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極上の絵画体験を!日本画専門の美術館「山種美術館」
渋谷駅からも歩ける日本画専門の美術館「山種美術館」では、近代・現代を代表する貴重な日本画や浮世絵を多数収蔵しています。本記事では、館長による日本画の見どころ解説を中心に、限定和菓子が味わえるカフェなど、山種美術館の魅力をご紹介します。
渋谷・恵比寿から徒歩圏内、日本画専門の美術館
Picture courtesy of 山種美術館
静かな空間でゆっくりと美術鑑賞ができ、おいしい和菓子も食べられる……。そんな極上の日本体験ができる場所が、都心の渋谷や恵比寿から歩いて行ける距離にあります。
©️Koike Norio 2009/Picture courtesy of 山種美術館
いちょう並木の先に現れる、落ち着いた佇まいの建物。日本画専門の美術館「山種(やまたね)美術館」です。近代・現代の作品を中心に、約1800点の日本画を所蔵しています。
その中には横山大観、奥村土牛といった近代を代表する画家の作品や、東洲斎写楽や歌川広重など著名な浮世絵の絵師による作品も含まれます。
そもそも日本画とは?
速水御舟《翠苔緑芝》(右隻部分) 1928年 紙本金地・彩色 山種美術館
そもそも日本画とは、どのような絵画でしょうか?
もっとも大きな特徴の1つは、描くために使用する素材。日本画は一般的に、墨や貝殻、岩絵具(いわえのぐ)といった素材を用いて、絹や和紙に描いていきます。岩絵具とは、天然の鉱物から作られる絵具のこと。
「この素材が、日本画の大きな魅力の一つです」と語るのは、山種美術館館長・山﨑妙子(やまざき・たえこ)さん。
「岩絵具独特の色合いと深みは、天然の鉱物からしか出ません。日本画を間近で観ると、塗り重ねられた岩絵具がきらきらしていたり、砂のようにザラザラしているのが分かります」
天然の絵具を用いているからこそ、その見た目は非常に繊細で、味わい深いものとなります。
「画に表情があるのです。その表情は、光の加減や鑑賞者が立つ位置によっても変わります。印刷物と実物はまったく違うので、ぜひ本物を観ていただきたいですね」(山﨑館長)
今回は特別に、山種美術館が所蔵する作品2点の見どころを、山﨑館長に解説していただきました。いずれも注目したいのは、その画にしかない「色」です。
速水御舟(はやみ ぎょしゅう)『炎舞』
速水御舟《炎舞》【重要文化財】1925年 絹本・彩色 山種美術館
燃えさかる炎と、そこに群がる蛾。幻想的な美しさに思わず息をのむ『炎舞(えんぶ)』は近代日本画の傑作であり、国の重要文化財にも指定されています。
一見して写実的ですが、炎の部分には伝統的な仏画(※1)の技法が用いられています。仏画の描き方をベースにしながらも、輪郭をぼかして描くことで本物の炎のようなゆらめきが表現されています。
速水御舟(1894-1935)は、さまざまな表現で新境地を拓(ひら)き、近代日本美術界で重要な役割を果たしました。この画を描いた1925年の夏、御舟は軽井沢に滞在し、毎晩のように焚き火をしながら炎を見つめ、そこに群がる蛾を観察したと言います。
※1:仏画(ぶつが)……仏教の説話や僧侶を描く絵画のジャンル。
《炎舞》部分
山の中にはライトもなく、燃える炎の奥には、深い闇が広がっていました。
「その濃い闇を、御舟は描き出そうとしたのだと思います。この画に描かれた闇の濃さは、実物を観ないとわかりません。写真では黒く見えますが、実際は濃い紫のような色。ほとんど偶然によって生まれたような色合いで、御舟自身『もう一度描けといわれても、二度とは出せない』と語っています」(山﨑館長)
あまりにも迫真に迫っているため、御舟の家族が初めてこの画を観たとき、「火事が起きた」と大騒ぎになったそうです。ぜひ実物で観たいこの作品は、2019年春に公開が予定されています。
川端龍子(かわばたりゅうし)『鳴門』
川端龍子 《鳴門》 1929年 絹本・彩色 山種美術館
うねる波の様子が、吸い込まれるように鮮やかな青色でダイナミックに表現されています。
