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海とともに生きる、京都・伊根町――日常の美しい風景
海の京都・伊根といえば、美しい舟屋のイメージを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし筆者は、伊根の“日常”と“人”こそ、もっとも美しいと感じます。都会での生活に疲れを感じた時、リラックスできる、ゆっくりとした時間を過ごしに伊根を訪れてみてはいかがでしょうか。
伊根の美しさにふれる旅
人口およそ1800人。京都府の北部・丹後半島に、小さな「伊根町」という漁村があります。かつて京都の北部に住んでいた筆者が、初めて伊根を訪れた時、町の風景やその地域ならではの生活すべてが魅力的に映りました。そのときの感動は、今も忘れることができません。
伊根の美しさはその日常の中にある――。伊根に来ると、私はいつも散歩をします。すると、伊根の美しさがどんどん見えてくるのです。建物の様子や、町の景色、人々が暮らす様子、すべてが伊根の美しさを作り上げています。
日常の基盤となる「舟屋」
「新しい京都を発見!“海の京都”でやりたい5つのこと」より
伊根という場所は開発に適した平地が少なく、そこで生きる人は海の上でも生活をしなくてはいけません。そこで「舟屋」と呼ばれる独特な建築様式が、この地に生まれました。
伊根の建物は、海側にある「舟屋」と、山側にある「母屋」のふたつに分けられます。隣の舟屋とのあいだには隙間が空いていて、日中はそこへ日光が降りそそぎ、海面が美しく輝きます。
舟屋の1Fは船庫になっており、商売道具の船や漁具が置かれています。船は舟屋から直接、海に出ることができます。
2Fは居住空間として使用されています。なかには民宿として営業している場所もあり、宿泊すると現地の人々の生活が体験できます。
船長から伊根の歴史を聞く
伊根に訪れる人は、舟屋の景色を海から眺めたいと思うでしょう。そんな方には海上タクシーがオススメ。約30分で湾内をめぐる、筆者も大好きな体験です。
名前こそ海上“タクシー”ですが、実態は小型の遊覧船。電話で依頼をすると、湾内を周遊して案内してくれます。船長は日本語と簡単な英語を使って、伊根の歴史や産業、この景観が作られた経緯などを説明してくれますよ。
途中、船長がとつぜん船を止め、乗客に海老せんべいを配りはじめました。海老せんべいを海に投げ込むと、カモメがそれを求めて飛んでくるのだとか。これはカメラチャンスですね!
伊根で育つ海の男
ご両親に同意のもと、撮影
伊根の子どもたちにとって、山と海は当たりに近くにある存在。放課後に釣り竿を持って海へ行くことは、彼らの楽しみのひとつです。釣れた魚がどんな種類なのか、私たち都会から来た大人よりもよく知っています。
本当の“新鮮さ”を教えてくれる海鮮丼「ブリ丼」
伊根は、富山県の氷見、長崎県の五島列島と並んで日本三大ブリの産地と呼ばれています。とくに冬の伊根で食べる「ブリ丼」は、ひとくちで「新鮮」という本当の意味を教えてくれるでしょう。
伊根に住む外国人がオーナーの宿「舟音」
75年の歴史をもつ伊根海宿「舟音」は、地域の人が長年暮らした母屋を改装して作られています。目の前には漁港が広がり、部屋にいても漁師とかもめの声が聞こえてきます。
部屋の内装は昔ながらの和風で、壁には細かな装飾が残っています。家の造りから、日本家屋の温かさを感じられることでしょう。一方、家電や設備は新しく、きれいなベッドで眠ることができますよ。
宿のオーナーであるJunさんは、伊根ではめずらしい外国籍の住民。伊根に住んで7年目になるのだとか。日本語と中国語、英語、広東語も話せる人です。
彼女はかつて、観光協会の案内所で世界各国の観光客と接していました。今は伊根の住民として、とてもフレンドリーに伊根の歴史と現地での暮らしを教えてくれます。
夜の散歩も忘れずに
伊根に訪れたら宿泊して、夜の美しさも楽しみましょう。静まった街には昼とは違う雰囲気が漂っています。
夜の伊根はとても静か。たまに地元の人たちがジョギングをしているくらいです。
朝は早く起きて「浜売り」体験へ
早朝、Junさんに漁港を案内してもらいました。ここでは地元ならではの「浜売り」が行われています。地元の人たちはここで新鮮な魚を買うそうです。浜売りの様子を見ていると、漁師と住民たちとの強い繋がりや、温かな愛情を感じることができました。
とくにJunさんのことは、漁師もとても気にかけているそう。彼女が居心地よくすごせるよう、彼らの方からよく声をかけてくれると言います。一緒にいた筆者にも「こんな景色見たことないやろ!」と、関西弁で元気よく話しかけてくれました。
訪れるほど魅力に気づく町
伊根には訪れるほど夢中になっていく魅力があるように思います。初めて訪れたときは「舟屋」の美しさに、その後は訪れるたびに、その情熱的な人々とのんびりとした生活感に惹かれていくことでしょう。
旅行での風景は時間が経つと忘れてしまうこともありますが、旅での出会いは、私たちの記憶にいつまでも残る、最高の景色です。
台湾台北市出身。京都府北部の舞鶴市でインバウンドに携わりながら、ブロガーとして日本の観光情報を発信してきました。MATCHAには2019年10月に参加。
趣味は旅、電車を見ること、オシャレなスイーツ・カフェ巡り、御朱印集め、ミュージカル観劇、写真撮影など。幅広過ぎて、自分でも不思議に思っています。