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神戸牛たっぷり!神戸「広重」で至高の牛丼をほおばろう
日本のソウルフード、牛丼。数百円で食べられ、早くて安いのが売りですが、ここ神戸・三宮「広重」の牛丼は、なんと列に並んで提供されるまでおよそ1時間半! その理由は、ふんだんに使われた神戸牛。とろけるようにおいしい、究極の牛丼を味わってみませんか?
時間をかけても食べたい、至高の牛丼
一般的な牛丼
日本人にとって、牛丼はメジャーな食べ物です。出汁、醤油、日本酒やみりん(※1)などを使った甘めのタレで牛肉と玉ねぎを煮込み、ご飯の上にかけて一気に食べる。街のチェーン店などで食べる牛丼の多くは、注文すると1分足らずで提供され、値段は数百円です。
しかし、今回ご紹介するのは、その真逆をいく牛丼。行列に並んで牛丼が提供されるまで、なんと平均1時間半かかります。値段は、通常の牛丼より少々お高め。
それもそのはず。使用される牛肉が、神戸牛なのです! 元イタリアンのシェフが1つ1つ手作りする、まさに逸品。今や世界中からファンを惹きつけてやまない、究極の牛丼をご紹介しましょう。
※1:みりん……焼酎にもち米とこうじを入れて醸造させて作った酒。和食の調味料として多く使われる。
メニューは「牛丼」のみ
その牛丼を提供する店こそ、神戸・三宮駅から徒歩10分程度の場所にある「牛丼 広重」。週末だけでなく平日も、その味を求めて開店前から行列ができます。
落ち着いた雰囲気の店内。カウンターの10席のみです。
右から「並盛り 1,300円、大盛り1,500円、たまご 100円、ビール 500円」
メニューは潔く、「牛丼」しかありません。日本語メニューだけですが、「普通」か「大盛り」のサイズを伝えればOK。普通盛りは1,300円、大盛りは1,500円。生たまご(100円)をトッピングするのがオススメです(値段はすべて税込)。
牛肉のおいしさを引き出す時間と温度
店員は、店長の菱井宏重(ひしいひろしげ)さんのみ。仕込みから調理、提供まですべて1人で行っています。注文を受けてから、牛肉を調理していきます。
牛肉の火入れの時間と温度にも、こだわりが。
「牛肉は、部位によって最適な火入れの温度と時間が異なります。この牛肉の香りがもっとも引き立つのは、80度で2〜3分間煮込んだときなんです」
一方、玉ねぎなどの野菜は、あらかじめ数時間、柔らかく煮込んで準備しています。この野菜の煮込み時間も季節によって微妙に変えているそう。
それぞれの素材のポテンシャルがもっとも引き出される火の入れ方や温度、時間まで繊細に計算されています。
シンプルな味つけと、ただ1つの隠し味
その味つけは、いたってシンプル。
「特別な味付けはしていません。色んな調味料を使って味をごまかすのは嫌なんです」と語る菱井さん。味付けは、醤油やお酒、みりんなど、通常の牛丼でもおなじみの調味料。
かんずり
そこに、1つだけ隠し味を入れています。それが「かんずり」。「かんずり」とは、新潟で古くから作られる、唐辛子の発酵調味料。塩漬けにした唐辛子を雪の上でさらし、その後、発酵させたものです。
通常、この調味料を牛丼に入れることはほとんどありません。牛肉の味付けにかんずりを加えることで、少量の辛味が加わり、味が引き締まるそうです。
繊細な火入れと、シンプルな味つけ……余計なものを省き、いかにおいしくなるか、それのことだけを考え尽くされた1杯。
さあ、ついに完成したようです!
これが神戸牛の牛丼だ!
