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生産者と消費者をラーメンで繋ぐ。護国寺「MENSHO」
東京・護国寺にある「MENSHO」というラーメン店では、おいしくて個性的なラーメンを出すだけでなく、ラーメン業界全体に一石を投じるような取り組みをしています。他のラーメン店では、まずお目にかかれないようなもので、ぜひとも実際に「MENSHO」を訪れてそれを体感してみてください。
「FARM to BOWL」というコンセプト
東京の繁華街・池袋からも近いラーメン店「MENSHO」。常に多くのお客さんでにぎわう人気店ですが、その魅力は「おいしさ」だけにとどまりません。
多くのファンに支持されているのが、コンセプトである「FARM to BOWL」。オーナーの庄野(しょうの)さんが日本中を旅して出会った国産素材、そのよさをラーメンを通して伝え、生産者と消費者を繋いでいく。この言葉には、そんな思いが込められています。
製麺機を操り、店内で製麺する。周囲に山のように積まれているのは小麦粉
その取り組みの一つとして、「MENSHO」では産地から直接買い付けた玄麦(げんばく)を店内の石臼で製粉、製麺してお客さんに提供しています。少量ずつ製粉してからすぐに麺にすることにより、大量生産では失われてしまう、小麦粉本来の味や香りが楽しめるのです。
「非常に手間のかかる大変なやり方ではありますが、あえてそこに挑戦することで食材の素晴らしさを伝え、日頃忘れがちな食べ物に対する感謝の気持ちを持ってほしい。そのための欠かせない大切な仕事として一生懸命取り組んでいます」(庄野さん)。
「MENSHO」こだわりの逸品
では、そんな「MENSHO」が自信をもって繰り出す、極上のラーメンやつけ麺を紹介していきましょう。2018年4月上旬時点では、メインのメニューとして2種類がラインナップされています。化学調味料やその他の添加物も一切入っていないので、安心して食べられますよ。
海の恵みを味わう「潮らーめん」
まずこちらは、「MENSHO」の看板メニューとも言える「潮らーめん」です(税込1,000円)。
スープには、真鯛にホタテや昆布といった海産物をたっぷりと使用し、豚や鶏などの動物系素材は不使用。塩ダレには海水塩を用いており、海の恵みを隅々まで堪能できます。食べた人に海を感じさせるようなラーメンとも言えるでしょう。
麺は、店内で製粉した小麦粉をメインに使った自家製麺。魚介の風味が強く漂うスープの中でも、しっかりと存在感があります。時間が経っても伸びにくいので、ゆっくりと食事を楽しめることでしょう。
ちなみに、器の縁に置かれているのは、日本三大珍味の一つであるカラスミ(※1)と、炭化させたネギをパウダー状にしてホタテの貝柱にまぶしたもの。カラスミを麺につけることで、味わいが濃厚に変化して面白いです。
他にも新鮮な鶏肉のタタキ(※2)やマグロ入りのワンタンなど、贅沢かつ個性豊かなトッピングが入り、1杯のラーメンでさまざまなものが味わえる、フルコースのような構成になっているのも特徴的。
これで本当に1,000円でいいのかと思ってしまうぐらい、素晴らしいラーメンです。
※1:カラスミ……ボラの卵巣を塩漬けにし乾燥させたもの
※2:タタキ……新鮮な生の肉や魚に少しだけ火を通した料理
麺のおいしさを堪能するなら「挽きたて小麦つけめん」
店内の石臼で挽いたばかりの小麦粉を使った自家製麺のおいしさを堪能するなら、この「挽きたて小麦つけめん」がオススメ(税込1,000円)。
未精白の玄麦を丸ごと挽いて全粒粉にしてからすぐに製麺することで、栄養豊かで味も香りも格別に素晴らしい自家製麺ができあがります。
この自家製麺は、いきなりスープにつけるのではなく、まず上の写真左側にある塩と温泉水(ミネラルウォーター)だけで食べてみてほしいです。
スープにつけずとも、塩や温泉水と合わせるだけでおいしく食べられることに、初めての人は驚くはず。鴨を使った濃厚なスープも当然おいしいのですが、うっかりその存在を忘れてしまいそうです。
