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ミシュラン掲載、大阪で味わう本格江戸前寿司「鮨 千陽」
大阪のグルメといえばお好み焼き、たこ焼きで、寿司を思い浮かべることはあまりないでしょう。本記事では、手頃な値段で江戸前寿司を楽しめる、大阪の寿司店「鮨 千陽」を紹介します。
実はオススメ、大阪の「寿司」
大阪で有名なグルメといえばお好み焼き やたこ焼き。寿司を真っ先に思い浮かべる人は少ないかもしれません。けれども、大阪の港では、新鮮でおいしい魚が水揚げされています。
本記事では、ゆったりとした雰囲気の大阪の寿司店「鮨 千陽(すし ちはる)」を紹介します。ここでは職人がお客の目の前で調理する、新鮮な魚を使った寿司がいただけます。
大阪のおいしい寿司「鮨 千陽」
「鮨 千陽」は、2014年12月、大阪の福島区に開店したお店です。伝統的な江戸前寿司を手頃な価格で提供したいという思いから誕生しました。
「鮨 千陽」では、生の魚そのものの味よりも、魚のもつ旨味を引き立てることを大切にしています。店では、魚の味わいを引き立てるために魚を煮たり、酢や塩で締めたり、醤油に漬け込んだりして、寿司づくりの準備をします。
このような "仕込み"と呼ばれる下準備は、江戸前寿司にとってもっとも重要な作業です。
「鮨 千陽」は近隣の調理師専門学校と提携していて、卒業生が店で職人として働いています。卒業生は新しく学んだ技術を、卒業してすぐに店で実践できるのです。
店では、ランチ1種類とディナー2種類の、3つのコースがあります。ランチコースは2,800円で、寿司9貫とみそ汁が含まれます。
ディナーコースの1つは3,500円で、前菜3種、刺身2種、寿司9貫、みそ汁を提供しています。7,000円ディナーコースでは、2Fにある落ち着いた個室で、前菜3種、刺身2種、一品物、寿司10貫とみそ汁をいただけます。
大阪「鮨 千陽」でいただく江戸前寿司
江戸前寿司が誕生したのは、東京が"江戸"と呼ばれていた18〜19世紀のこと。文字どおり江戸前鮨は、江戸で食べられていた寿司を意味します。
江戸時代、人々は忙しいライフスタイルを送っていました。そのため、すぐにできてサッと食べられるファストフード、寿司が人気になったのです。
この時代、寿司屋で売るために、できるだけ長く生魚の鮮度を保つ方法も編み出されました。もちろん冷蔵庫はなく、氷は高価だったため、別の方法でです。
江戸時代の人々が考え出したのは、穴子やえび、貝などの具材を出汁で煮込んだり、七輪(※1)で焼いたりすること。こうすることで、魚介類の新鮮さを保つことができるようになりました。
生の味が重要なマグロ、カツオ、カレイといった魚は、醤油に浸して下ごしらえをします。醤油に含まれる塩分が、魚が早く腐ってしまうのを防いでくれるからです。コハダやさばなど風味が強い魚は、塩と酢で調理します。
このように、魚によって仕込みの方法が異なります。
こうした仕込みを経た魚は、一口サイズに握った酢飯に添えられて提供されます。酢飯の酢には殺菌作用があり、魚が腐るのを防いでくれるうえに、魚の味を引き立ててくれます。
※1:七輪(しちりん)……炭を燃料とする調理器具。土などで作られることが多く、持ち運びができることから、野外で利用されることもある。
大阪の寿司店「鮨 千陽」のランチ
今回は、「鮨 千陽」の手頃なランチコースをご紹介します。
職人が寿司をつくりはじめる前に、アレルギーのある食材や苦手なものがないか尋ねてくれます。これ以降、ランチコースでは寿司のネタを変更することができないため、苦手なものやアレルギーのあるものがあれば、最初にきちんと伝えるようにしましょう。
寿司職人が、厳選した旬の魚をつかった寿司の準備にとりかかりました。魚はその日の朝、近隣の魚市場で選ばれたものです。
事前に予約をすれば、サービスとして前菜が出されます。今回は茶碗蒸し(※2)でしたが、季節によって出てくる前菜は違います。
※2:茶碗蒸し……溶いた卵に出汁を合わせて蒸した日本料理のこと。
前菜の後、ガリ(※3)がそえられた美しいガラスのお皿が出てきます。
※3:ガリ……生姜を薄く切って甘酢漬けにしたもののこと。
職人は1度に1種類の寿司を握り、できてすぐにお客みんなに出します。どんなものが出されたのかわからなくても心配しないでください。職人が皿に置いた握りの説明をしてくれます。
また「鮨 千陽」のほとんどの職人が英語を話せます。なかには、ドイツ語を話せる人もいます。
職人はつぎつぎに寿司を握ってくれますが、ほかの寿司よりつくるのに時間がかかるものもあります。たとえば今回は、ほかの寿司を用意する前に職人が七輪に笹の葉をのせ、その上にアナゴを置き、焼いていました。
「鮨 千陽」では、職人が慌てていることはありません。ひとつひとつの作業に意味があり、慎重に行われているのです。
大抵の人は、寿司が皿に置かれたらすぐ口に運びますが、皿にいろんな寿司が並べられていくのを眺めることもできます。しかし、あまりオススメできる方法ではありません。ぜひ、できたての寿司を味わってください。
こちらがランチコースで出された寿司9貫、卵焼き、みそ汁とお茶です。出されてすぐには食べませんでしたが、とても新鮮で味わい深い寿司でした。
ランチコースは、1時間ほどかかります。長い時間のように見えますが、実際はそう感じません。おいしい寿司を味わい、リラックスした店の雰囲気に満足して、店を後にできるでしょう。
大阪で本格的な江戸前寿司を食べよう
回転寿司では、同じ価格で3、4倍の量の寿司を食べることができますよね。なぜ、同じ寿司なのに「鮨 千陽」と回転寿司とでは、これほどまでに値段が違うのか疑問に思う人もいるでしょう。
その理由は、回転寿司と「鮨 千陽」では、寿司の味がまったく違う点にあります。
回転寿司でもおいしい寿司を食べられますが、丁寧につくられる奥深い味の寿司は、「鮨 千陽」のような職人のいる店にしかなく、回転寿司では提供できないでしょう。
また、伝統的な江戸前寿司の専門店は日本でも稀です。伝統的な江戸前寿司を味わいたいときは、ぜひ「鮨 千陽」に足を運んでみましょう。
取材協力:鮨 千陽
※本記事は英語版の記事を翻訳・再編集したものです。
ドイツ・ベルリン生まれ、2008年より東京在住。ドイツ語と英語のネイティブ。
3匹のネコの母。好きなものは、90年代のロック音楽、ボクシング、歴史、チョコレートや甘いもの、ピスタチオ味のなんでも、ネコ、コウモリ、龍、吸血鬼、そして全てのキモカワイイもの。
好きな作家はアン・ライス。好きなバンドはLUNA SEA。
オススメの映画はデヴィッド・ボウイと坂本龍一出演の『戦場のクリスマス』。