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昔の東京を体感しよう!「江戸東京博物館」完全ガイド
江戸・東京の文化を感じることができる場所、両国「江戸東京博物館」。体感できる展示もたくさんあり、時間がいくらあっても足りません。本記事では江戸ゾーンを中心に、「歩く」「見る」「触れる」の3テーマから常設展示室を徹底ガイドします。
仕掛けがいっぱい!江戸東京博物館
Photo by Pixta
相撲の聖地として有名な両国国技館。そのすぐ隣に、江戸時代の東京を体感できる施設「江戸東京博物館」があります。
博物館と聞くとちょっと固いイメージがありますが、江戸東京博物館はそれをくつがえすような、おもしろい仕掛けがたくさんあるミュージアムです。
今回は江戸東京博物館を楽しむために、常設展示室「江戸ゾーン」を「歩く」「見る」「触れる」の3ポイントに分け、徹底ガイドします!
目次:
1.実寸大の江戸を「歩く」
2.すみずみまで江戸を「見る」
3.実際の江戸に「触れる」
4.江戸時代だけじゃない!
5.多言語対応も充実
6.ゆっくり食事も楽しめる
7.おみやげには和グッズを
8.チケット、アクセス方法
1.実寸大の江戸を「歩く」
江戸の玄関「日本橋」からタイムトリップ!
常設展示室に足を踏み入れると、まず目の前に存在感たっぷりの木造の橋が伸びています。江戸時代に架けられた「日本橋」の復元模型です。日本橋は江戸の頃、五街道という全国につながる道の起点となり、江戸の交通の要と言える重要な橋でした。
こちらの模型は、江戸後期に架け替えられた時の記録をもとに再現したもの。全51メートルの北側半分が復元されています。現在も「日本橋」という地名の場所に、1911年に架けられた20代目となる石造りの橋があります。
橋を歩いていると眼下に見えるのは、江戸の街で人々を楽しませた歌舞伎の劇場「中村座」(正面部分の復元)。日によってはこの前で伝統芸能のイベントも開催されます。
町人の暮らしをのぞいてみよう
実際の江戸時代の人々の暮らしぶりがわかる、原寸大の住居もあります。こちらの住居は「棟割長屋」(むねわりながや)と呼ばれ、1つの建物を壁で区切り、そこに家族が住むという当時の集合住宅。
中をのぞいてみると、その狭さに驚きます。畳が4枚半入る広さ(約7.45平方メートル)の部屋に住んでいたそうです。
そのため収納の工夫もされていました。たとえば食事どきには、1人1人が自分の膳(※1)の上で食事をして、終わればそこに蓋をし、家族分の膳を重ねておくことでスペースを確保しました。
※1:膳……1人前の食器と食べ物を乗せる台
こちらは「指物」(さしもの)という、板を組み合わせた家具などを作る職人さんの住居。
当時の建物は木造で火事が多かったため、大工の需要が非常に高かったそう。家を建てるときも火事になることを予想して、わざと取り壊しやすい作りにして延焼を防いでいたといいます。
当時の寿司は2倍の大きさ!?
こちらは寿司の屋台です。今や寿司は高級な食べ物のイメージがありますが、江戸時代はファストフードの1つ。このような屋台で気軽にお腹を満たしていました。
近くで見ると、現在の寿司と比べて倍ぐらいの大きさ! これが当時の大きさだったそうです。
当時は冷蔵庫がなかったため、腐らせないよう刺身を醤油につけておくなどの工夫を凝らしていました。現在も「江戸前寿司」として食べられている、伝統的なスタイルとなっています。
こちらは錦絵(浮世絵の1種)などが売られていた店。当時人気のあった絵のテーマは、役者絵(歌舞伎役者の絵)や美人画、また相撲の力士を描いた「相撲絵」でした。
ここでは錦絵の制作過程も見ることができます。浮世絵が、実に多くの工程を経て作られていることが分かります。
2.すみずみまで江戸を「見る」
いくら見ても飽きないミニチュア
江戸東京博物館で、ぜひじっくりと見たいのがミニチュア。館内には江戸時代の様子を再現した精巧な縮尺模型があり、当時の人々の生活風景をのぞき見ることができます。
上記の写真は、17世紀前半の日本橋付近の街並みを30分の1の大きさで再現しています。1つ1つの人形がとても表情豊かで、家の中や衣服の模様など細部にいたるまで再現されており、見ていてまったく飽きません。
このミニチュアだけでなんと800体の人形があり、1つ1つ手作りだそう!
