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熊野古道は熊野三山の巡礼道で、ユネスコの世界遺産に認定されています。熊野古道を1泊2日で巡るモデルコースを、初心者・中級者のレベル別で3ルートを紹介。また、熊野本宮大社や湯の峰温泉のみどころ、熊野古道に関するよくある質問にもお答えします。
熊野古道は2004年にユネスコ世界文化遺産に登録され、世界的にも有名になった巡礼道です。熊野本宮大社や世界遺産「つぼ湯」が人気の湯の峰温泉があり、見どころはたっぷり!本記事では1泊2日のモデルコースを、難易度別に3ルートご紹介します。
熊野古道の参詣道は、出発点や通る場所によって、実は以下の5つのルートに分かれています。
・紀伊路(きいじ):大阪から和歌山県田辺市までのびる南北ルート
・大辺路(おおへち):田辺市から紀伊半島南部の海沿いを通るルート
・中辺路(なかへち):田辺市から紀伊半島を横断するルート
・小辺路(こへち):高野山と熊野本宮大社を最短で結ぶ山越えルート
・伊勢路(いせじ):紀伊半島東側を通り伊勢神宮と熊野三山を結ぶ参詣ルート
中でも「中辺路」は熊野本宮大社や熊野速玉大社、熊野那智大社ともつながる、人気の高いルートです。本記事では、この中辺路のモデルコースを難易度別に3つご紹介します。
発心門王子(ほっしんもんおうじ)から熊野本宮大社を目指すルートは、総距離約7.5キロメートルで所要時間は約4.5時間ほどです。
距離は長いですが、高低差が少なく緩やかに山道を下っていく道が続くため、初心者におすすめです。
Picture courtesy of 熊野本宮
1日目は熊野古道散策に備えて、まずは温泉でゆっくり体を休めましょう。湯の峰温泉は約1800年前からある日本最古の温泉で、湯垢離場(ゆごりば)(※1)として多くの人に親しまれています。
関西国際空港または白浜空港より、JR「紀伊田辺駅」へ向かい、紀伊田辺駅からは龍神バスの熊野本宮線に2時間ほど乗車し、バス停「湯の峰温泉」で下車します。
周辺には湯の峰温泉のほか、川湯温泉や渡瀬温泉もあり、これらを含めて「熊野本宮温泉郷」と呼ばれています。モデルコースでは湯の峰温泉の見どころを紹介します。
※1:湯垢離場(ゆごりば)......参拝の前に湯に入って身を清める場所のこと。
Picture courtesy of 熊野本宮
湯の峰温泉は、昔にタイムスリップしたような風情ある温泉地です。小さな温泉街ですが、ここには世界遺産の温泉として、唯一入浴が可能な『つぼ湯』があります。
天然石が自然にくり抜かれた岩風呂で、1日に7度もお湯の色が変わるのだとか。
歌舞伎の演目で有名な小栗判官が、毒によって餓鬼阿弥の姿になった時、この湯に浸かって元に戻ったとも言われています。
2~3人ほどしか入れない小さな湯船のため、入浴は30分ごとの貸切制(予約不可)です。料金は大人800円、12歳未満が400円です。
すぐそばには公衆浴場もあるので、両方入ってみるのもいいですね!
