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日本のことば事典「押し寿司」
日本の代表料理「寿司」には、一般的に知られる「握り寿司」以外にも、様々な種類があります。本記事では、具材を酢飯と一緒に型に入れて押し固める「押し寿司」を紹介します。
握り寿司だけが寿司じゃない!
お寿司と言えば、一般的には酢飯に生鮮魚介を重ねて握る「握り寿司」が有名。海外の方がイメージするのもこちらの方が多いでしょう。
しかし寿司にはその他にも稲荷寿司や巻き寿司など様々な種類があります。
酢飯と味付けした具材を型に入れ、上から重石などを乗せて型抜きする「押し寿司」もそのひとつ。本記事では、まだまだ国外で認知度の低い日本の押し寿司について紹介します。
日本全国にあるご当地押し寿司
型抜きしたお寿司「押し寿司」は、具材の並べ方でとても美しい料理になります。全国の郷土料理として代表的な押し寿司をご紹介します。
岩国寿司(山口県)
山口県の「岩国寿司」。ご覧の通りの巨大な押し寿司です。酢飯を型に均等の厚さに敷き詰め、名物の甘酢に漬けたレンコンやでんぶ、酢でしめた魚やエビ、卵などを彩りよく並べます。
並べて重ねる作業を数回繰り返すと、写真のような押し寿司が完成! 見た目がケーキの様に層になっていて具材もたくさん、とても贅沢なお寿司です。山城だった岩国城での保存食が起源と言われています。
バッテラ(大阪府)
大阪の「バッテラ」は、サバを使って作る押し寿司の一種。
酢で〆たサバ(しめ鯖)を重ね(※1)、その上にさらにサバが透けて見えるほど薄い昆布が重ねてあるのが特徴です。バッテラの語源はポルトガル語のバテイラ、小舟という意味なのだとか。
もともとコノシロという魚の片身で作ったものが小舟に似ていた事から「バッテラ」と名付けられました。やがてコノシロがサバに代わり、現在の形になったのです。
※1:酢で〆る……調理法のひとつ。食材を酢につけ、身を引き締めること。
大村寿司(長崎県)
長崎県島原(しまばら)の「大村寿司」は、たっぷり重ねた焼き卵が目印。このように薄く焼き上げた卵を、日本では錦糸卵(きんしたまご)と呼びます。
具材は鯛など白身魚のそぼろ、はんぺん、かんぴょう(※2)を味付けし、酢飯に挟んで型抜きします。
※2:かんぴょう……ふくべと呼ばれる野菜の身を紐状にして乾かした食品。寿司の定番具材。
吾左衛門寿司(鳥取県)
鳥取県の押し寿司「吾左衛門(ござえもん)寿司」は、酢飯に〆たサバを乗せ、柔らかく炊き上げた北海道産の昆布を巻いたものです。
型で押し固めた押し寿司とは少し違い、酢飯を布きんなどで巻いた棒寿司と呼ばれる形です。
鱒寿司(富山県)
富山県の郷土料理「鱒(ます)寿司」。色鮮やかな鱒(サクラマス)は、塩や酢で味付けられています。完成した寿司は笹の葉で包まれており、召し上がる時はケーキのように放射状に切っていただきます。
角寿司(広島県)
広島県の郷土料理「角寿司(かくずし))」。型にやや硬めの酢飯を詰め、彩り良く具材を並べ型抜きしたお寿司です。具材は豊富で〆鯖、甘辛く煮たシイタケ、薄焼き卵、あさり剥き身の煮物など。大勢のお客をもてなす料理として出されることが多いですが、地元では馴染み深いお弁当でもあります。
各地の押し寿司は、駅弁にもなっています。旅先だけでなく近くを通過する際も、気軽にご当地の押し寿司を食べてみてください。
日本への訪日外国人の方が、もっと増えますように!