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トロッコ列車で静岡の絶景へ。湖に浮かぶ秘境「奥大井湖上駅」
静岡県の中部、奥大井の秘境・奥大井湖上駅を尋ねました。山に囲まれたエメラルドグリーンの湖にポツンと浮かぶ半島、そこに佇む奥大井湖上駅や周辺の様子はまさに絶景! 普通鉄道日本一の急こう配を登る南アルプスあぷとラインの乗車レポートとともに紹介します。
静岡県にあるインスタ映えスポット「奥大井湖上駅」
東京と大阪の中間にある静岡県は、伊豆や熱海などの温泉地、富士山、浜松城など多くの観光地がある県です。
そんな静岡県の中部で、インスタ映えする景勝地として、近年人気を集めているのが「奥大井湖上(おくおおいこじょう)駅」。南アルプスの山間部へとつながる奥大井エリアにあります。
Picture courtesy of 静岡県観光協会
奥大井湖上駅へは、大井川鐵道「南アルプスあぷとライン」(井川線)と呼ばれるトロッコ列車で行きます。今回は列車に乗車した様子や駅からの絶景、奥大井の魅力を紹介します!
普通鉄道日本一の急こう配を登るトロッコ列車
奥大井エリアは、エメラルドグリーンの湖、川、渓谷、雄大な山々などの絶景が見られる秘境。温泉地としても知られています。このエリアを大井川に沿って走っているのが大井川鐵道の2つの路線です。
1つはJRも通っている金谷駅から、千頭(せんず)駅までの大井川本線です。金谷駅の隣の新金谷駅から千頭駅まではSLが走っていて、休日は予約でいっぱい! ちなみに、金谷駅へは、東京から電車で約2時間、大阪からは新幹線と電車を乗り継ぎ2時間半ほどです。
そしてもう1つが、奥大井湖上駅に停まる南アルプスあぷとライン。千頭駅から井川駅までをトロッコ列車が走っており、日本唯一のアプト式鉄道区間もあります。
アプト式とは、2本のレールの真ん中に敷かれた歯車レール(ラックレール)と、電気機関車の床下に設けられている歯車(ラックギア)を噛み合わせ、急こう配の線路を登り降りする鉄道のこと。この列車で普通鉄道日本一の急勾配線路を走っています。
車窓からは渓谷やダム、エメラルドグリーンの湖など雄大な景色が見られるのも特徴! SLもアプトラインも、どちらも鉄道好きにはたまらない列車です。
大自然を走るトロッコ列車に乗車!
東京から南アルプスあぷとラインに乗るには、大井川本線で千頭駅まで行きましょう。
今回の出発地点は、温泉地である寸又峡(すまたきょう)温泉。千頭駅からバスで40分ほどの場所です。
寸又峡からバスで奥泉(おくいずみ)駅へ。そこから奥大井湖上駅までをトロッコ列車で向かいます。乗車時間は36分間です。
豊かな自然の中を走る南アルプスあぷとライン。奥泉駅も木々に囲まれとても気持ちがよい駅です。しばらくすると、トロッコ列車がやってきました。普通の列車より一回り小さく、可愛いサイズ。山間に映える赤いボデイが印象的です。
いよいよ乗車します。ちなみに、千頭駅から奥大井湖上駅や終点の井川駅方面に向かうときは、進行方向右側に座ると景色がよく見えます。また、少し後ろほうに乗車したほうが、カーブのときなどに、前方の車体を含む臨場感あふれる写真が撮れますよ。
急こう配を登り、移り変わる景色に感動!
Picture courtesy of 大井川鐵道
遊園地の乗り物を連想させるような小さな車両内ですが、山の中を力強く進んでいきます。普通の列車より少々振動がありますが、すぐに慣れます。
そして、出発してすぐに、窓から見える景色の虜に! 山やエメラルドグリーンの湖、木々など、どこを走っていても美しく、自然の一部になったように錯覚するほど。
しばらくすると、奥泉駅の隣、アプトいちしろ駅に到着です。アプトいちしろ駅から次の長島ダム駅までが、普通鉄道日本一の急こう配の鉄道区間。急こう配を登るため、こちらの駅ではアプト式電気機関車との連結作業を行ないます。乗客は外に出て見学することができますよ。
このときは、乗ってきた列車だけでなく、反対方向の列車の連結作業まで見られました。
連結されたら、次の駅へ出発です。ダムを横目に急こう配のレールを登っていきます。
ちなみに、日本の鉄道は、1000メートル進むと25メートルの高さを登る25‰(パーミル)までを原則としています。この25‰は角度にすると約1.4度。わずかな角度と思いますが、それでも通常の鉄道が難なく線路を走れるのはそのくらいの角度までなのだそうです。
対して、この井川線は90‰。角度にすると約5.1度なので、鉄道にしてはかなり急な坂を登っていることになります。そんな坂道を安全に登ることを目的に「アプト式」が採用されているのです。車窓から後ろを振り返ってみると、坂道を登っている様子がよくわかり、鉄道ではあまり見られない景色に少し興奮しました。
坂を登り切った後はカーブになっており、ちょうど急こう配の区間が正面に見渡せました。線路が引かれている道のりでこれほどの傾斜はなかなかありません!
この後はトンネルを抜けると、奥大井湖上駅へ繋がる接岨湖(せっそこ)に架かる奥大井レインボーブリッジ(橋梁:きょうりょう)が見えてきます。
山に囲まれた秘境駅・奥大井湖上駅
奥大井湖上駅へ到着したら、周辺のビュースポットを散策しましょう。列車の本数が少ないので、次の列車が来る時間を事前に確認しておくと安心です。また、駅近くに休憩所もあるので、そこで休憩してから散策もオススメ。
目下にはエメラルドグリーンの接岨湖。壮大な山々に囲まれたシチュエーションはまさに絶景です。通ってきたレインボーブリッジの線路脇には遊歩道があり、ここを歩くこともできます。
湖上の高さは70メートル。スリルもありますが、景色の美しさをたっぷり満喫できます。
また歩道を進むと、トンネルの上へと進める階段があり、この階段からレインボーブリッジを見渡せます。
360度に広がる自然の中のレインボーブリッジは、何とも言えない存在感を放っています。
階段を上りきり山道を登り左手へ進むと道路が見えます。数メートル進むと奥大井湖上駅を見渡せるビューポイントがありますよ。
Picture courtesy of 静岡県観光協会
ビューポイントや奥大井湖上駅からは、隣の駅の接岨峡温泉駅へ歩いていくこともできます。所要時間は1時間~1時間半ほど。ハイキングコースになっており、途中の道のりの景色もとても美しかったです。
接岨峡には、日帰り温泉会館「接岨の湯」があり、ここも大変良質な温泉を楽しめます。
奥大井の楽しみ方
奥大井エリアは、日本でも珍しいレトロなSLやトロッコ列車に乗れるため、多くの人々が訪れ、訪日観光客の数も増え続けています。観光施設や飲食店、みやげ店などはあまり多くありませんが、ほかでは見られない雄大な自然が楽しめる場所です。
また周辺には紹介した以外に、寸又峡温泉街や夢の吊橋、長島ダム、井川ダムなどの観光スポットがあります。
寸又峡温泉街や夢の吊橋、SLについては、別の記事でも紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
In cooperation with 大井川鐵道
神奈川県在住。ジャンルを問わず、日本の古き良きスポット・モノを追いかけるライターです。神社仏閣、温泉、老舗酒場、鉄道をはじめとした乗り物、などをテーマに旅を楽しんでいます。旅行以外の趣味はお酒を飲むこと、相撲鑑賞、アート鑑賞、読書。