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【Ready For Japan! vol.7】自宅で運動不足解消!プロに教わる「ラジオ体操」5つのコツ
健康な毎日を過ごすには、適度な運動が大切。しかし外出が難しく、家にいる時間が増えると運動する機会が少なくなってしまいます。そんなときには「いつでも、どこでも、だれでも」できる、約3分間の健康法「ラジオ体操」をしてみてはいかがでしょうか。90年以上も日本人に親しまれてきた体操です!
「いつでも、どこでも、だれでも」できるラジオ体操
リモートワークを何日も続けたり、外出を避けて家にいる時間が増えたりすると、身体を動かす機会も少なくなります。すると気分がさえなかったり、ストレスがたまったりしてきませんか。
そんな方にオススメなのが、体力保持・健康増進のために作られた、日本で90年以上の歴史をもつ「ラジオ体操」です!
ラジオ体操とは、「いつでも、どこでも、だれでも」をコンセプトにした、約3分でできる体操。全身をくまなく動かせるよう考えられた、13種類の動きで構成されています。日本では早朝に、地域の人が公園や広場などに集まって行っています。筆者も小学生のころ、夏休みの朝に友達や地域の大人と学校の校庭でしていました。
ラジオ体操は、両手を広げられるスペースがあれば家の中でもできます。ポイントを押さえれば凝り固まった筋肉がほぐれ、身体の内側から活性化されて基礎代謝も上がるのだとか。
正しい動きでラジオ体操の効果を最大限引き出せるよう、全国NPO法人全国ラジオ体操連盟の事務所を訪れ、ラジオ体操のコツを聞いてきました。
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正しい動きで健康に!効果的なラジオ体操のコツ
写真左:藤元直美さん、写真右:青山敏彦さん
今回教えてくれるのは、NHKのテレビ番組で28年間ラジオ体操の指導者を務め、現在はNPO法人全国ラジオ体操連盟理事長の青山敏彦(あおやま としひこ)さんと、指導委員の藤元直美(ふじもと なおみ)さん。青山さんの解説のもと、藤元さんの動きをお手本に"ラジオ体操の正しい動き方"を学びます。
「さっそく教えてください!」とお願いすると、「では、机をどかしましょう」と青山さん。事務所の一角に簡単なスペースが作られました。
なんと、ここが今日のレクチャー会場。体育館やスタジオのような特別な場所でなくても、ラジオ体操はできるんです! ちなみに筆者は私服のまま行います。まさに「いつでも、どこでも、だれでも」できる運動。
では、さっそくポイントを学んでいきましょう。
1.まずは基本。背骨と下半身のウォーミングアップ
ラジオ体操の最初の動作は、運動を始めるためのウォーミングアップのようなもの。伸びの運動では、背骨をまっすぐ伸ばして姿勢を整えます。
パソコン作業をしたり、料理や掃除をしたり、私たちは生活の中で前かがみの姿勢を取ることが多くあります。猫背が癖になると、健康に支障をきたしてしまうことも。
「背骨は身体の屋台骨です。腕を思いっきり上げて、日常生活で丸くなってしまった背骨をひっぱりましょう!」と青山さん。丸くなってしまった背骨を整え、正しい姿勢に戻します。
背筋を伸ばしたら、次は足を曲げ伸ばす運動。ここではふくらはぎに注意して足を動かしましょう。
「筋肉の60~70%は下半身についています。とくにふくらはぎを動かすことで全身の血流がよくなり、筋肉もほぐれますよ」
膝を曲げる時はかかとを浮かせたままにすると、ふくらはぎの筋肉が使われていることをより実感できます。続けているうちに血のめぐりがよくなり、全身が温かくなってきました。
手のひらは丸める?伸ばす?
藤元さんを見ていると、指を丸めている時と、伸ばしている時がありました。
「指を丸めているのは力が入らないように、リラックスした状態で行う時です。ピンと伸ばす時は指の先まで神経を行き届かせてください」(藤元さん)
指先まで意識する運動、リラックスして動かす運動、似ている動きでもねらいによってやり方は異なるとのこと。1つ1つの動作に目的が定められていました。
2.呼吸と動きは止めないで、流れるように動こう
胸をひらく運動では、これまで筆者が行ってきたラジオ体操のやり方と同じように、思いっきり背中を反りました。すると、「反らなくていいんですよ」と青山さん。
"胸をひらく"ことが大事なので、姿勢はそのまま、肩甲骨をくっつけるような気持ちで腕を後ろに、そして斜め上に引くのだそうです。肩こりのひどい筆者にとって、この動きは難易度が高め。動きに夢中になっていると、
「呼吸を続けることにも、意識を向けてくださいね。胸にたくさん息を吸い込みましょう」と、アドバイスをもらいました。呼吸を止めず、有酸素運動を続けることが大事なのだと言います。
次は、身体を横に曲げる運動。手を長く引っ張ることで、脇の下あたりの筋を伸ばします。
「ラジオ体操は、身体をゴムのように、伸縮性を保つことを意識して作られています。身体を動かし続けることに注意して行ってみましょう」(青山さん)
この運動も2回続けて行うことで、筋肉の伸び縮みを繰り返しているのだそうです。
3.素早い動きで瞬発力を高める!