近くに設置された双眼鏡で、より細かい部分まで観察することができます。
双眼鏡を使ってのぞいてみると、自分もその場所にいるような気持ちになってきます。
ここは三井越後屋(みついえちごや)という呉服店(着物を売る店)の内部を10分の1で再現した模型。現在は、三井越後屋の流れを組む日本最古の百貨店「日本橋 三越(みつこし)本店」が、日本橋で営業しています。
館内にはほかにも大名屋敷や祭りの風景など、いたるところに縮尺模型があるので、ぜひじっくりと細部まで味わってください。
歌舞伎の世界を再現
また歌舞伎の代表的な演目「助六(すけろく)」の舞台を表した実寸模型も。この主人公・助六のポージングは、名優として知られた歌舞伎役者・十二代目市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)が監修したもの。
この模型の大道具や小道具、役者の衣装は、実際の歌舞伎の舞台を手がけている職人が作っています。人形の頭の“かつら”も、実際の歌舞伎公演でかつらを担当している職人が、毎年結い直すというこだわりよう。
手前に設置された装置のボタンを押すと「助六」のセリフや音楽を聞くことができます。実際の歌舞伎公演の雰囲気や、繰り出される言葉のテンポのよさがよくわかります。
歌舞伎では、江戸時代の後期から舞台上にさまざまな仕掛けが施されました。こちらの展示では「東海道四谷怪談」という舞台が再現され、舞台上から瞬時に役者が消える仕掛けなど、仕組みがわかるようになっています。
3.実際の江戸に「触れる」
江戸時代を再現された空間を歩いて、見ていると、「実際に中に入ったらどんな感じだろう?」「どんな重さだったのだろう?」などと気になってきます。そんな疑問に応えてくれるように、実際に触れられる体験型の展示も随所にあります。
こちらは実物大の大名の駕籠(かご)。移動の際にはこの中に大名が乗り、4人がかりで運んでいたそうです。実際に中に入って写真を撮ることができます。
これは「纏(まとい)」。火事の現場で使う目印です。江戸時代には町人たちによって作られた消防組織があり、火事場でどの組が消火を担当するかを知らせるために纏が使われました。
15kgもあり重くてなかなか持ち上がりませんが、くるくる回すと「馬簾」(ばれん)と呼ばれる飾りが美しく広がります。
江戸の街には、このようなかごに魚や野菜などの商品を入れて売り歩く商人がいました。こちらの展示は実際に持つことができます。
かごの中身は季節によって変わるので、何が入っているか見てみてください。取材時は、4月だったので春にとれる魚が入っていました。
4.江戸時代だけじゃない!
ここまで「歩く」「見る」「触れる」のテーマで江戸東京博物館の展示を紹介してきましたが、実は、ご紹介したのは展示のほんの半分程度。
残り半分の展示スペース「東京ゾーン」には、江戸時代が終わってから現代にかけての充実した展示が並びます。
ヨーロッパ文化の影響を受けた明治時代の建物の再現模型など、こちらも興味深い展示が並び、広く日本文化に触れることができます。
5.多言語対応も充実
さらに詳しく展示内容を知りたい方は、写真の音声ガイド端末を使って、常設展示の各コーナーや模型の解説を聞くことができます。
1,000円を保証金として支払う必要がありますが、あとでお金は返却されます。音声ガイドは6Fの常設展示室入口で貸し出しています。
また展示ガイドボランティアと一緒に館内を回れば、より深く展示を楽しめます。案内は無料で、多言語対応もしています。常設展示室の入口にその日の対応言語が掲示されていますので確認してみてください。
展示ガイドの所要時間は約1時間30分~2時間、受付時間は10:00~15:00です。
6.ゆっくり食事も楽しめる
さて、充実した展示を見たらお腹が空いたかもしれませんね。館内にはレストランやカフェがあるので、ゆっくりと時間を過ごすことができます。7Fにある「桜茶寮」のほか、2018年4月、新しくレストラン「銀座洋食 三笠會館」と「カフェ三笠」が1Fにオープンしました。
画像提供:江戸東京博物館
1Fにある「三笠會館」の名物はチキンドリア(税込1,450円)。こちらのレストランは洋食がメインです。
画像提供:江戸東京博物館
和食を食べたい方は「桜茶寮」へ。写真の殿様弁当(税込2,800円)は刺身や天ぷらなど和食が存分に楽しめます。7Fにある「桜茶寮」は、かつてあった江戸城の天守閣とほぼ同じ高さだそう。江戸時代に思いを馳せながら、ゆったりとしたひとときを過ごせます。
7.おみやげには和グッズを
館内にはミュージアムショップが2店舗あります。売れ筋商品は和柄の手ぬぐいやハンカチなど。1,000円以下から手に入るので、お気に入りの柄が見つかったらおみやげにいかがでしょうか。
中にあんこやカスタードクリームが入った「かすてら焼」(税込324円)など、博物館オリジナルの商品もあります。
8.チケット、アクセス方法
両国駅を出て江戸東京博物館の方向へ進むと、このような案内が見えてきます。
常設展示室へ行くためには階段を登り、3Fのチケット売り場でチケットを購入しましょう(1Fでも購入可)。チケットの料金や開館時間は末尾のinformationをご覧ください。
江戸東京博物館は7F建てで、1Fは特別展示(2019年3月まで改修工事中)、5〜6Fが常設展示のフロアとなっています。
このエスカレーターが江戸時代への入り口! 6Fまで上がると楽しい「江戸ゾーン」が始まります!
江戸を感じに行こう!
江戸東京博物館は「ガラスケースに入った展示資料を黙々と見て回る施設」のような博物館のイメージをくつがえす、体験しながら江戸・東京の文化を感じることができる場所。
気がつけばあっという間に時間が経ってしまう知的なテーマパーク、江戸東京博物館へぜひ足を運んでみてください。
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元記事執筆:かえで あやか
本記事は、2015年10月1日に公開された記事を2018年版にリライトしたものです。