川端龍子(1885-1966)は、大胆な筆致と色彩、躍動感あふれる大画面の作品で知られる画家です。彼はもともと、「院展という団体に所属していましたが、もっと生き生きとした、鑑賞者に訴えかけるようなスケール感の作品を志し、自ら新しい絵画団体を作りました。
その第1回の展覧会に出すために描いた作品が、この「鳴門(なると)」です。
《鳴門》部分
特徴的な青は、「群青(ぐんじょう)」と呼ばれる岩絵具を用いています。100グラムで数万円する非常に高価な画材ですが、それを約3.6キログラムも使っています。白く泡立つ波は、牡蠣の貝殻を粉にした「胡粉(ごふん)」と呼ばれる絵具です。
「展覧会場でも映える華やかな群青と、胡粉の白とのコントラストが非常に大胆で、さわやか。新しい日本画を作ろう、という龍子の意気込みが現れている作品です」(山﨑館長)
実際の作品は、横幅が8メートル以上もあります。こちらもぜひ実物で観たいところ。2018年7月14日-9月6日に開催される企画展「水を描くー広重の雨、玉堂の清流、土牛のうずしお」で展示されます。
こだわり抜かれた展示内容
山種美術館には常設展示室はありません。その代わりに、年間5〜6回の企画展を開催しています。
「桜」をテーマにしたような季節感あふれる展示や、ファッションにスポットを当てた企画、また、ユーモラスでキュートな人や動物などの画を集めた「Kawaii展」など、毎回さまざまな切り口で日本画の魅力を紹介しています。
取材時に開催していたのは、「琳派(りんぱ)」と呼ばれる流派の作品を集めた特別展「琳派ー俵屋宗達から田中一光へー」(2018年7月8日まで)。間近で作品を観ると、幾度も塗り重ねられた工夫のあと、あるいは丁寧に色づけされた繊細な筆致などがよくわかります。作品を描き出した画家たちの息づかいまでもが聞こえてくるようです。
絵画を観る環境にも心が配られています。作品ごとに照明を変え、常にその絵画にとってもっとも優しく、もっとも美しく見えるようにライトが当てられています。床も、ヒールなどの音が響かない素材が選ばれているそう。
また、主要な作品には英語の解説が書かれています。受付で英語のパンフレットも配布されているので、あわせて作品を観れば、さらに関心も深まることでしょう。
Picture courtesy of 山種美術館(左上写真を除く)
展示を観たあとは、ぜひミュージアムショップへ。こちらには展覧会の限定グッズのほか、山種美術館オリジナルのグッズも。小物入れや手ぬぐいなど、館長や学芸員の人たちが考えたという、可愛らしく実用的なグッズが並びます。
※販売品は展覧会ごとに変わります。
作品をイメージした「限定和菓子」
最後に見逃せないのは、入口横にある「Cafe 椿(つばき)」。ここでは、和菓子と抹茶のセット(税込1,100円)を提供しています。
実はこの和菓子、展覧会ごとに新しく作っており、ここでしか食べることができない限定品! 毎回、展示される作品に合わせて、和菓子店と共同開発しているのです。
速水御舟《翠苔緑芝》(左隻部分) 1928年 紙本金地・彩色 山種美術館
今回いただいたのは、速水御舟の「翠苔緑芝(すいたいりょくし)」という画をモチーフにした「緑のかげ」。御舟の画に描かれているうさぎ、紫陽花、芝生がそのまま和菓子となり、絵画のように美しく愛らしい見た目。一口食べると、あんこの自然な甘みに、あんずのさわやかな酸味が広がりました(「緑のかげ」の提供は2018年7月8日まで)。
日本画を味わえる美術館
山種美術館は、随所に工夫が凝らされ、あらゆる角度から日本画の魅力に触れることができる美術館です。
ぜひ本物の日本画を観て、その奥深い世界を感じ、味わってみてはいかがでしょうか。
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In cooperation with 山種美術館
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