼこシスターズのお話から、かまぼこの材料が魚のすり身だと知ることができました。でもここで新たな疑問が! 実はアメリカやヨーロッパではSURIMI=カニカマのこと……。
海外のSURIMI(カニカマ)は日本のものとは違うのでしょうか?
副社長がSURIMI誕生のキーパーソンだった!
海外でおなじみのSURIMI(カニカマ)について教えてくれたのは、鈴廣かまぼこの鈴木悌介(すずきていすけ)副社長でした。
「カニカマというのは、見た目や風味をカニに似せて作ったかまぼこのことです。これをアメリカで最初に売ってみよう!と挑戦した日本人がわたしなんです」。
1978年、当時の社長の特命でアメリカに飛び立ったという鈴木副社長。当初の目的はカニカマの販売ではなく、魚の調査だったのだそう。
「その頃アメリカのシーフードはエビやカニが中心。エビ漁で底引き網にかかる魚は捨てられていました。この魚をかまぼこの材料に活用しようと考えていました」。
Picture courtesy of 鈴廣かまぼこ
映画『フォレストガンプ』でも主人公がエビ漁で大成功するシーンがありますが、聞いてみると時代背景もその頃で、鈴木副社長のいたアラバマ州の港がまさに撮影のロケ地になったのだとか。
「その後、目的だった魚が取れなくなってしまい、調査は断念。次に挑戦したのがカニカマの販売です。夢は大きく、カニカマで全米制覇を目指しました」
鈴木副社長のストーリーこそ映画さながらです!
大ヒット商品「KING KRAB」の誕生
鈴木副社長がカニカマの製造工場を立ち上げた1981年は、アメリカ人の健康志向が高まってきた時期でした。
「カニはもともとアメリカ人に人気がありますし、魚のタンパク質が豊富でカロリーの低いカニカマは需要があると思いました」。
工夫したのは味だったといいます。はっきりした味を好むアメリカ人に合わせ、カニの風味を強調したのだとか。
Picture courtesy of 鈴廣かまぼこ
「あえて日本食とは宣伝しませんでした。商品名をKING KRAB(キングクラブ)としたのも、アメリカ人に新しいシーフード商品として受け入れてもらう工夫です」。
最初はまったく注文が入らなかったと笑う副社長。
しかし、地元のスーパーやレストランからじょじょに知られていき、わずか数年で生産が追いつかないほどのヒット商品に成長したそう!
お魚タンパクで世界を健やかに!
Picture courtesy of 鈴廣かまぼこ
現在KING KRABという商品はありませんが、SURIMIという名前を通じて世界中でカニカマが親しまれています。
鈴木副社長は、海外でのSURIMI文化をどう感じているのでしょう?
「カニカマ以外にもおいしい魚のすり身食品はたくさんあります。魚タンパクは低脂肪で消化吸収もよいもの。かまぼこやちくわなど、もっといろいろなすり身食品を外国の方に楽しんでほしいです。
また、アメリカではカニカマがお寿司やトルティーヤの具になっていますよね。こうした新しい発想が、SURIMI文化の未来には大切だと感じます」。
鈴廣かまぼこのモットーは「老舗にあって老舗にあらず」。伝統を守りながら、新しいことにもどんどんチャレンジしていく力強いメッセージです。
かまぼこから地球の未来を考える
現在、鈴廣かまぼこは、環境問題や自然エネルギーの活用にも積極的です。
「かまぼこは、海(魚)・森(水)・里(人や文化)の恵みでできています。気候変動や漁業資源の減少は大問題。これからもおいしいかまぼこをつくり続けるには、自然環境のことを考えなければいけません」。
かまぼこ店だからこそ環境問題に一生懸命に取り組むのだ、と副社長は教えてくれました。
なにげなく食べていたかまぼこには、自然の恵みや職人の技、環境への思いがつまっていたんですね!
かまぼこで新年を祝おう!
かまぼこピンチョス
日本人はかまぼこに醤油をつけますが、じつはオリーブオイルで食べたり、ピンチョス風にベーコンや青じそをのせてもおいしいそうです。
もうすぐお正月。新しい年に願いを込めて、縁起のよいかまぼこでお祝いしませんか?
かまぼこの購入は「鈴廣かまぼこ公式オンラインショップ」から!
あわせて読みたい
Written by Kumiko Ishigaki
Photos by Chiaki Ono
Sponsored by 鈴廣かまぼこ