【湯の峰温泉 つぼ湯】
住所:和歌山県田辺市本宮町湯峯110
営業時間:6:00~21:00(受付終了20:30)
定休日:不定休
公式HP:https://www.hongu.jp/onsen/yunomine/tuboyu/
Picture courtesy of 写真AC
いよいよ2日目は熊野古道を散策します。まずは湯の峰温泉のバス停から、前日に乗った熊野本宮線の路線バスに乗り、発心門王子へ向かいます。
発心門王子をスタート地点とし、熊野本宮大社まで古道を歩きます。途中、熊野本宮大社を一望できる高台「伏拝王子」や、昔の関所跡なども通るので、豊かな自然の風景を楽しんでください。
7.5キロメートルと距離は長いですが、舗装された石畳の道もあり、初心者でも歩きやすい道のりです。到着したら、本殿や日本一の大鳥居がある大斎原などをお参りください。
その日のうちに紀伊田辺駅まで戻るなら、午前中のうちに散策を済ませ、昼には熊野本宮大社に着いておくことをおすすめします。
帰りは本宮前から紀伊田辺駅に向かうバスを利用します。ちなみに、本宮大社前のバス停から15:05発のバスに乗れば、17:15に紀伊田辺駅に到着しますよ(2024年12月現在の時刻表を参照)。
【熊野本宮大社】
住所:和歌山県田辺市本宮町本宮
営業時間:8:00~17:00
公式HP:https://www.hongutaisha.jp/
中級者におすすめなのが、湯の峰温泉から大日山を越え熊野本宮大社へ向かう「大日越えルート」です。
総距離は約3.4キロメートル、所要時間1.5時間と距離も時間も短めですが、山道や石階段もあり、ややアップダウンの激しいコースになります。
1日目は次の日の散策に備え、熊野本宮温泉郷(湯の峰温泉)へ行って体を休めましょう。
行き方は初心者コースと同様で、JR紀伊田辺駅より熊野本宮線の路線バスで向かいます。
湯の峰温泉に到着したら、つぼ湯や公衆浴場に入って温泉を楽しみ、周辺の宿で宿泊しましょう。
2日目は湯の峰温泉から、徒歩で大日山を越えて熊野本宮大社に向かいます。午前10時までには出発しておくと、帰りの時間に余裕があります。
大日越ルートはやや険しい山道が続くルートですが、より豊かな自然が楽しめます。住宅街が見えてきたら、すぐに熊野本宮大社に到着します。
熊野本宮大社を参拝した後は、路線バスでJR紀伊田辺駅まで戻りましょう。夕方までに駅に着くためには、本宮大社前バス停から15時5分発のバスに乗ることをおすすめします。
もう1つの中級者向けコースが、湯の峰温泉から発心門王子を結ぶ「赤木越えルート」です。
初心者コースとほぼ同じ、総距離約7キロメートル、所要時間は4時間となりますが、赤木越えルートは大半が山道になります。
アップダウンが激しい道や分岐も多いため、ハイキングなどで山歩きに慣れている人におすすめのコースです。
Picture courtesy of 写真AC
赤木越ルートは途中で熊野本宮大社を通らないため、1日目に参拝しておくのがおすすめです。
関西国際空港または白浜空港から、JR線で紀伊田辺駅に行き、そこから熊野本宮線の路線バスに2時間ほど乗車します。降りるバス停は「本宮大社前」です。
熊野本宮大社の参拝が終わったら、宿泊地、湯の峰温泉へ向かいます。本宮大社前から湯の峰温泉までは、熊野御坊南海バスや龍神バスに乗車して10~20分程度です。
Picture courtesy of 熊野本宮
2日目は宿泊地の湯の峰温泉から、発心門王子に向かって歩きます。帰りのバスの時間を考えて、9時頃までには出発しましょう。
赤木越ルートは分岐が多く、道が狭いところもあるため、地図や道標をよく確認して進むことが重要です。特に湯の峰温泉付近や赤木越分岐のあたりは勾配が急で、アップダウンが激しいため、足元には十分気を付けてください。
到着地点となる発心門王子は、龍野本宮線路線バス・紀伊田辺駅行の出発地点のため、そこからバスで紀伊田辺駅に向かえます。乗車時間は2時間30分程度。
夕方までに紀伊田辺駅に着くためには発心門王子14時48分発のバスに乗ることをおすすめします(2024年12月現在の時刻表を参照)。
一番人気のコースは「発心門王子~熊野本宮大社」のルートです。アップダウンが少なく初心者でも歩きやすい道で、石畳や展望スポット、旧跡などもあり見どころが多くおすすめです。
長い距離を歩くため、温暖な春の3月~5月か、寒くなる前の秋の10月~11月頃がおすすめです。
11月下旬からは紅葉が楽しめますが、寒さ対策が必要となります。
コースにもよりますが、今回紹介した初心者コースや赤木越えコースでは、5時間程度、大日越えコースでは2時間程度が目安です。
上級者向けのコースを歩くのであれば、2泊3日と余裕を持って、時間をかけて散策するのもおすすめです。
今回紹介したコースは初心者~中級者向けコースで難易度は高くありませんが、Tシャツやサンダル、スニーカーといった軽装はNGです。
朝夕の防寒や怪我の予防のため、夏でも長袖長ズボン、足元はトレッキングシューズか軽登山靴を着用しましょう。
また、急な雨に見舞われることもあるため、上下セパレートになった雨具も持参すると安心です。
中辺路なら初心者向けの発心門王子~熊野本宮大社のコースが人気です。山歩きを楽しむ大日越えや赤木越えコースもおすすめです。自分にあったコースを選び散策とともに景色も楽しんでくださいね!
ライター