高級食材を本場で食べたい!海と生きる町・気仙沼で絶品のフカヒレに出会う旅
宮城県の気仙沼は、世界三大漁場のひとつである三陸沖にあり、古くから漁業が盛んな地域です。なかでもサメの水揚げ量は日本一で、高級食材のフカヒレは特産品のひとつ。今回は気仙沼で創業50年を超えるフカヒレ専門店の石渡商店を訪ね、フカヒレの魅力や奥深さを教えていただきました!
憧れの高級食材フカヒレ
Picture courtesy of 石渡商店
中華料理の高級食材のひとつ、フカヒレ。サメのヒレを乾燥させたもので、スープや姿煮として調理されます。日本でもその歴史は古く、中国へ輸出する食材として加工技術が発達しました。
とくに宮城県の気仙沼はサメの水揚げ量が日本一。その量は国内の90パーセントにもおよびます。
フカヒレをもとめて気仙沼へ
Picture courtesy of 石渡商店
気仙沼は世界三大漁場のひとつである三陸沖に位置する、東北きっての漁業の町です。大型漁船がずらりと並ぶ港の光景は、圧巻の迫力!
気仙沼湾は入り組んだ地形が特徴のリアス海岸です。そのため、湾内の波は穏やかで、魚の栄養となるプランクトンも豊富に育ちます。
町のシンボルともいえる「浮見堂(うきみどう)」からは、そんな気仙沼の内湾が一望でき、とても気持ちのよいスポット! 港からは気仙沼湾を周遊するクルーズ船も出港していますよ。
また、港のすぐそばにある商業施設「迎(ムカエル)」「結(ユワエル)」「拓(ヒラケル)」「創(ウマレル)」では、気仙沼の特産品やグルメが味わえます。
命を大切にいただく気仙沼のサメ文化
おいしいフカヒレを味わう前に、まずは気仙沼のサメ文化について知りたいところ。そこで、50年以上フカヒレをつくり続けている専門店・石渡商店の代表取締役専務であり、気仙沼の食文化を引っ張る若きリーダー・石渡久師(いしわた ひさし)さんにお話を伺いました。
「サメを釣って加工する文化は、日本各地に昔からありました。その中で、気仙沼だけがサメの一大産地として残っている理由は、フカヒレ専門店だけでなく、サメ皮加工店や魚肉加工店などサメをあつかう業者が集中しているからなんです」
ひとつの町にサメの加工業者が集まるのは、世界的にも大変めずらしいことなのだとか。世界の一部の地域では、サメのヒレだけを切り取り、残りを捨ててしまう、フィニングという漁法が問題になっています。一方、気仙沼では、サメをあますところなくいただく伝統が根づいているんですね。
「サメは本当に捨てるところがない魚なんです。魚肉はちくわやかまぼこに、骨や皮は健康食品になります」
サメの心臓までも、気仙沼では「モウカの星」と呼ばれ、お刺身として食べられるそう。新鮮なサメがとれる気仙沼だからこそ味わえる珍味ですね!
石渡商店の震災と復興
取材時(2020年11月)の気仙沼の様子
2011年3月11日、東日本大震災が気仙沼を襲った日、町全体が地震と津波で大きな被害を受けました。
「漁港や市場はもちろん、わたしたちの工場も全壊でした。当時、気仙沼にあった10軒のフカヒレ店のうち、2軒は廃業してしまいました」
先行きの見えない状況でも石渡商店は急ピッチで工場を再建しました。それは、サメの町といわれる「気仙沼の歴史を守りたい」という強い思いからだったといいます。
「気仙沼から加工工場がなくなったら、サメをのせた漁船はほかの港に行ってしまいます。先のことはわからないけれど、一刻も早く工場を再建して、サメの受け入れ態勢をつくらなければいけないと思ったんです」
一方で、震災をきっかけに、よい変化もあったといいます。
「震災前は、フカヒレ店同士はライバル関係でした。けれど震災でみんなが被害を受け、0からのスタートです。まずはみんなで商売を再開できるように、力を合わせていく関係になりました」
石渡さんの話から、気仙沼の未来を思う熱い気持ちが伝わってきました。
石渡商店のフカヒレ
なかなか食べる機会のない食材、フカヒレ。高級食材といわれる理由はどこにあるのでしょう?
「そもそも、フカヒレにできるのは、1匹のサメからわずか10パーセントほどなんです。気仙沼でとれたサメを日本人全体で分けると、1人あたり35年から40年に1度しかフカヒレを食べられない計算になります。そのくらいフカヒレって貴重なものなんです」
気仙沼でとれるヨシキリザメは、世界的にみると小型~中型で繊維が比較的細く、ゼラチン質が豊富なのが特徴です。鮮度を保ったままていねいに加工することで美しい姿煮にすることができるといいます。
「フカヒレは手作業も多く手間ひまがかかるので、きれいに加工するのが難しいんです。うちでは祖父が開発した“素剥き(すむき)”という製法で加工しています」
工場の様子(Picture courtesy of 石渡商店)
素剥きとは、生のヒレから余分な皮や骨、肉を取り除き、機械乾燥させたもの。
それまでフカヒレの乾燥は天日干しが主流だったそうですが、新鮮なうちに一気に加工する素剥きによって、衛生的で品質のよいフカヒレをつくることができるようになったといいます。
フカヒレってどんな味?フカヒレステーキを食べてみた!
