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ウェルネスを取り戻す。木にふれあえる癒しの公園、散歩道
植物を見て心が穏やかになったり、山や森に入って気持ちが落ち着いたりしたことはありませんか。自然には、人を癒す力があると言われています。日々の暮らしに少し疲れたら、緑豊かな公園へ足を運んでみましょう。この記事では、オススメの公園と癒しの散歩方法をお伝えします。
ある公園でのワンシーン
問題です。私は今、何をしているのでしょうか。
木に抱きついている? はい、間違いではありません。しかしもうひとつあります。木に抱きつくことで、癒されています。
抜群!森林散歩の癒し効果
植物を眺めたり、ピクニックやキャンプなどで自然とふれあったりしたときに、気分がすっきりした経験はありませんか? 森林のもつ癒しの効果は、さまざまな調査で結果が出ています。
林野庁の調査では、都市と比べると森林環境にいる人の方がストレスホルモンが低下し、リラックスした状態になることが報告されました。木々から放出される香りの物質「フィトンチッド」にも、気持ちを落ち着かせ、副交感神経を働かせる効果があると言われています。
「東京を満喫したあとはここ!長野『森林セラピー®』の癒しポイント5つ」より
木に触ったり、裸足で土の上に立ったりなど、肌で自然とふれあうことも効果的。スマホやPCなどから受けた電磁波を、体外へ放出する効果があるそうです。こうした森林の効果は注目を浴び、今では森林浴や、森林セラピーも行われています。
筆者の経験でも、森林取材の後は晴れやかな気持ちになって帰ってくることがほとんど。それを実感してからは、疲れたときに自然いっぱいの公園を散歩し、途中で木に抱きつくようにもなりました。
そんな筆者が癒しを求め、頻繁に通う公園が東京にあります。
歩いて触って癒される、とっておきの散歩道
ここは、林試の森公園。目黒駅から東急目黒線で一駅行った不動前駅で降り、10分ほど歩いた場所にあります。林業の研究機関があった場所に作られており、ケヤキ、プラタナス、サクラなどさまざまな種類の木が植えられています。
取材に訪れた日は、気温35度を超える灼熱の暑さ。しかし公園に入ると、焼けるような日差しが和らぎ、気持ちのよい風がふいてきました。
見上げると、周りに十数メートルもの高さの木々が枝を伸ばし、葉を茂らせ、太陽の光をほどよく遮ってくれていたのです。これなら真夏でも、直射日光を避けて歩くことができます。
お気に入りの木を見つけて触ってみよう!
入口を少し進むと、小さな広場が見えてきました。ここがオススメの癒しスポット。公園のシンボルツリーともいえる、巨大なクスノキがある場所です。
身長155センチメートルの筆者と比べると、その大きさは歴然。樹齢100年以上と言われているこのクスノキに抱きつけば、しっかりと守られているような安心感さえ感じます。
どうしてこんなに抱き心地がよいのでしょうか。その背景に、2つのポイントが見えてきました。
まず、大きさ。このクスノキの幹回りは3メートルを超えています。幹が太いほど、すぐに倒れることのない強さと包容力が感じられます。
次は、樹皮のきれいさ。抱きついた後に汚れてしまったら、気分はあまりよくありません。汚れが払いやすいよう、樹皮に土がついていないか確認しましょう。また、苔が多い木も要注意。水分が多く含まれていることがあるので、触って確かめてみてください。
土や苔がついていないきれいな樹皮、そして大きな幹が抱き心地のよいポイント。見つけたら、思いきって抱きついてみましょう!
……そして抱きついたあとは、見上げてみることも忘れずに。
空へ大きく幹をのばし、自由に広がる枝。この日はみずみずしい緑の隙間から太陽の光がこぼれ、キラキラと輝いてみえました。
木の内側には2つの道があります。ひとつは地面から水を吸い上げ、葉へ届ける道。もうひとつは太陽の光を浴びて作られた養分を、葉から根へ届ける道です。根から葉へ、葉から根へ、水と養分が往復することで木は生長します。
抱きつくことに抵抗のある方は、手のひらで樹皮にふれてみてください。生長を続ける温かな木の営みが、感じられるかもしれません。
土の上を歩いて足の裏から自然を感じる
公園内はコンクリートの散歩コースが用意されていますが、オススメは土のままの場所を歩くこと。地面にある細かい枝や落ち葉、砂利などが、足の裏にほのかな刺激をもたらしてくれます。
秋になると赤や黄色に染まった落ち葉で、ふかふかのじゅうたんのようになります。歩く時に出る音にも、心地よさを感じますよ。
散歩の途中でちょっと休憩。ベンチに座って耳をすませる
散歩に疲れたら、コース脇や広場に用意されているベンチに座りましょう。枝葉がゆれる様子や木洩れ日など、自然の景色は目への刺激が少なく、リラックス効果もあると言われています。
また、虫や鳥の鳴き声にも注目。特に夏はセミの音が鳴り響き、合間にカラスが応戦するかのように鳴いています。大きな音ではありますが、不思議とうるさくは感じません。
オススメの時間帯は、夕方から夜にかけて。セミとカラスの合唱が、18:00~19:00のある時間を境にピタッと止まるのです。
そのあとは、夏の夜の出番。涼しげなスズムシの音が鳴り響きます。虫の音色が一気に切り替わる様子は、まるで時計が組み込まれているかのようです。
約45分の散歩道。ぐるりと回って楽しんで
林試の森公園は東西に700メートル、南北に250メートルあり、歩くと一周で約45分ほどかかります。公園の中央には池もあり、数匹のカメがのびのびと泳ぐ姿も見られるでしょう。
ブランコやアスレチック遊具、すべり台もあるので、子どもと一緒に来ても楽しめる場所です。7~8月には水遊びのできる「じゃぶじゃぶ池」も開かれます(※)。
四季の美しさが楽しめる点も魅力。2月中旬ころからは河津桜が咲き始め、品種を変えて4月まで見ごろが続きます。秋の紅葉も見逃せません。
※:2020年はコロナウィルス感染予防対策のため中止。
木とふれあい、たくさん歩いてリフレッシュしよう
日光旅行で見つけた木。日光東照宮の辺りは巨木が多いが、さわれる場所は少ない。
都市部に住んでいる人や、PCやスマホを毎日使っている人は、気づかないうちに身体がストレスを抱えていることもあるでしょう。休憩時間や休みの日には、公園を散歩して木とふれあってみてください。
東京でアクセスが便利な場所なら、代々木公園もオススメです。大きな木が多く、公園内の噴水が出ているときは水の音も楽しめます。また、近くの明治神宮は厳かな雰囲気もあり、気分の引き締まる散歩コースでしょう。
日常に自然を取り入れて、元気に日々を過ごしましょう!
参考:
林野庁「森林の健康と癒し効果に関する科学的実証調査報告書(要旨)」
人間・植物関係学会「異なる太さのスギの幹に触れることが人間の生理・心理に及ぼす影響」
小野なぎさ著『あたらしい森林浴 地域とつくる! 健康・人材育成プログラム』
MATCHA編集者兼フリーライター。東京生まれ東京育ち東京在住。これまで渡航した国は30か国以上、住んだ県は4県。日本旅行はもうすぐ全都道府県を制覇!「読んだからこそわかるその土地の魅力」が伝えられることを目指して記事を作っています。森とお寺とラクダが好きです。