旅の準備はじめよう
日本で一番ちいさなラグビースタジアムの物語
ラグビーワールドカップ2019™️が行われる、日本で一番ちいさなラグビーの試合会場、岩手県の「釜石鵜住居復興スタジアム」を紹介。2011年の東日本大震災の津波からの復興を目指して設立された経緯や東京からのアクセス、周辺のホテル、試合日程などをガイドします。
日本で一番ちいさなスタジアム
2019年7月27日「釜石鵜住居復興スタジアム」で行われたワールドラグビー パシフィック・ネーションズカップ2019の様子
2019年9月、「ラグビーワールドカップ2019™️日本大会」(以下、W杯)が開幕します。4年に1度の、ラグビーファンが待ち望んでいた祭典です。
会場となるのは日本全国の12の都市のスタジアム。東京、横浜、大阪といった大都市の収容人数20,000〜72,000人という巨大スタジアムが名を連ねるなか、東北地方の端にある、ひときわちいさなスタジアムに気づく人がいるかもしれません。
収容人数は約16,000人。岩手県にある、日本で一番ちいさな会場「釜石鵜住居復興スタジアム」です。
復興を象徴する場所
「ちいさなスタジアムだけど、立派でしょう」。
MATCHA編集部が現地を訪れたとき、町の人はいいました。
鵜住居地区 photo by Pixta
スタジアムのある鵜住居地区は、2011年3月11日の震災のときに、釜石市内でもっとも大きな津波の被害を受けた地域。スタジアムは被災した小学校と中学校の跡地に建っています。
津波が3F建ての校舎を飲み込んだとき、生徒たちは手を取り合って高台に避難。学校にいた600人全員が助かった事実は、のちに「釜石の奇跡」として知られるようになりました。
建設中のスタジアム photo by Pixta
小中学校は取り壊され土地は更地になっていましたが、その後、復興を象徴する場所としてW杯の会場に選ばれ、ラグビースタジアムが建てられました。「でもなぜ、ほかのスポーツではなくてラグビー?」と、不思議に思う人もいるかもしれません。
その理由は、釜石とラグビーの歴史から紐解くことができます。
「ラグビーの町・釜石」復興のために
新日鐵釜石ラグビー部 picture courtesy of Iwate Prefecture
「釜石はラグビーの町です」と語るのは、岩手県ラグビーワールドカップ2019推進室の佐藤裕介さん。
「1959年には地元・釜石の実業団チームが結成されました。新日鐵釜石ラグビー部(※)は、1970年代から80年代にかけて全国社会人大会や日本選手権で7連覇を果たし、"北の鉄人"と呼ばれるほどの強豪チームになりました」。
強いチームは町の誇り。釜石シーウェイブスRFCと名前を変えたチームは、震災当時、率先して復旧活動を行いました。支援物資や瓦礫を運び、地元の人を勇気付けたのです。
「震災後、ラグビーの町として復興するために、"震災の跡地に球技場を新設して、W杯を招致する"という話が持ち上がりました」。
※:結成当時の名前は富士鉄釜石ラグビー部。現・釜石シーウェイブスRFC
復興を世界に発信
2015年、釜石での開催が決まったときのパブリックビューイングの様子 picture courtesy of Iwate Prefecture
釜石市は岩手県とともにW杯の開催都市に立候補し、2015年、みごと会場に選ばれますが、市の人口は35,000人。16,000人のスタジアムとなると、人口の二分の一が収容できる施設を作るに等しく、小さな市には多大な負担です。
釜石シーウェイブスRFCのキャプテン中野裕太選手
釜石での開催が決まったとき、"それどころじゃないでしょう。W杯より復興が優先"という地元の声もありました。しかし、市や県の予算に加え、国の支援でスタジアムの建設が着実に進んだことで、風向きが変わりはじめます。
「"W杯のおかげで町の復興を世界に発信できる"と、開催を歓迎する声が増えていきました。私も海外からいろいろな人が町を訪れてくれるのを楽しみにしています」と、釜石シーウェイブスRFCのキャプテン中野裕太選手はいいます。
ちいさいけれど"思い"がつまっている
「いのちをつなぐ未来館」でW杯の開催を喜ぶ男性
「釜石鵜住居復興スタジアム」には、ほかにはない強みがあると中野選手。