トッピングの鴨チャーシューは見た目に美しく、低温調理のおかげで食感はしっとり。また、表面を焦がすことで香ばしさも感じられて非常に美味。もはやラーメン店のトッピングという枠を超えて、高級フレンチなどで出てきそうな逸品です。
サイドメニューにもこだわりが満載
「MENSHO」ではラーメンやつけ麺はもちろん、サイドメニューにもこだわっています。すべては紹介しきれないので、その中でも筆者が特に好きなものを1つご紹介しましょう。
こちらの、「鴨ごはん」です(税込350円)。ラーメンやつけ麺と同様に盛り付けが非常に美しく、さらに赤い器も特徴的で、まるで王様や貴族の食事とでも呼びたくなるような煌びやかなビジュアルです。
やや濃いめの醤油味のご飯にまぶされている緑色のものは、有明産焼き海苔の粉末。更に鴨肉や焼いたネギ・卵黄などが添えられており、ご飯の中にも鴨肉が入ってかなりのボリューム。
スポイトの中には柑橘の果汁が入っており、途中でこれを入れることで爽やかな風味が加わって、最後まで飽きずに楽しめます。これで350円という安さが、また信じられないほど。
ラーメンもサイドメニューも、本当に唯一無二の存在、ここ「MENSHO」でしか味わえないものです。
店内の雰囲気やその他のこだわり
ここまで店のコンセプトやラーメンなどを順番に紹介してきましたが、ラーメン業界の最先端を行く「MENSHO」だけあって、他にもこだわりポイントが多数あります。
画像提供:MENSHO
「MENSHO」では、1つ1つの席の間にゆとりがあり、そのおかげで落ち着いて食事を楽しむことができます。
店内の照明も均一な明るさにするのではなく、あえて明暗の差をつけることで、自然とテーブルの上に意識が集まり、ラーメンを食べることに集中できるようになるんだとか。何度も訪れている筆者も、確かにそう思います。
画像提供:MENSHO
また、テーブルの上は適度な明るさが保たれていますが、これはラーメンの写真を綺麗に撮影してもらうためだそう。インターネット中毒である筆者のような人間にとっても、非常にありがたい配慮です。
画像提供:MENSHO
更に「MENSHO」では、店内にオフィスを併設し、そこから世界に向けてグループ全体の情報発信も行なっています。グループとして、どのような展開を見せてくれるのか、ラーメンマニアの筆者としても非常に楽しみです。
「MENSHO」誕生のきっかけ
オーナーの庄野さんは、実は最初から「MENSHO」をこのような店にするつもりはなかったと言います。
「石川県にある海水塩の産地を訪れたとき、現地の生産者から、塩の奥深さやそこに秘められたストーリーなどを聞いたんです。たとえば、塩の味は、乾燥させる際の気候などによって変わる。同じように見える塩でも、実は、常に全く同じ味にはならない。そういった一般にほとんど知られていないことを、消費者に伝えたいと思ったのが始まりです」
小麦や肉など、他の食材についてもこだわりを突き詰め、その結果、冒頭で述べた「FARM to BOWL」というコンセプトを持つ「MENSHO」が誕生しました。
庄野さんの想いが伝わって食べ物に感謝する人が増えれば、社会問題になっているフードロスなども少しずつ解消していけるでしょう。そのために他の人がやらないことに取り組んでいる「MENSHO」を、筆者はこれからも応援します。
「MENSHO」へのアクセス
最後にアクセス情報を簡単にご紹介しておきます。
最寄駅は、東京メトロ有楽町線の護国寺駅で、その6番出口を出てから徒歩2分程度。真っ直ぐ歩くだけなので、基本的に迷うことはないでしょう。
写真のように、右側に「MENSHO」と書かれた看板が見えるので、それが目印です。
旅と音楽とラーメンをこよなく愛するエンジニア。 中学生のときにオーストラリアでホームステイしたことをきっかけに、学生時代はバックパッカーにハマる。そんな中で改めて日本の良さを実感し、それをもっと世界中に広めたいと思ってMATCHAのライターに。 マイブームはカメラで、最近はHDRとタイムラプスに挑戦中。