では、実際にフカヒレはどんな味がするのでしょう。
「フカヒレはそれ全体がゼラチンでできているので、ゼラチンの味がします。フカヒレの面白いところは、このゼラチンと油が合わさることで、新しい味が生まれることなんです!」
そう言って石渡さんが出してくれたのは、フカヒレステーキという商品。中華料理では姿煮やスープとして登場することが多いフカヒレですが、石渡商店では、フカヒレの食感や味わいをダイレクトに楽しめるステーキとしても販売しています。
化学調味料不使用、塩分も最低限で調理されており、家庭のフライパンで焼いて食べることができます。
「この商品はフカヒレにコンソメスープを合わせていますが、スープだけの味と、フカヒレを合わせたときでは味が変わります」
もっともおいしいというフカヒレの中央を切り分け口にふくむと、もっちりとした弾力ある繊維の歯応えと、深みの増したコンソメの風味が口の中に広がります。これがフカヒレなんだ! と感動します。
「フカヒレは、焼くのか煮込むのか、どんな調味料を合わせるのかで、味も食感も変わる不思議な食材です。まるで化学みたいだと思います」
石渡さんのお話を聞くうちに、複雑だからこそ面白いフカヒレの魅力にどんどん引き込まれていきます! 奥深いフカヒレの魅力はぜひ一度、味わってお確かめください。
フカヒレステーキ(2枚入):税込10,800円
海のおいしさがつまった商品いろいろ
石渡商店で注目の商品はフカヒレ以外にもあります! 特製レシピでつくるオイスターソースとXOジャンは気仙沼の海の幸をふんだんに使った人気商品。どちらも化学調味料を使わず、宮城県の食材を取り入れたこだわりの品です。
唐桑半島(Picture courtesy of 石渡商店)
とくに、オイスターソースに使われるカキは、優れた養殖場として名高い気仙沼の唐桑(からくわ)地区のもの。豊富なプランクトンを食べて育ったカキはぷりぷりで栄養満点。1年のうちでもっとも身が育つ、3月から5月にとれたカキだけを使用しています。
「ふつうはカキの出汁を煮詰めてつくるのですが、この商品はカキをまるごとエキスにしています。気仙沼の1番おいしい時期のカキを1年中、世界のどこにいても食べられるよう、瓶詰めのオイスターソースを考案しました」
完熟したカキの濃厚なうま味はさまざまな料理を引き立ててくれます。
気仙沼完熟牡蠣のオイスターソース:税込972円 (三年熟成:税込2,160円)
気仙沼旨味帆立とコラーゲンのXO醤:税込2,160円
気仙沼「海の市」でサメ文化にふれる
せっかく気仙沼を訪れたなら、フカヒレ以外にも海の幸をたっぷり楽しみたいもの。魚市場に併設する「海の市」1Fには、水揚げされたばかりの海産物が並ぶ鮮魚店があり、地元価格で購入できます。
また、海鮮丼やお鮨が味わえるレストランもあり、立ち寄りスポットにぴったり! 地元の特産品を一挙に集めたショッピングエリアでは、石渡商店のフカヒレステーキやオイスターソースも購入できます。
「海の市」2Fにある「シャークミュージアム」は、日本で唯一のサメをテーマにした博物館です。日本を代表するサメ研究者の仲谷一宏先生が監修しており、サメの生態や気仙沼のサメ文化について楽しく学ぶことができますよ。
シャークミュージアム入場料(税込)
大人:500円
小学生:200円
気仙沼の美味を、旅先でも自宅でも
ひと昔前までは、フカヒレといえば中華料理のイメージでした。しかし、最近は日本食の料理人たちも注目する食材に変わっています。
たとえば気仙沼で50年の歴史をもつ「気仙沼 あさひ鮨」。こちらでは、なんと、石渡商店のフカヒレをつかったお鮨が味わえます!
今回ご紹介した石渡商店の商品はオンラインでも取り寄せできます。家にいながら気仙沼の味覚を楽しめますし、贈り物にもぴったりです。
海と生きる人びとの熱い思いがつまった町、気仙沼にぜひ来てみてください!
Written by ISHIGAKI KUMIKO
In cooperation with 石渡商店、気仙沼 海の市/シャークミュージアム
Sponsored by Reconstruction fishery processing industry market recovery promotion center