芸術品のように美しい見た目。柔らかく煮込んだ玉ねぎの上に、大きめに切られた神戸牛が重ねられ、三つ葉と大葉(※2)が彩りを添えています。
食べるのがもったいない……。ですが、いただきましょう。
※2:三つ葉(みつば)・大葉(おおば)……シソ科の植物。香りがよく、刺身に添えたり、薬味として用いられる。三つ葉はセリ科の植物で、丼や汁物などの彩をよくするために添えられることが多い。
噛むほどに広がる、神戸牛特有の濃厚な味わいと甘み。肉は非常に柔らかく、思わずため息が漏れてしまいます。使用している部位は、「肩ロース」という牛の背中の部分で、上質なサシ(脂肪)が入り、コクのある味わいが特徴です。
夢中で食べていると、菱井さんが、「たまごをつけたらおいしいですよ」と声をかけてくれました。
生たまごに牛肉を絡めて、すき焼きのようにしていただきます。牛丼に直接たまごをかけるより、こちらの食べ方の方がおいしさが引き立つそう。牛肉にたまごの黄身が絡み、まろやかさと甘みが増しました。
肉に隠れた玉ねぎはみずみずしく自然な甘みがあり、ご飯がどんどん進みます。ご飯は粒の立ったコシヒカリ。玉ねぎ、たまご、コシヒカリはすべて地元の兵庫県産です。
卓上にある七味唐辛子(※3)を入れるとピリッと辛く、味の変化を楽しめます。
※3:七味唐辛子……唐辛子や山椒などの薬味や香辛料を配合した、日本のブレンドスパイス。
野菜たっぷりのスープ
牛丼に添えられる定番のスープは、味噌汁。しかし、「広重」ではポトフ風のスープを出しています。「牛丼だけだと野菜が足りないので、野菜もしっかり食べてほしい」。元イタリアンのシェフらしい、菱井さんの心づかいが現れています。
漬物のキュウリは自家製。さっぱりとして、口直しにぴったりです。
とろけるような牛丼、やさしい味のポトフ、さわやかな漬物……幸せに浸っているうちに、あっという間に一杯完食してしまいました。
元イタリアンシェフの店長の思い
すでに述べたように、店長の菱井さんは、もともとイタリアンレストランのオーナーシェフ。22歳の若さで神戸で店を開き、約20年間続けていましたが、さまざまな条件が重なり、店を閉めることに。
「いったんリセットして、まったく別のことをしてみよう」。菱井さんが目をつけたのは、イタリアンとは正反対の牛丼でした。
「日本人で牛丼を知らない人はいない。嫌いな人も少ない。しかし、素材にこだわった牛丼って、あまりありません。ちゃんとした食材を使って、おいしい牛丼を食べてもらいたいと思ったんです」
時間はかかっても、おいしいものを
そうして、2012年に「広重」がオープン。まったく宣伝をしなかったにもかかわらず、口コミでその評判が広がり、今では日本はもちろん、海外から毎年訪れるリピーターもいるそうです。
「広重」という店名通り、店内には、有名な浮世絵師・歌川広重(うたがわひろしげ)の絵が飾られています。店主の名前も、漢字は違いますが、宏重(ひろしげ)。
「店名に自分の名前を使うのは恥ずかしかったけど、ちょっと老舗の感じが出るかなと思って」と茶目っ気たっぷりに笑う菱井さん。一見怖そうですが、話すととても気さくな人柄です。
牛丼に使う神戸牛は、イタリアンシェフ時代の人脈を使い、高い品質の牛肉を仕入れています。広重では1,300円で提供していますが、通常この牛丼を出そうと思ったら、2,000円は超えるそう。「僕1人でやっているから、何とかこの値段で提供できています」
朝から晩まで牛丼を作り続け、外には常にお客さんが列をなしています。
「海外からもお客さんがたくさん来てくれます。本当はもっときちんと対応したいのですが、僕1人しかいないので……」と残念そうに語る菱井さん。
1人1人への対応が難しくとも、その牛丼に、思いのすべてが込められています。
提供されるまで話をしていたお客さんたちは、牛丼を食べ始めたとたん、無言になります。それぞれが、目の前の一杯と対話しているかのようです。
夏真っ盛りの取材当日、お客さんたちが帰るたび、菱井さんは声をかけていました。
「暑い中、お待ちいただき有難うございました。お気をつけて」
今日も心こもった牛丼の味を求めて、「広重」に人が並びます。
「広重」を訪れるときのポイント
最後に「広重」へ行く際に気をつけるべきポイントをご紹介します。
1.早めに並ぼう
ほとんどの場合、店には行列ができており、平均して1時間半待ちとなります。開店時間前など、早い時間から並ぶのがオススメ。暑い時期はしっかり水分補給をして、冬は暖かい格好で待ちましょう。
2.早めに閉店することも
売り切れ次第閉店となります。昼の営業は13:00ごろ、夜は20:00ごろに並んだ人が最後になることが多いです。材料がなくなり次第閉店するため、夜は営業しないこともあります。
3.予約はできません
「広重」への行き方
広重は、神戸の中心街・三宮駅から徒歩10分。左の道は、神戸の観光スポット、異人館エリアに続く北野坂。広重は北野坂ではなく、この右の通りを入ってすぐのところにあります。
広重と同じ通りは、2018年8月にピーナッツホテルが開業し、新しい店が増えつつあるエリアでもあります。異人館エリアも徒歩10分程度なので、観光と合わせて向かうとよいでしょう。ただ、くれぐれも時間には余裕をもって!
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In cooperation with 牛丼 広重
MATCHA Editer.