体操の中盤、肩・天井・肩・地面、と手を動かす運動では、素早く動くのがポイント。これは瞬発力を鍛えるための運動だそうです。
「年をとると身体の動きはどんどん鈍くなります。躓いた時に転ばないよう、足がすぐ出せるためには、日ごろから瞬発力のトレーニングが必要です」(青山さん)
リズミカルな動きで気持ちも盛り上がります! 伸ばすときはかかとも上げることで、全身の運動になりますよ。
4.大きく身体を回す総合運動
クライマックスは大きく円を描くように上半身を回します。胸をひらく運動では背中を反らしませんでしたが、ここでは大きく反って上半身を回しましょう。筋肉の伸びを意識することで、身体全体の総合運動につながるのだとか。
もちろんここでも、呼吸をしながら行ってくださいね。
5.最後は深呼吸。心と身体を整える
すべての動きを終え、運動量が頂点に達したあとは、大きく深呼吸して身体を整えます。
「深呼吸で大きな輪を描くように指先を伸ばしていますが、リラックスして行ってください。描いた輪の中の空気を吸う気持ちで呼吸をすると、はずんだ息も整い、心も落ち着いてきますよ」(青山さん)
最後まで息を吐ききったら、ラジオ体操の終了です!
ラジオ体操の魅力は?青山さんにインタビュー
1928年にスタートしたラジオ体操は、当時「国民保健体操」と呼ばれ、国民の健康、長寿、幸福を願って作られました。今の形式になったのは1951年のことだそうです。
青山さんがラジオ体操に関わり始めたのは1971年の35歳のころ。50年近くもラジオ体操を続けているのです!
ラジオ体操は経済的にも効果あり?
青山さんは1959年に日本体育大学を卒業、翌年にはデンマークの体操学校へ留学もしています。その後も母校の教授を務めるなど、ラジオ体操の指導者になる前から身体を動かすことを仕事にしていました。そのためラジオ体操による身体の変化は、当時はわからなかったと言います。
しかし、今になって考えてみると、ラジオ体操のおかげで"エコノミーな人間"になれたとか。
「ラジオ体操を始めたころから、体型がほぼ変わっていないんです。体重の増減は2キロ程度。ほかの人からは『太ってズボンが入らなくなった』という話をよく聞くので、何十年も前の洋服が今も着れるのは、だいぶ経済的です」と、笑いながら青山さんは言います。
食事は少し偏食家。野菜はあまり食べず、甘いものが好きでよくコーラを飲んでいるのだそう。それでも健康でいられるのは、今でもラジオ体操を続けているからなのかもしれません。
仲間と一緒にできることが、ラジオ体操の魅力
50年近くラジオ体操に携わっている青山さんですが、前任の指導者の代理で依頼されたことがきっかけだったそう。今でも続けている魅力は、一体どこにあったのでしょうか。
「仲間と一緒に取り組める体操だから、今でも続けられています。指導者だった当時は、わずか10分程度のテレビ番組の放送にみんなが集まり、楽しそうに動いてくれることが嬉しくて。私から言わなくてもみなさん自身でラジオ体操のよさを感じ、すっきりした表情で帰っていただけるんです」
さらに、歴史が長いこともラジオ体操の魅力だと言います。「今でもラジオ体操の集会は続いているので、『久しぶりに参加したら長く会っていなかった友人に出会えた』など喜びの声もよく聞きます」
現在でも日本各地の2,000以上の場所が、ラジオ体操の会場として登録されているそう。東京では新宿の都庁近くにある新宿中央公園 滝の広場や、上野公園、関西地方では大阪城の本丸御殿跡の広場などさまざまな場所で地域の人が集まり、ラジオ体操をしています。
ラジオの放送時間にあわせ、朝6:15~6:30ころからのスタートがほとんどで、どなたでも参加可能です。
いつでもどこでも、ラジオ体操を楽しもう!
運動不足だな、気分がさえないな、と思ったら、自宅でもラジオ体操をして身体を動かしてみてはいかがでしょうか。家族と住んでいる方は、ぜひみんなで動いてみましょう!
そして日本を訪れたら、早起きして地域のラジオ体操会場に足を運んでみてください。地域の人とふれあい、一緒に身体を動かし、きっとすがすがしい1日の始まりになりますよ。
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Photos by Chu
In cooperation with NPO法人全国ラジオ体操連盟
MATCHA編集者兼フリーライター。東京生まれ東京育ち東京在住。これまで渡航した国は30か国以上、住んだ県は4県。日本旅行はもうすぐ全都道府県を制覇!「読んだからこそわかるその土地の魅力」が伝えられることを目指して記事を作っています。森とお寺とラクダが好きです。