「"思い"のつまった特別なスタジアムです。会場の近く(の鵜住居駅)には震災や防災を学べる"いのちをつなぐ未来館"もあります。ラグビーだけでなく、震災から復興しつつあることも見てほしい。そして、釜石の自然やおいしいグルメを楽しんでいってください」。
「釜石鵜住居復興スタジアム」で試合を見てみたい!という方は、これから紹介するアクセスや宿泊施設、試合日程を参考にしてください。
東京から釜石鵜住居復興スタジアムへの行き方
東京駅や池袋駅からスタジアムまでのアクセスは以下の通りです(料金は2019年9月時点のものです)。
東京から釜石までの行き方
東京駅から東北新幹線に乗り新花巻駅まで行き、JR釜石線に乗り換えて釜石駅まで向かいます。所要時間はおよそ5時間30分です。
池袋駅からは高速バス「遠野・釜石号」が運行していて、釜石駅まで行けます。所要時間はおよそ10時間、料金は9,200〜10,700円です。(時間や座席の位置によって変動します)
「遠野・釜石号」公式HP:http://www.iwatekenkotsu.co.jp/tonokamaisi.html(日本語)
岩手県内の空港や主要駅からの行き方
なお、試合日には、岩手県内の空港や主要駅からスタジアムに直通するライナーバス(有料・要事前予約)が運行しています。
「ラグビーワールドカップ2019TM釜石開催実行委員会」ライナーバス予約ページ:https://www.rugby-iwate.kamaishi.pref.iwate.jp/access.html#the-day
釜石駅から釜石鵜住居復興スタジアムまでの行き方
釜石駅からは電車かシャトルバスで会場まで向かいます。
電車の場合、三陸鉄道リアス線に乗り換え鵜住居駅で下車。所要時間は12分、料金は310円です。
バスの場合、W杯の試合が行われる2019年9月25日(水)と10月13日(日)には、釜石駅に隣接する「シープラザ釜石」からシャトルバスが出ています。所要時間は約25分、料金は1人1日500円です。
シャトルバスの利用には事前の予約が必要です。以下のサイトから予約をしましょう。
「ラグビーワールドカップ2019™️釜石開催実行委員会」シャトルバス予約ページ:https://www.rugby-iwate.kamaishi.pref.iwate.jp/access.html#the-day(日本語・英語)
オススメの宿泊先・ホテル
W杯の試合日前後には、釜石市内の宿泊施設が満室になることも。試合日には、岩手県内各地からスタジアムに直通するライナーバス(有料・要事前予約)が運行しているので、岩手県内の宿泊施設の利用がオススメです。試合前後には、岩手県内の観光スポットを巡るのもよさそうです。
「ラグビーワールドカップ2019TM釜石開催実行委員会」ホテル・宿泊ページ:https://www.rugby-iwate.kamaishi.pref.iwate.jp/tourism.html
「ラグビーワールドカップ2019TM釜石開催実行委員会」ライナーバス予約ページ:https://www.rugby-iwate.kamaishi.pref.iwate.jp/tourism.html
スタジアムの近くには、「浜べの料理宿 宝来館」という旅館もあります。女将は、津波に飲まれながらも生き延びた経験をもち、震災の記憶を伝え続けています。
釜石鵜住居復興スタジアムの試合日程
2019年7月27日「釜石鵜住居復興スタジアム」で行われたワールドラグビー パシフィック・ネーションズカップ2019の様子
「釜石鵜住居復興スタジアム」では、W杯期間中、2つの試合が催されます。日程は以下です。
1試合目:2019年9月25日 14:15〜 フィジー V ウルグアイ
2試合目:2019年10月13日 12:15〜 ナミビア V カナダ
「釜石鵜住居復興スタジアム」で大迫力の試合を!
スタジアムは2018年8月19日に完成したばかり。客席とグラウンドとの距離は近く、大迫力の試合が楽しめます。日本でラグビーを見たいという方は、ぜひ釜石にも足を運んでみてください。
そのほかの岩手の観光地や東京からのアクセスや、釜石市周辺の観光スポットについては以下の記事をご覧ください。
あわせて読みたい
In cooperation with Iwate Prefecture